衣替えの季節に考える、着なくなった服との向き合い方

気候変動

めっきり寒くなりましたね。慌ててニットやコートをクローゼットの奥から引っ張り出した方も多いのではないでしょうか。

衣替えをする時に気づく、今シーズン一回も着なかった服や、存在を忘れていた服たち。環境省のアンケート調査によると、1人あたり年間平均で19枚の服を購入し、11枚を手放していて、24枚は着用していないそうです。

ファストファッションやネットショッピングの普及などによって、服を買うことがより手軽で気軽なものになった結果、購入数が手放す数を上回って、タンスの肥やしが増えている状態だと言えるでしょう。

環境省「サステナブルファッションとは」より

以前ファッションの小売業で働いていた私にとっては、とても耳が痛いデータです。店頭で販売をしていた時、お客様に「そういえば前に買ったの、まだ一回も着ていないわ」と言われた経験もあります。ファッションが好きな人ほど情報感度が高く、新作やトレンドが気になってワードローブを入れ替える頻度も高くなりがちです。

私自身もその一人で、収入の大部分を被服費に割いて買いまくっていた時期もありますが、すでにクローゼットがパンパンなお客様へ、常に新しい商品を提案し続ける仕事に対して徐々に違和感を覚え、NGOに転職するに至りました。

環境省のウェブページ「サステナブルファッションとは」に詳しく記載されていますが、衣服を作るには環境へ多大な負荷がかかります(水の大量消費、農薬使用、CO2排出等)。また、ラナ・プラザ崩落事故に象徴されるような生産現場の人権問題もあります。

SDGs意識の高まりにより、「サステナブルファッション」や「エシカルファッション」という言葉も徐々に浸透してきていますが、反動のようにSHEINやTEMUのような「ウルトラファストファッション」と呼ばれるさらに生産・消費サイクルの早い業態も出てきました。

最もサステナブルなのは、今持っている服を大切に長く使うことなのは間違いありませんが、ライフスタイルや体型の変化などによって、どうしてもワードローブの入れ替えが必要になることがあります。

あまり着なくなった服をどうするべきか?
アップサイクルの可能性や手放し方について、最近の活動の中で見聞きした、情報やアイディアをシェアしたいと思います。

アップサイクルの可能性

まず考えたいのは、また自分で「着たい!」と思えるようなアップサイクルの可能性です。

先日、FoE Japanも参加するネットワーク「ワタシのミライ」が開催したイベント「第三回 地球のため わたしのため」には、魅力的なアップサイクルの実践者さんたちが出店してくれました。

GO MAYUMIさんは、家庭用ミシンをつかったドローイングを描くような自由なタッチの刺繍で、作品を作っていらっしゃいます。イベントでは、最近あまり着ていないけど愛着がある服や、シミがついてしまった小物などをお持ちいただき、アイテムやお話からイメージを膨らませて、その場で一点ずつオーダー刺繍を入れてくださいました。

撮影:Takuya Horiguchi(@takk_ho_)
撮影:Takuya Horiguchi(@takk_ho_)

NOW/HEREのMISAKI USHIOZUさんには、 植物から抽出した色を使い、布を染めるワークショップを行っていただきました。自ら採取した草木や各国の植物染料、鉄錆、鉱物などを使った実験的な染色をされているMISAKIさんによるレクチャーで、みなさんそれぞれ唯一無二の作品が出来上がりました。

撮影:Takuya Horiguchi(@takk_ho_)
撮影:Takuya Horiguchi(@takk_ho_)

誰かに譲ったり、回収に出すよりも、新たな魅力を加えて着続けることは理想的な選択肢です。

自分が手を加えたアイテムなら、買ってきただけのものより愛着が何倍にもなります。自分でやるのは苦手という方はプロに任せてみることもできますし、相談する中で新たなアイディアが湧いてくるかもしれません。

手放した服のゆくえ

アップサイクルや身近な誰かに譲るのも難しく、服を手放すと決心した時に考えるのが衣料品回収に出すことでしょう。

先日参加した、一般社団法人unisteps主催の「手放した服のゆくえを学ぶフィールドトリップ」では、自治体での古布回収や、アパレルショップなどの店頭にある衣料品の回収ボックスで集められた服たちの「その後」を実際に見ることができました。

訪れたのは、回収された衣類を選別し、適切な行き先を生み出しているナカノ株式会社さんのエコムナ横浜工場です。見学中にも回収された衣類を載せたトラックが到着し、右下の画像に写っている緑色の部分に駐車して、自動で積載量が測られていました。ご案内くださった取締役R部統括の藤田さんの「ここに来ると服は1枚、2枚ではなく、何kg、何tという単位になります」という説明が印象的でした。

ナカノ株式会社 エコムナ横浜工場さん外観
緑色の部分が測りになっていて、窓の中にある電光表示板に重さが映し出される

工場の中にに入ると、あちこちに衣類が山積みになっていました。これでも物量が少ない時期(9月中旬)だそうで、衣替えの時期などはさらに増えるとのことです。このような物量を処理するにも、適切な行き先を見つけるには人の目と手による選別作業が欠かせません。機械化(素材をAIで選別するなど)にもチャレンジしているけれど、現時点では人が行った方が精度が高く、効率的だそうです。

ベルトコンベアに乗せて選別
2Fで選別され、残ったものが1Fに落とされる仕組みで山ができる

選別は大まかに下記のように分けられます。

選別内容割合行き先
1濡れていたりして、リユースもリサイクルもできないもの2〜10%廃棄
2国内リユースできるもの約5%古着屋など
3海外でリユースできるもの約45%東南アジアなど
4ウェスとして使用できるもの約20%工場
5反毛してリサイクルできるもの約20〜30%ウール、フェルト(不織布)、軍手、自動車部品など

まず1番避けたいのが、1の廃棄処分になってしまうパターンです。回収された袋の中に濡れたものが混じっていると、他のものも濡れてしまったり、カビが生えてしまったりして、1袋まるまる廃棄になってしまうこともあるそうです。ナカノ株式会社の回収品は約95%が行政(地方自治体)による古布回収だそうですが、「雨の日は回収に出さない」ようにしてほしいと藤田さんもおっしゃっていました。

次に、2の国内でのリユースは最も効率よく循環できる理想的なグループ。見学させていただいた当日も古着のバイヤーさんたちがいらしていて、真剣にピッキングをされていました。行政回収に比べると、アパレルショップなどの店頭回収はコストがかかるそうですが、店頭回収されたものの方が状態が良いものが多く、リユースに回ることも多いのだそうです。

そして、3の海外でのリユースは最も大きいシェアを占めていて、ビジネスとしてもここでの利益割合が大きいそうす。依然として日本の中古衣料のニーズは高いそうですが、東南アジアが中心のマーケットで、その多くは赤道付近のため冬物は需要がない点がネックです。

4のウェスと5の半毛は、服の形を残したままリユースできない衣類の出口です。ウェスは重工業などの工場で、機械の油汚れを拭うために使われる布のこと。油をよく吸うコットン(綿)の比率が高いものが適しています。
反毛は布を細かくほぐし、もう一度綿の状態に戻すこと。フェルト状になり、自動車の防音材や断熱材などとして使われることが多いです。一部は、軍手などのオリジナル商品にも利用されています。

「山」と書かれたグループはウェスに、「羊毛」と書かれたグループは反毛でウールに
写真上部の塊が反毛された状態、軍手には様々な色の糸やラメも混じっている

繊維リサイクルの課題

今年で創業92年と歴史あるナカノ株式会社さんは、繊維リサイクルの回収から再商品化までを手がけていらっしゃいます。これによって衣類回収の入口と出口をどちらも自社で管理することができていますが、上記の通り冬物衣料は海外でのリユース需要がなかったり、また国内での工業の趨勢によっては需要が減る恐れがあったりするため、出口は常に開拓し続ける必要があるそうです。

最近では日本の古着のクオリティの高さが海外で注目され、新たにリユース市場に参入する業者も出てきており、中には「選別しないでいいから送ってほしい」と言われることもあるそうです。しかし未選別で送られた場合は気候やニーズとのミスマッチによって、わざわざコストやエネルギーをかけて輸送したのに、届いた国で廃棄に回ってしまう割合が増えてしまうためお断りしているとのことでした。

また、よりリサイクル率を上げるためには、製品のデザイン段階での工夫も重要です。例えば、ボタンやファスナーなどの付属品を除去しやすくすること(手作業のため時間やコストがかかる)、単一素材を増やすこと(綿とポリエステルなど、複数の素材が混ざっていると現状ではリサイクルできない)などが挙げられます。藤田さんは複数のアライアンスに参加され、こういった改善に向けてもメーカーと情報共有をされているとのことでした。

そして、持続可能なファションビジネスを考える時、そもそもの一番大きい問題は、生産量が多すぎるということです。

下記のグラフをご覧いただくとわかるように、1990年〜2020年の30年間で、国内のアパレル供給量は右肩上がりでピーク時には倍近くになっています。一方で国内市場は減少し続け、14.4兆円から8.8兆円まで下がっています。つまり需要に比べて供給量が多すぎるのです。実際、ナカノさんが回収される衣料品の中には、メーカーから新品の状態で引き取ってくるものも含まれています。

環境省「サステナブルファッションとは」より

なぜ、売り切れないほど作るのか?というシンプルな疑問が浮かびますが、その答えには価格が関係しています。上のグラフが示す通り、衣服一枚当たりの価格は1990年〜2020年の間で半分以下になっています。ファストファッションが台頭したのが2000年前後で、この頃から大量生産することで一枚当たりの価格を抑えるというビジネスモデルが業界全体に広がりました。

消費者としては安くトレンドを追った服が買えることはうれしいことでもありますが、その背景には生産時の環境負荷の増大や大量廃棄、そしてより短いサイクルでより多い点数の納品を迫られる生産現場があるということを忘れてはいけません。

システムチェンジの必要性

地球環境に大きな負荷をかけ、生産現場に過重労働を強いてまで作った服たちが、誰にも着られないまま捨てられている。こんな悲惨な現状を変えていくためにはビジネスモデルの転換が必要です。

フランスでは2022年から、EUでは今年2026年から売れ残り製品の廃棄が禁止されました(参考:ELEMINIST「EU全体で「ファッション業界の売れ残り廃棄」禁止 2026年7月から」)。売れ残ったり返品されたりした製品については、再販、再製造、寄付、再利用といった選択肢を検討することをメーカー側に求め、需要に即した量のみを生産するように促しています。

日本ではまだ同様の規制はありませんが、2024年に閣議決定された「第五次循環型社会形成推進基本計画」で、廃棄される衣類の量を2030 年度までに2020 年度比で 25%削減するという目標が示されました。その目標達成に向けてのアクションプランなども取りまとめられており、今後具体的なルール整備や社会実装が進んでいくことが期待されます。

ファッションは「人生を豊かにするものである」と信じているからこそ、自分自身の服との向き合い方を常に見つめ直すとともに、ファッションビジネスやシステムの持続可能性について、これからも注目して追いかけていこうと思います。

(轟木 典子)

 

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