8月22日高江・米軍ヘリパッド建設反対-防衛省・環境省・警察庁との交渉報告
8月22日高江・ヘリパッド建設反対 防衛省・環境省・警察庁との交渉報告
沖縄県東村高江周辺で米軍ヘリパッド建設が強行されている問題について、院内集会・省庁交渉を行いました。
台風の中でしたが、多くのみなさまにご参加いただきまして、ありがとうございます。
沖縄からは堀田千栄子さんがかけつけ、オスプレイのすさまじい騒音被害や住民たちの必死の反対運動、機動隊による暴力などについて映像を交えて語っていただきました。宮城秋乃さんはフライトが欠航したため、会場にくることができなかったのですが、電話でつないで、ヘリパッドの建設で生存が脅かされているやんばるの森の貴重な生き物たちについてご発言いただきました。沖縄環境ネットワークの花輪伸一さんからは、地域一帯の生物多様性の豊かさや防衛局の自主的な環境アセスの問題点についてご指摘いただきました。
高江ヘリパッド反対の共同声明への署名は、61カ国 231団体、14,011人にのぼりました。
全世界からの建設反対の声として防衛省宛てに提出いたしました。署名はまだ継続しています。
以下、簡単な交渉報告です。交渉には福島みずほ議員、近藤昭一議員も立ち会いました。
省庁宛て事前質問と解説 (PDF)
1.防衛省交渉…焦点となったテントの撤去と「Fルート」
ゲート前のテント撤去の法的根拠が主に問題となりました。
7月22日のN1表ゲートのテント撤去について、防衛省側からは、①テントが工事の妨害になっていること、②所有者は名乗り出るよう張り紙をしたが、名乗り出るものがいなかったため、所有権は放棄されたとみなした――旨の説明がありました。しかし、これらは県道にあるテントを防衛省が撤去できる法的根拠とはなりません。再度たずねると、防衛省が挙げたのは、道路法第32条第1項と防衛省設置法第4条第19項でした。
第32条第1項は、「道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない。」というものでした。そこで私たちは以下の点を問い質しました。
(1)N1表ゲート前テントが張られていた県道70号線の道路管理者は沖縄県であり、防衛省ではない。なぜ防衛省が撤去できるのか
(2)撤去されたものは所有者が現に存在しており、所有権は放棄されていない。そのことを防衛省自身が認識していることは、沖縄防衛局が撤去後にこれを廃棄せず、所有者に返還している事実からも明らかではないか。
(3)たとえ所有権が放棄されていたとしても撤去できる根拠にはならない。経産省前テントの撤去では、管理者の経産省ですら裁判を経る手続きを踏んでいる。なぜ手続きを踏まないのか。
いずれについても、防衛省は答えることができず、同じ説明を繰り返すだけでした。
また、防衛省設置法第4条第19項は、以下のようなものです。
第四条 防衛省は、次に掲げる事務をつかさどる。
十九 条約に基づいて日本国にある外国軍隊(以下「駐留軍」という。)の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること。」
これは、防衛省の所掌事務を列挙してあるだけの条項で、これは明らかに、強制措置の根拠とはなりえません。テント撤去に法的根拠がないことを改めて確認しました。
N1裏のテントについて、防衛省側は、「いまのところ撤去の計画はない」と述べましたが、村道から先は国有林で、防衛省が林野庁から使用許可を得ているとも述べました。
私たちは、N1裏のテントについては所有権は主張されていて現に使用されてもいることを指摘。法を侵しての撤去をしないよう強く求めました。
N1の表から裏に通ずる防衛省が「Fルート」と呼ぶ道について、防衛省は、既存の道路に砂利を敷いて補強し、N1裏までつなぐこと、工事が終わっても復帰する予定はなく、輸送用道路として米軍が使用する可能性があることを明らかにしました。
「幅はどれだけか」との質問に対し、「現在も補強後も約3メートル」との回答。
しかし、既に道路脇の樹木伐採が行われており、幅員が同じであるとは言えないこと、補強ではなく拡張と考えられます。
であれば、環境への影響が変化することから、環境アセスをやり直す必要があるのではないかと指摘しましたが、防衛省は、アセスは自主的なものであり、やり直す必要はない、事後確認で十分足りると回答しました。これについても、参加者から強く抗議しました。
Fルート後の工事予定については、明らかにしませんでしたが、G地区やH地区への砂利や資材の搬入を考えると、N1裏からG、H地区に向かう村道を使わせないことが重要になってくると思われます。また仮にFルートの途中から新たにH、Gへ通じるルートを開くとしたら、環境アセスが必要になるものと考えられ、この点も注意して確認していく必要があります。
(※既にG,H地区周辺の樹木伐採も行われている形跡があります)
N1、H、G位置図(辺野古浜通信より)
さらに、住民が避難せざるをえないほどの、オスプレイの騒音被害について、実際にオスプレイの離発着の映像を再生して抗議。防衛省が自ら測定しているデータの提出を求めました。
2.環境省交渉…「人々のくらしと生態系を守るために、役割果たせ」
環境省交渉では、「住民が隣村に避難せざるをえないほどのオスプレイの騒音被害について環境省としても対応をとるべきでないかとただしました。
さらに、琉球大学環境建設工学部准教授の渡嘉敷健氏による測定図を手渡し、約2時間の間に28回ほど80デシベル以上の騒音が夜間も続いていることを指摘しました。
出典:オスプレイ 騒音データ 琉球大学工学部 環境建設工学科 准教授 渡嘉敷健
環境省からは、「防衛省などの関係省庁から情報収集を行うことに努める」という回答にとどまりました。
オスプレイなしで行われた防衛局の環境アセスに関しては、「沖縄県環境影響評価条例が適用されない中で、防衛省が自主的に行ったものなので、環境省としていちいち意見をいうことはできない」とのことでした。野生生物保護に関しても同様の回答でした。私たちからは、「住民の暮らしと、世界でも貴重な生態系を守るために、環境省はその役割を果たしてほしい」と要請しました。
3.警察庁交渉…「不偏不党且つ公平中正」?
まず高江に全国(警視庁、千葉県警、神奈川県警、愛知県警、大阪府警、福岡県警)から機動隊が派遣された経緯を聞きました。以下の回答がありました。
(1)7月12日付の沖縄県公安委員会から、各都府県の公安委員会宛ての派遣要請に基づき、派遣された。
(2)7月11日付の警察庁警備部から各警察本部宛てに通知がだされている。同じ7月11日に沖縄県警察本部から警察庁に対し、このような派遣要請をしたいという問合せがあり、それを流しただけ。派遣期間や派遣人数を決めたのは沖縄県警察本部である。同じ7月11日に沖縄防衛局から沖縄県警察本部に対して、警備の具体的な要請があり、それを受けての一連の対応。
(3)派遣人数や期間は警備状況が明らかになると業務に支障をきたすおそれがあり、明らかにできない。
(4)派遣費用については、給与は各都府県から、日当、宿泊費、交通費、車両の移送費などは国費による。千葉県で2800万円という数字が何を意味するか不明だが、国費の千葉県分かもしれない。
左:沖縄県公安委員会から、各県公安委員会宛ての派遣要請文書(平成28年7月12日付)
右:警察庁警備局警備課長から、関係管区警察局広域調整部長、警視庁警備部長、関係府県警察本部長宛ての文書「沖縄県警察への特別派遣について(通知)」(平成28年7月11日付)
派遣人数や期間などを決めたのはあくまで沖縄県警察本部であり、警察庁は関与していないと一点張りでした。7月11日に沖縄防衛局から沖縄県警察本部に対して出されている警備要請の文書を開示させ、沖縄防衛局と沖縄県警察本部との間でどのようなやり取りがあったかを明らかにさせなければと思います。(防衛省は「ノグチゲラ営巣期が開ける7月には毎年警備の要請を行っている」としていますが、今年は例年とは明らかに異なるはずです)
続いて、高江での7月19日以降の、機動隊による検問、道路封鎖、抗議者に対する暴力によりけが人が発生している実態、人権侵害を伴う強制排除の法的根拠について、山本太郎議員の質問主意書に対する答弁書をもとに尋ねました。
交渉の場で警察庁が挙げていたのが警察法第2条第1項でした。検問については、警察職務法という法律に、条件などが具体的に記されているのに、それではなく、警察法第2条だというのです。
警察法第2条第一項はは以下のとおりです。
第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
これは、警察の責務を一般に並べているだけで、どこをどうみても、検問や強制排除の根拠にはなりえません。
警察法第二条第2項には以下のように書いてあります。
2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。
これはまさに、高江で行わているような、警察の一般的な責務を盾に強制的な行為を行うような濫用はだめですよと言っている条文です。
交渉ではこれを読み上げ、憲法21条で保障された表現の自由を行使している抗議者の権利を著しく侵害しているではないかと指摘しました。
さらに、沖縄防衛局の工事に対し多くの人が反対し抗議に来ている中で、一方的に抗議者を排除して工事の遂行を手助けし、不偏不党でも公正中立でもなく、現場をさらに危険な状況にしているのは、警察の責務にも反するのではないかと指摘しました。
警察庁側は、「憲法で保障された人権には留意しなければならない」と回答しました。
現場から駆けつけた人から、警察による暴力行為、報道記者を長時間拘束し連絡がとれないようにする、公務執行妨害で逮捕するぞと脅したり、暴力ざたをでっちあげて逮捕するなど、さまざまな人権侵害行為について具体的に指摘があり、「警察法第2条を挙げるのなら、まずは個人の生命と身体を守ってほしい。機動隊はそれに反することをやっている」と指摘がありました。
警察庁は、現場での状況については、沖縄県警察にも確認をして把握に努めたいと述べました。
最後に、市民側から、警察庁として、現地で行われた暴力行為について把握を行うこと、また、全国からの機動隊をすぐに引き上げるようにと要請しました。
IWJによるハイライト映像(テントの撤去について、ほか)
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=PSi5QYwMGW4&w=560&h=315]