レポート「変わりゆく南極の海を守る」 南極南大洋連合が発行

気候変動

2024年10月14日、FoE Japanがメンバー団体として一緒に活動している南極南大洋連合 (ASOC: Antarctic and Southern Ocean Coalition) が、南大洋(南極海)の保護に関するレポートを発行しました。

Antarctic and Southern Ocean Coalition (2024)
https://www.asoc.org/news/protecting-a-changing-southern-ocean (英語)

本レポートは、毎年10月にオーストラリアのホバートで開催される「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会」(通称: CCAMLR(読み:カムラー))に合わせて発行されました。今年こそCCAMLRで南極海を守るための緊急対策が講じられ、2030年までに世界の海の30%を守るという国際的な目標(通称: 30×30 (読み: サーティ・バイ・サーティ))を達成するための道が開くことを期待して書かれました。

現在、世界中で保護されている海はわずか8.35%と、2030年までに30%を達するための道のりは平坦ではありません。この30×30目標を達成するには、南極海(世界の海のおよそ10%を占める)を含む、公海における海洋保護区を急いで拡大する必要があります。

地球上で最も手つかずの大自然と称される南極は、気候変動や漁業、観光、プラスチックごみ等の人間活動の深刻な影響に直面しています。気候変動による異常気象は、今や私たち一人ひとりが実感するまでに深刻化していますが、地球上で最も早く温暖化しているのが南極です。海洋熱波がより頻繁に発生し、大規模な海氷の消失が当たりまえのことになりつつあり、その影響は南極に暮らす生き物たちに大きな変化を強いています。

現在、CCAMLRでは、次の4つの海洋保護区の設置が提案されています。

  • ウェッデル海フェーズ1海洋保護区
  • 東南極海洋保護区
  • 南極半島(ドメイン1)海洋保護区
  • ウェッデル海フェーズ2海洋保護区

これら4つの海洋保護区の設立案が合意に至れば、南極海の26%、世界の海のおよそ3%を守ることができます。海洋保護の歴史を塗り替える大きな功績を残し、30×30 にも大きく貢献することができるのです。

エグゼクティブ・サマリー(仮訳:FoE Japan)

比類なき美しさを誇る南極大陸は、地球上で最も手つかずの大自然が残る場所として、私たちの記憶に残っている。しかし、南極の海と大気の状態にパラダイムシフトが起きつつあることが研究により明らかになりつつある。地球規模の気候変動に直面してきた南極の長く続いてきた回復力に陰りが見え始めているのだ。

南極海は今、地球上で最も急速に気候変動に直面している。人間活動が増加していることも手伝って、複合的なストレス要因のある環境を生み出し、南極の生態系プロセスをさらに複雑なものへと導く可能性がある。

幸いなことに、南極の海洋環境を保護しながらも、持続可能な範囲で人間活動を行うことを可能にするための基盤はすでにある。

南極大陸とその周辺の南大洋(南極海)は、1982年に発効した「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」(CAMLR条約)を含む南極条約体制によって管理されている。CAMLR条約は国際組織である「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会」(CCAMLR)を設立し、そのメンバーは2009年に南大洋に代表的な海洋保護区(MPAs)体制を構築することに合意した。

強力な保護能力のあるよく設計された海洋保護区は、生態系におけるすべての栄養段階を網羅し、種の豊かさや遺伝子の多様性を向上させ、隣接する海域にも良い影響を与える波及効果を生み出すことが示されている。

現在、海洋環境の保護に向けた世界的な機運が高まっている。2022年、「国連生物多様性条約」(CBD)の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(GBF)が採択され、約200カ国が2030年までに地球の30%を保護することに合意した(30×30目標)。

南極海は世界の海洋の約10%を占めていることから、30×30目標の達成は、CCAMLRの管轄における進展と表裏一体の関係にある。

本報告書では、CCAMLRのほとんどのメンバーがGBFに署名していることが強調されている。つまり、CCAMLRの過半数が、保護区を設立することで有意義な保全を遂行することに合意していることを意味する。南極南大洋連合(ASOC)は、CCAMLRがCAMLR条約の第2条に従って、南大洋を管理する組織としての本来の目的に立ち返り、30×30の達成に向けた世界的な取り組みを主導することを願ってやまない。

CCAMLRでは、南大洋に4つの大規模な海洋保護区の設立が提案されている。これらの提案が採択されることは、30×30目標の達成に極めて重要である。提案が採択されれば、世界の海洋の3%近くがCCAMLRの保護下に置かれることになる。CCAMLRが保護リーダーとして返り咲き、傑出した世界的な遺産を築き上げる好機です。

ASOCは、CCAMLRメンバーがこれら4つの海洋保護区提案の採択に加え、ドメイン9 海洋保護保護区の計画を進めることで、2009年に合意された海洋保護区体制を確立するよう、強く要請する。

さらに本報告書は、CCAMLRメンバーが直接責任を有する南大洋の排他的経済水域(EEZ)に関して、最新の科学情報に基づいて、既存の海洋保護区や保全地域を見直し、保護を拡大するよう勧告している。

南大洋に時間はない。CCAMLRが、その本来の目的である南極の海洋生物の守護者として機能することが極めて重要である。ASOCは、CCAMLRメンバーに対し、南極の保護に向けて協力的に行動し、CCAMLRの責務の中核である予防原則を遵守することを求める。

目次

  1. Introduction
  2. Threats to the Southern Ocean
  3. Management in the Antarctic
  4. MPAs and the Opportunity for CCAMLR
  5. Building on Success
  6. MPA Recommendations
  7. Other Opportunities for CCAMLR and the Southern Ocean
  8. Recommendations
  9. Conclusion

レポートのダウンロードはこちら

ASOC (2024), “Protecting a Changing Southern Ocean” (英語)

https://www.asoc.org/news/protecting-a-changing-southern-ocean

 

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