南極に住むこの星の小さなスーパーヒーロー! ナンキョクオキアミについて
皆さんはナンキョクオキアミを知っていますか? 南極のオキアミは炭素を運ぶ巨大なベルトコンベア。オキアミは炭素を蓄えた海藻を食べ、炭素に富んだ「うんち」を海の底に落とすことで、炭素を海の表面から海底へ絶えず運んでいます。そのため、オキアミは気候変動との戦いに不可欠な存在です。しかし現在、オキアミは気候変動と南極半島で集中的に行われているオキアミ漁業の脅威にさらされています。オキアミや、オキアミが生息する南極の環境を守り、維持することが重要です。
では、ナンキョクオキアミは、どのくらいの炭素を海底に運んでいるのでしょうか? なんと、毎年3,500万台の自動車が排出するのと同等の炭素量を海底に運んでいます。しかし気候危機の影響により、 南極と南極海では前例のないスピードで気温が上昇しています。温暖化が、南極の豊かな大自然、野生生物を脅かしています。自然には、国境や政治的境界線はありません。気候非常事態に対応するためには、国々が協力して、環境保護を加速することが重要です。
ナンキョクオキアミは、ペンギン、アザラシ、クジラなどに代表される、南極海に生息する多くの動物の主要な食料源です。また、なんと南極半島の海鳥や哺乳類はカロリーの96%をナンキョクオキアミから得ています。ナンキョクオキアミを食べない生き物も、ナンキョクオキアミを食べる生き物を食べているからです。このように、ナンキョクオキアミは南極海の生態系にとっても、かけがえのない生き物なのです。しかし、近年、南極半島に集中するオキアミ漁業は、気候変動の影響により既に絶滅の危機に瀕している種にさらなる悪影響を及ぼしています。
ナンキョクオキアミなど南極でくらす生き物たちは、集約的な漁業や気候変動によって脅かされています。海洋保護区(MPA)の設置や、魚の個体群、生息域、関連する野生生物を保護するために、適切に設計された漁業対策が必要です。また、境界線のない海において保護区の効果を高めるためには、海洋保護区どうしの繋がりが重要です。南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)は、2012年までに重要海域を海洋保護区で繋ぐ、MPAネットワークの構築を目指していましたが、まだ2つの海洋保護区しか成立していません。南極の貴重な生物と生態系を守るには、CCAMLRが南極海に新たに海洋保護区を設立する必要があります。もうこれ以上の時間は残されていません。
・参考
Pew Charitable Trusts, “8 Facts About Antarctic Krill Show Why They Need Greater Protection” (2022/8/11)