声明:日本の国連公海条約(BBNJ協定)加入を歓迎 海洋生物多様性保全に関する新たな国際協定が2026年1月に発効へ

気候変動
Albatross in Weddell Sea. Credit: John Weller. 

 2025年12月12日(現地時間)、日本政府はニューヨークの国連本部において、「国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する協定(BBNJ協定)」の加入書を国連事務総長に寄託しました。FoE Japanは、公海における海洋保護区設定の推進を可能にする本協定の加入が、地球規模の海洋生物多様性を守るための歴史的な一歩であるとし、この決定を心から歓迎します。

 外務省の発表で、日本政府は「法の支配に基づく海洋秩序の維持及び発展を重視する我が国は、この協定の採択に至る交渉に積極的に参加してきました。今後も、この協定の効果的な実施に積極的に貢献していきます。」と述べています。日本政府には、このコミットメント通り、具体的で実効性ある生物多様性保全に向けた確実な行動を期待します。

 BBNJ協定は、「海の憲法」と呼ばれる国連海洋法条約(UNCLOS)の下で策定され、2023年6月に採択されました。BBNJ協定は公海及び深海底における海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用のための国際的なルールを定めたもので日本は、本協定の77番目の締約国となりました。本協定は2026年1月17日に発効予定です。

 国際協調の成功例として世界的に評価されているBBNJ協定は、公海と深海底の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用を実現するため、主に以下の4つの柱について定めています。

  • 公平かつ公正な利益分配を含む海洋遺伝資源(MGR)
  • 海洋保護区を含む区域型管理手法(ABMT)
  • 環境影響評価(EIA)
  • 能力構築と海洋技術移転

 これまで各国は、国連海洋法条約に基づき、国家管轄権を超える海域(ABNJ)において海洋環境を保護するという包括的な義務を負っていましたが、海洋保護区の設置などの具体的な保護手法については明確な規定が存在しませんでした。公海は、地域漁業管理機関(RFMO)など複数の機関によって管理されてきたものの、これらの調整の欠如や制度の断片化により、深刻な乱獲などのリスクにさらされてきました。

 公海条約は、生物多様性条約の下で2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)」の実施に向けた中核的な手段となります。この枠組には、2030年までに陸域および海域の少なくとも30%を保護する「30by30」目標が含まれています。海洋生態系は、生物多様性の喪失、海洋プラスチック汚染、海水温の上昇、海洋酸性化といった、人間活動に起因する複合的かつ深刻な脅威によって危機的な状況に置かれており、公海における海洋保護区の設置を促進する新条約への期待が国際社会全体で高まっています。

 海洋面積の約3分の2を占める公海は、「人類共通の遺産」として、私たち全てが協力して守らなければなりません。FoE Japanは、南極の生態系保全に取り組む南極南大洋連合(ASOC)のメンバー団体として、長年にわたり南極海での海洋保護区の設置を呼びかけてきました。南極南大洋は、地球規模の海洋システムの重要な一部であり、公海条約が、南極とその周辺海域を含む生物多様性保全の連携強化を促進することが強く期待されます。

 日本が国際社会の一員として条約に加入したことは、生物多様性危機への国際協力に対する揺るぎないコミットメントを示すものです。しかし、批准・加入と発効はあくまで新たな出発点に過ぎません。特に、2026年5月には、日本が32年ぶりに南極条約協議国会議(ATCM)を開催する予定であり、これは南極における平和的・科学的利用および環境保護の促進に貢献する極めて重要な機会となります。

FoE Japanは、日本政府に対し、条約の迅速かつ実効的な履行を主導するとともに、南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)などの他の国際的枠組みにおいても、海洋生物の保護に向けたより積極的な行動を支援するよう強く求めます。

以上

お問い合わせ

FoE Japan 南極プログラム担当 ランダル・ヘルテン (helten@foejapan.org)

南極プログラム:https://foejapan.org/issue/tag2/antarctica/

参考

·         外務省「国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)の加入書の寄託」:https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/ocn/pagew_000001_02230.html

·         High Seas Alliance – Ratification Tracker: https://highseasalliance.org/treaty-ratification/

·         国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)事務局、条約の批准状況(国別リスト):https://treaties.un.org/PAGES/ViewDetails.aspx?chapter=21&clang=_en&mtdsg_no=XXI-10&src=TREATY

 

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