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ニュージーランドへの移住制度(PAC:Pacific Access Category)
「ツバル国民全員が海面上昇から逃れるためにニュージーランドへと移住を開始した。これは初の環境難民だ。」というような噂が流れましたが、これは真実とは程遠いものです。

結論から言うと、この移住制度はニュージーランドの移民政策の一環であり、公式には気候変動と海面上昇はまったく関係ありませんが、その裏では海面上昇が少なからず絡んでいるというものです。それほど、この国では海面上昇の影響が深刻になってきています。このため、これ以上の影響を出さないためにも、気候変動や海面上昇を引き起こしている先進国が補償という形で、温暖化と海面上昇の影響に対応していくための措置(適応策)のための資金供与を行っていくことが大切なのです。

■適応策のための資金供与の必要性
現在、温暖化の国際交渉では、適応策のための資金援助制度がある程度まで確立してきていますが、先進国が充分な資金供与の約束をしているとは程遠い状態です。ツバル政府内では、適応策プロジェクト案を作成し、気候変動枠組み条約の資金供与の役目を務めるGEF(地球環境ファシリティー)に提出する準備を進めていますが、GEFはプロジェクト資金の一部しか出さないため、協調融資する供与国を探しています。そして、こうした適応策を講じていくことが、被害の拡大しつつあるツバルでは急務となっています。

資金的、人的、技術的な資源がほとんど無いこうした国々が適応策を取れるかどうかは、先進国からの援助が充分になされるかによるのです。気候変動や海面上昇を引き起こしているのは先進国であり、汚染国が被害国に補償を行っていくのは当然ではないでしょうか?


■移住制度実施への経緯
1998年ごろ、ツバル政府はオーストラリア政府とニュージーランド政府に対して、気候変動や海面上昇の影響で住めなくなった場合の予防的措置としてツバル国民を受け入れて欲しいという要請を出しました。それに対して、オーストラリア政府は拒否し、一方のニュージーランド政府は受け入れるということを表明しました(タラケ首相談)。

これまで、ニュージーランド政府とツバル政府の間にはいわゆる「出稼ぎ制度」がありました。これは毎年約80人のツバル人が就労を目的にニュージーランドに出稼ぎに行くというものです。これは期間3年でその後はツバルに戻ってこなければならないという点で、今回の移住制度とは性格を異にするものでありました。移住制度はこの出稼ぎ制度に取って代わるものであり、現在すでに出稼ぎ制度は存在しないことになります。

前述したとおり、これは、「気候変動や海面上昇の影響に対する予防措置というような記述はまったく無く、公式的にはニュージーランド政府移民政策の一環ですが、その制度導入はツバルが海面上昇の影響をひどく受けるようになった時期と一致するなど、まったく気候変動と海面上昇が関係していないというわけではない(ティネ・レウエル・ツバル外務事務次官談)」。


■移住制度骨子

1. 申請条件
・ツバル国民であること
・18−45歳であること
・英語コミュニケーション能力があること
・NZでの職があること(家族も伴う場合は年収NZ$28,276以上)
・違法滞在歴がないこと

2. プロセス
・7月1日〜8月12日 登録期間
・8月13日〜9月半ば 抽選期間
・当選告知から3ヶ月間をもって申請書提出期間とする
・申請書受理を経て早ければ今年末から移住開始

3. 制度は2年後にレビューされる
4. 一年間の割当は75人
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