里山再生プロジェクトの背景
荒れていく里山
「里山」とは、人里に隣接する森や山のこと。燃料となる薪や炭、畑に入れる落ち葉、農具や生活用具、山菜やキノコなどの食料まで、農家の裏山から賄っていました。その里山は、人の手が入ることで豊かな自然のバランスが保たれていました。
1950~60年、燃料革命によって私たちの生活は大きく変わりました。エネルギーも食べ物も生活用品も、どこかで大量に作り出されたものを簡単に使えるようになりました。、里山には人の手が入らなくなり、その姿を変えていきます。たとえば、こんなふうに・・・
-ツル植物が繁茂し樹木がやられる
木々に巻きつき高いところへ上っていくツル植物が、木の成長を妨げたり、木を衰弱させてしまう。
-萌芽更新が行われず暗い林になる
15~25年で伐採し、切り株から出た芽を育て、大きくなったらまた切る、というのを繰り返していた雑木林。薪や炭を使わなくなったため、大木化した老齢の木が密生、日が差し込まない暗い林に。萌芽力も低い。
-ササが繁茂する
森の中には、繁殖力の強い特定の植物だけが密生するようになる。背丈ほど伸びるササ類が繁茂し、ヤブと化した里山は多くみられるケース。
-竹林が拡大する
地下茎を伸ばして勢力を広げる竹。放っておくととにかく増える。成長も早く、他の木をあっという間に超える高さになるため、竹が侵入した林は竹林に変わっていく。
-常緑樹が入る
もともと自生していた常緑樹は、雑木林が放置されたことで増えてくる。常緑樹が増えると、林内に入る光が減り、光が少ないと生きられなくなる植物は消えていく。
そして里山は、次第に植物や生物の多様性が失われます。こうして荒れてしまった里山が日本各地に存在しています。
木を伐ってもいいの? ~里山を再生する、とは?
里山を守る活動というと、木を伐ったり草を刈ってはだめなのでは?と思う人もいるかもしれません。でもここは、原生林や天然林とは違い、人が手を入れ、利用し、育ててきた森です。
たとえば雑木林では、15~20年ごとに伐採し、切り株から新しく出た芽を育てていました。伐採した木は薪や炭などの燃料や、キノコを育てるホダ木に使いました。
暮らしに必要だから、森に手を入れ、繰り返し育てる ――ライフスタイルが変わり、暮らしと森のつながりが薄れたいま、これがむずかしくなりました。森を身近に感じて暮らすことが、里山の循環を取り戻す第一歩です。宇津木の森では、「森の産物をどう活かすか?」を模索しながら里山の再生・保全作業を進めています。
関連プロジェクト
◆宇津木の森(東京都八王子市)
住宅街に囲まれた5haほどの小さな森。クヌギ、コナラなどの雑木林、栗林、竹林、スギなどの針葉樹林、草地など変化に富んだ自然が残されています。東京都の保全地域に指定されており、FoE Japanは2002年よりこの森の保全活動を続けています。
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>ブログ「里山日記」
>Facebookグループページ「宇津木の森@八王子」
◆街の木ウォッチング
>ワークショップ「街の木ウォッチング ~街は樹木がおもしろい~」
◆里山ぐるぐるスマイル農園(埼玉県小川町)
森づくりと野菜づくりでみんな笑顔に!落葉や竹粉堆肥など山の資源を生かした野菜づくりを、有機農家の指導をうけつつ、実際に体験して習得していきます。
※2011年から活動開始。2017年度より、FoE Japanから独立して活動を行っています。現在の活動の様子は以下のサイトからご覧いただけます。
>里山ぐるぐるスマイル農園ホームページ
>Facebookページ「里山ぐるぐるスマイル農園」