【要請】ギソン2石炭火力発電所事業への融資検討の速やかな中止を
国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク
メコン・ウォッチ
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
本日、FoE Japan含む環境団体の連名で、財務大臣及びJBIC総裁に対し、 ギソン2石炭火力発電所事業への融資検討の速やかな中止をとする緊急要請書を提出しました。同プロジェクトは、日本政府の「世界最新鋭である超々臨界圧以上の発電設備について導入を支援する」との方針に矛盾し、またJBICの『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン(以下、ガイドライン)』に反する状況であることが明らかとなっています。
詳しくは、下記の緊急声明をご覧ください。
当初掲載した要請書の内容に、事実関係に誤りがありましたので、訂正して再掲いたします。
誤:そもそもEIAが作成されてから、すでに4年近く経過しており
正:そもそもEIAが作成されてから、すでに3年近く経過しており
2018年4月11日
財務大臣 麻生太郎 様
国際協力銀行代表取締役総裁 近藤章様
【要請】
ギソン2石炭火力発電所事業への融資検討の速やかな中止を
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
メコン・ウォッチ
私たちは、国際協力銀行(JBIC)が2018年2月6日から環境社会影響評価報告書及び環境許認可証明書の掲載を貴行ウェブサイトで開始しているベトナム・ギソン2石炭火力発電所事業(タインホア省ギソン地区、600MW×2基)1に関し、環境社会配慮や気候変動などの観点から事業の問題点について貴行と意見交換をしてきました2。
しかし、以下のとおり、日本政府の方針及び『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン(以下、ガイドライン)』に反する状況であることが明らかとなりました。
1. 石炭火力発電への公的支援に関する日本政府方針との非整合性
2018年1月、日本政府は石炭火力発電への公的支援に関して「OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則、世界最新鋭である超々臨界圧(USC)以上の発電設備について導入を支援する」との方針を発表しました3。
本事業は超臨界圧(SC)の石炭火力発電事業ですが、貴行はOECD 公的輸出信用アレンジメント(OECDルール)4 の経過措置の期日前(2017年1月1日前)に融資要請があり、2015年にEIAが相手国政府によって承認されていることを確認したとして問題ないとの見解を示しています。しかし、後述の通り、JBICは2017年5月から6月にかけて事業者からEIAと環境許認可証明書を受け取っており、OECDルールで求められている「完成したEIA等に基づいた融資申請」は経過措置の期日以降であったことは明らかです。したがって、超臨界圧の技術を利用する本事業への融資は日本政府の方針にも反するものです。
2. 追加的環境社会影響評価及び公開の必要性
現在貴行ウェブサイトに公開中のEIAは、同経済区内に建設されたニソン製油所の環境影響を考慮したものになっていません。製油所も環境負荷の高い設備であり、2月末に試運転が始まり、5月には商業運転が開始される予定であることから、ギソン2石炭火力発電所との累積的影響が懸念されます5。貴行によれば、事業者はニソン製油所の影響を加味した追加的な環境影響調査を行っているとのことですが、その結果は公開されていません。しかし、貴行ガイドラインにおいて、累積的影響を「検討する影響のスコープ」として規定していることを鑑みても、事業者が行ったとされる追加的影響調査の結果は公開されるべきです。また、そもそもEIAが作成されてから、すでに3年近く経過しており、製油所の稼働開始など地元の環境に大きな変化がある以上、EIAそのものがやり直されるべきです。
3. 環境社会影響評価報告書及び環境許認可証明書の公開タイミング
貴行によれば、同事業の環境社会影響評価報告書(EIA)と環境許認可証明書の受領日はそれぞれ2017年6月16日と2017年5月12日6とのことです。しかし、貴行ガイドラインでは「カテゴリ A および B のプロジェクトについては、」「環境社会影響評価報告書等の入手状況及び環境社会影響評価報告書等」につき、「情報公開は、原則として当行ウェブサイトにおいて、情報の入手後できるだけ速やかに行うものとする」と規定しています。半年以上も同事業の環境社会影響評価報告書等の入手状況及び環境社会影響評価報告書等が公開されなかったのは、明らかに同ガイドライン違反にあたると考えます。これは速やかに公開されるべきであったと同時に、公開が遅れた理由についても貴行は説明責任を追うべきと考えます。
私たちはすでに2018年3月13日付緊急要請書で指摘した点から、貴行に融資申請を拒否するよう申し入れましたが、上記の理由からも、JBICがギソン2石炭火力発電所の融資検討を速やかに中止するよう強く要請します。
■ギソン2石炭火力発電所について
概要:二基の600メガワットの超臨界圧建設
出資:丸紅 (50%)、韓国電力公社(KEPCO) (50%)
民間融資(未定):DBS、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、OCBC、三井住友銀行、Standard Chartered、新生銀行、Maybank
公的融資(未定): 国際協力銀行(JBIC)、韓国輸出入銀行(KEXIM)
総工費:26億7千万米ドル
稼働開始予定:2019年
本件についての連絡先:国際環境 NGO FoE Japan(担当:深草)