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ツバル首相インタビュー |
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■選挙について
首相:任期は4年です。4年の任期が終わると議会は総選挙を行います。それによって新しい政府が誕生することもあれば同じメンバーによって同じ政府が続くということもあります。そのように憲法で制定されています。議会は4年までと決まっていて、その次に総選挙があるわけです。再当選すれば続けることはできます。でも議会は4年で終わります。私は次の選挙に出馬する予定です。
■気候変動と移住問題について
FoEJ:いつ首相はニュージーランドに移住の件について申し入れをしたのですか。また何故ですか。
首相:(移住を要請したのは)先進国の活動によって引き起こされる海面上昇があるために、私達にとても近い太平洋にある二つの先進国、ニュージーランドとオーストラリアに、ツバル国民の移住を実現させるためです。CO2を排出し、大気を汚染して、地球温暖化を引き起こしてしまっている。気候が変化し、海面が上昇しているのです。ヤシの木に登って、座っていることはできますが、私達の国にはヤシの木以外に山のような海抜の高い土地はありません。ですから、ニュージーランドとオーストラリアに要請をしたのです。もちろん、ヤシの木に一週間も家族とともに座っていることはできません。ですから、海面が上昇し、ツバルが消えてなくなってしまう前に、予防的措置として移れる場所を模索したのです。
FoEJ:いつ要請したのですか?
首相:4,5年前です。
FoEJ:オーストラリア政府の対応は?
首相:オーストラリア政府は、NOといって我々の要請を受けてはくれませんでした。しかし、ニュージーランド政府はYESといってくれました。1年間の割り当て数は75人です。この制度はPacific
Access Category(PAC)といってまだ始まったばかりです。2日前の7月1日に始まりました。移住したい国民は、これに申請することになります。申請用紙は、回収され、ニュージーランドに送られて、自動抽選(electrically
selected)されることになります。
FoEJ:要請されたのは宮崎で開かれた太平洋・島サミットのときですか?
首相:前首相が出席したので、前首相でしょう。
FoEJ:要請をしたのは前首相ですか?
首相:要請はしました。ニュージーランドは私達の要請を承諾し、オーストラリアはNoといい続けました。
FoEJ:どういった形で要請をしたのですか?書簡を送付したのですか?
首相:はい。そして交渉です。前首相が始めました。政府に要請を届けて欲しいと、彼がウェリントンにあるカウンターパートと協議を持ちました。そして、彼らは審議を重ね、ついにOKを出したのです。
FoEJ:前首相が要請をしたのでしょうか?
首相:そうです。故首相です。彼は亡くなっています。ニュージーランド政府は以前から考えていてくれて、合意してくれました。
FoEJ:前首相の名前は?
首相:イオナタナ・イオナタナです。
FoEJ:オーストラリア政府の対応をどう思いますか?要請を拒否したわけですが。
首相:よくわかりませんが、彼らは要請を拒否しています。私が思うに、要請はニュージーランド政府に送られたものと全く同じものだと思います。なぜなら、これは基本的に海面上昇が原因となっているものだからです。いつの日か、島は浸水してしまいます。おそらくいつの日か、ツバルは最初の犠牲国になるのでしょう。海面上昇の最初の犠牲者です。
FoEJ:オーストラリア政府の対応に関しての見解は?
首相:私には彼らが承諾しない理由はわかりません。しかし、我々は何もすることはできません。なぜなら、それは彼らに決定する権利があるからです。彼らの、政府の土地だからです。彼らが、事の善し悪しを判断して決定するのです。しかし、我々は貧しく、彼らが大量のCO2を排出してきたことによって発生している現象の被害者なのです。我々は、オーストラリアの土地を使わせてもらいたい、もしくはオーストラリアにある島を使わせてもらうことをお願いしました。やることはやりました。オーストラリアには広大な土地がありますが、それは彼らの土地なのです。
■オーストラリア、アメリカ、石油大手を相手取った訴訟に関して
首相:そう、我々に証明できるほど、しっかりした証拠があればいいのですが。気をつけなければならないのは、こうした国々は主権国であって、とても慎重にならなければなりません。しかし、現段階行っていることというのは、先進国が寛大にも私達のような海抜の低い国のことを考え、処置を講じてくれると信じて、国際会議などで我々の苦境や、海抜の低い国々が今後50年後に直面することになるかもしれないことを、声を上げて伝えることです。先進国はとても裕福な国々です。彼らには技術があります。彼らにはお金があります。彼らは環境を壊さないよりよい方法を常に選択できる条件がそろっています。たとえば、京都議定書を批准することなどです。しかし、多くの先進国が締結を終了しているのにもかかわらず、アメリカ、オーストラリア、カナダなど太平洋に近い北の国々はまだ締結していません。彼らはそうしたくないのです。最新情報はちょっとわかりませんが、日本は批准したかもしれませんね。とてもいいことです。日本は私達のような低い海抜の島嶼国に住んでいる貧しい人々に対して優しい心を持っていて、とても思いやりのある国ですね。彼らはとてもいいと思います。結局、この問題を国際会議や協議などで取り上げ、声を大にしてもうまくはいかないのです。また、こうした問題に戻ってきてしまうのですが、先進国は人々がこの先どうなろうかということを気になどしていないのです。しかし、彼らは政治的体裁を気にします。彼らは収益を上げることを気にしています。彼らが裕福になればなるほど、その代償として我々やインド洋などの低い海抜にすむ貧しい人々は苦しめられているのです。ですから、我々は訴訟を起こすといっているのです。これには彼らが主権国であるため、綿密な調査が必要となります。現段階では、そうした国々の企業を訴えることにしています。多くの二酸化炭素を排出している企業をです。タバコ会社、石油や石炭会社などは最も悪い企業です。
FoEJ:どの会社ですか?
首相:石油、石炭、自動車、タバコ、兵器を製造している会社などです。また、工業国で石油を大量に利用して、海面上昇につながる地球温暖化を引き起こしている企業です。
FoEJ:訴訟時期はいつ頃?
首相:アメリカ、オーストラリア、そしてカナダですが、こうした国々は京都議定書を締結していません。調査をして、証拠を適切にかつ性格に収集するには、常に多くの時間を必要とします。我々はこうしたことに今取り組んでいます。我々を支援することに関心を寄せてくださっている弁護士の方々は、すべて終わらせるには1年から2年必要だといっていました。
FoEJ:弁護士はアメリカ人ですか?
首相:はい。アメリカ人と、その他ほかの国々からも関心を示してくれた方々がいます。我々を支援し、企業を相手取り訴訟を起こそうとアプローチして来てくれた弁護士は多く居ます。
FoEJ:オーストラリアからもいましたか?
首相:はい。オーストラリア、アメリカ、その他ヨーロッパからもいました。彼らは関心を持っています。
■IPCCの予測について
首相:この組織は、200人くらいの科学者からなっていて(注・正式には2500人)、海面は上昇していると明言しています。自然はなんでも変化させてしまう。どのような事態でもありえるのだと。私達の意見としては、自然は明日にでも、ツバルやどこでも強風を吹かすことができる。うそをついているわけではありません。何十年もこの島に住んできていますが、天候は明らかに変化しているのです。そして、科学者が強調するよりも、もっと早く変化が起こっているのです。私は68歳なのですが、私の幼少期は、ハリケーンが80から100マイル南東か南西に近づいているといったことは聞きませんでした。しかし、最近ではそういったことが発生してきています。そして、このようなことがなかったため、ハリケーンとは何のことか知りませんでした。しかし、今ではハリケーンも、強風も、海面上昇も発生してきています。これは真実なのです。これは、私達は私達を守るために、予防的措置をとる形で行動を起こさなければならないことを意味しています。
■ツバルでの気候変動・海面上昇の影響
FoEJ:ツバルでの気候変動と海面上昇のもっとも深刻な影響はどんなことですか?
首相:根菜に被害が及んでいます。海水が、陸地を通って入ってきてしまうのです。こうして我々の生活の基となっている作物の生長に影響が及んでいます。
FoEJ:今年の二月に大潮が発生したときの作物の状態をどうでしたか?
首相:海水が浸入してきて、畑にまで入ってきたと思います。こうして成長がとまり、作物が被害を受けてしまいます。
FoEJ:あなたの家は大丈夫でしたか?浸水はしなかったですか?
首相:浸水した家屋もありますが、私のところは大丈夫でした。私の家は海岸から10mほど離れていますからね。しかし、陸地の中には海水が染み出してくるところもあります。ほかのところに移らなければなりません。海水は簡単に人々の家を奪ってしまいます。
FoEJ:最悪の状態はいつ来ると思いますか?
首相:30年くらいでしょう。なぜなら気候が今すでに変化しているからです。ですから、私が言っているように、自然環境が刻一刻と変化しているのです。これを考えると、30年くらいでしょう。私達とともにツバルは海に沈んでしまうでしょう。ニュージーランドへ移住しようにも、ニュージーランドの移住制度はとても選択的で、厳しい条件を満たさないといけません。運の良かった人々は移住できますが、運の悪い人々はツバルと海に沈んでいくのです。
FoEJ:国家元首として、国が将来消えてしまうかもしれないというのは、とても悲しいことですね。
首相:それはその通りです。ここが故郷なのですから、とても悲しいです。我々もあなたがたと同じなのです。皆さんが、日本が沈んでしまうのを見るのと同じことなのです。とても悲しい気持ちになるでしょう。ここが故郷で、ここで生を受けたのですから。皆さんがご想像になるのと同じ気持ちを私は抱いています。同じ気持ちでとても悲しいです。ツバルが消えてしまうなんて。私はここで生まれ、68年間生きてきました。皆さんや地球上すべての人々が思っているように、この場所を愛しています。
FoEJ:オーストラリアやニュージーランドに要請をされたとき、「環境難民」という言葉をお使いになりましたか?
首相:もちろんです。みなが海面上昇の被害者なのです。難民、環境難民。我々は世界で最初の環境難民になることでしょう。環境問題に興味を持つ人々の多くがツバルに多大な関心を寄せてくれています。そうした人々はツバルに起こっているのと同じ現象が100年後には、世界中で起こると思っています。こうした観点からすると、ツバルの人々からのメッセージは本当の意味で心揺さぶられるものでしょう。ですから、ぜひともメッセージを出していただきたいと思っています。
そう、あなた方はツバルのことをもっと世界に伝えるために、おいでになったのですね。それはとてもいいことです。あなたのようなNGOの方々はとても心が寛容で、ツバルの境遇を世界に伝えようとしてくださっている。地球環境問題は、世界のすべての国々に影響が及んでしまいます。しかし、最悪の事態が発生するのは海抜の低い国々でしょう。あなた方がツバルを訪問してくださったことにとても感謝いたします。ですから、こうした方々がきてくださることが私は好きなのです。世界の人々が読めるように記事を書いてくださる。とてもいいことですね。いつかこうしたことで、変化が起こることを期待します。また、天候と同じように、政府も変化していっています。明日が雨でも、明後日は晴れかもしれません。変化という概念において私たちと異なる意見を持った人々は、ブッシュ大統領を支持するのでしょう。しかし、次にブッシュ大統領が任期を終えたときには、ほかの誰かが戻ってきてくれることでしょう。そして世界は変わるかもしれません。オーストラリアのハワード首相が席から降りれば、違った見方と優しい心をもったほかの誰かがやってくるでしょう。変化は起こるかもしれません。そう思っています。
■先進国へのメッセージ
FoEJ:メッセージはありますか?特に先進国に向けて。
首相:京都議定書を締結していない先進国政府にむけて要請したいとおもいます。こうした目的を持った国際的な約束事が必要なのです。京都議定書がうまれた場所に住んでいる日本の方々にも状況を考えていただきたい。貧しい国々に住む貧しい人々やあなたの友のことを思って欲しい。今後土地とともに消えてなくなってしまうかもしれない、貧しい国々のことを考えていただきたいと思います。
FoEJ:ツバル国民全員を受け入れて欲しいという要請をしたのですか?
首相:はい、そうです。それを言うのが主目的でした。もしほかの国が私達を受けいれてくれなければ、我々はおぼれてしまいます。私達は、親族がここでおぼれてなくなるのを承知で、この国を出るわけにはいかないのです。
FoEJ:地元住民からの反対は?
首相:人々は神が洪水など起こさないと信じています。ノアが救いに来たようにね。彼らは神がそう約束したといいます。もう洪水は起こらないとね。しかし、私はその考えはどうかと思います。なぜなら、実際に変化が起きているからです。そして、それは私達、先住民が目撃していることなのです。また、それは科学者によって支持されていることでもあります。科学的な測定方法とおなじことで、多くの人々が環境に何かが起こると信じています。
FoEJ:神を信じる人々は計画に反対していますか?
首相:彼らは言葉を発することで反対することができます。しかし、ひどい事態に直面したときにはショックを受けるでしょう。これは個人的な選択の問題です。残りたければ、それはそれでいい。安全な場所に移りたければそれはそれでいいのです。これは個人的な問題なのです。これに関して住民投票をしてもいいでしょう。Yesという人もいればNoという人もいるでしょう。
FoEJ:ツバルが財政支援をして欲しいだけなのだという批判意見に関してはどう思いますか?
首相:それは間違った意見です。我々は現実を話しているだけなのです。我々は憶測で話しているわけではありません。海面は上昇していると科学者も証明しています。それはとんでもないことです。
FoEJ:ツバルの美しさ、あなたの幼少期の思い出について教えてください。
首相:私のこどものころのことですが、私の家はフナフチから27kmくらい北にいったところにあるバイトゥプ島にあります。私のおじは島に自分の家をもっており、私の家族と同じ島に住んでいました。やしやその他の作物を植えて、子供達と生活していました。そこには遊び場があり、おじを尋ねて行っては子供達と遊んでいました。私はそれがとても好きでした。しかし、今はその島はどこにもありません。消えてしまったのです。これは強風やハリケーン、高潮などの影響によるものです。完全に消し去られてしまったのです。しかし、そのときのことは私の中でとてもよい思い出として残っています。そして、こうしたことがもうできない状況になっているのはとてもつらいことです。数千マイルも離れたアメリカでは、温室効果ガスが排出され、大気が汚染されています。こうしたことが、数千マイルはなれ、赤道を越えたところにある私達の島を消し去っているのです。しかし、そのときの記憶が私の中でいい思い出として残っています。
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