気候変動対策に関するIPCC WG3レポート - 1.5℃超えを容認し、気候変動を食い止めることができない未検証の技術的解決策に頼ったシナリオ
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が4月4日(日本時間4月5日未明)、第6次評価報告書第3作業部会のレポートを発表しました。レポートを受けて、FoEインターナショナルは以下のプレスリリースを発表しました。
【参考】
・IPCC第6次評価報告書第3作業部会レポート
AR6 Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change — IPCC
・環境省によるプレスリリース
https://www.env.go.jp/press/110869.html
気候変動対策に関するIPCC WG3レポート – 1.5℃超えを容認し、気候変動を食い止めることができない未検証の技術的解決策に頼ったシナリオ
2022年4月4日(原文はこちら)
写真:バングラデシュ・ランパル石炭火力発電所。(C) Luka Tomac
2022年4月4日アムステルダム – IPCCレポートが、またしても政治的なたたかいの場となっている。気候正義キャンペーナーらは、気候科学者らが発信する本質的なメッセージ、つまり温暖化に歯止めがかからなくなってしまうリスクを回避するために、化石燃料からの緊急かつ公正な移行を行わなければならないというメッセージが、オーバーシュート(注:地球平均気温が一時的にパリ協定の1.5℃目標を超えてしまうこと)を容認するシナリオや、未検証で不確かな技術によって気温を下げることを想定したシナリオによって台無しにされてしまうことを恐れている。
世界最大規模の草の根環境団体であるFoEインターナショナルの活動家や専門家は以下のようにコメントした。
ヘマンサ・ウィサネージ(FoEインターナショナル議長、FoEスリランカ)
「我々は、気温の上昇を1.5℃以下に抑えるという約束を裏切ることはできない。もしIPCC第3作業部会のレポートが、現在の経済パラダイムの制約を前提としているがためにオーバーシュートを回避するシナリオを提示していないのだとしたら、それは現在の経済システムが地球環境(保全)に適うものではないと証明しているといえる。コミュニティや、運動、意思決定者は化石燃料の時代に今すぐ終止符をうち、利益や欲のための社会・経済ではなく、人々のニーズ、安全、幸福を重視した持続可能なシステムに向けて舵を切るべきだ」
ディプティ・バタナーガー(FoEインターナショナル・気候正義エネルギープログラムコーディネーター)
「私たちは、オーバーシュートに同意しないだけでなく、オーバーシュートを認めるシナリオや政策を正当化することもできない。私たちはこれまで「1.5℃なら生存できるかもしれない」と主張してきたが、気候危機の最悪の影響を被るコミュニティにとって1.5℃は妥協でしかなかった。IPCCの第2作業部会の科学者らは先月、一時的にでもこのガードレールを破れば、コントロール不能な温暖化を引き起こすティッピングポイント(注:温室効果ガス濃度や平均気温の上昇があるレベルを超えると、森林火災や永久凍土のメタン放出など様々な影響が連鎖して、気温上昇が、後戻りできない状況(不可逆的)になる状況の事)につながると警告していた。経済学者らがこの警告を無視し、第3作業部会のレポートのように、オーバーシュートを認めた不公平な緩和計画を提案することは、怠慢でしかない。」
ミーナ・ラーマン(FoEマレーシア)
「オーバーシュートを認め、後から炭素除去やジオエンジニアリング(地球工学)技術によって温度を下げられるという考え方は、それらの技術が憶測的で未検証であることからも、科学にも人間性にも反している。必要なときに行動を起こすことに何度も失敗してきた人々の臆病さと無謀さが露呈する形となった。私たちは今、この問題を解決するために必要なもののすべてを持っている。欠けているのは、いわゆる世界のリーダーたち、とりわけ危機を生み出した歴史的責任を隠そうとしているグローバルノースの指導者の勇気だけだ。」
このプレスリリースに関するお問い合わせ:
- マデリーン・レース(コミュニケーション担当):
madeleine[at]foei.org / +31 645 198 654