米欧に遅れをとるまいと、日本でも、バイオ燃料を大規模に導入し運輸部門の排出削減を図る意欲的な政策目標が掲げられています。国内の農林業振興をアピールしているものの、9割以上は輸入せざるを得ないと見られ、既に途上国にバイオ燃料開発のために資金を投じ始めています。
しかし、バイオ燃料を大規模に導入すれば広大な土地が必要となります。実際、先進国や新興国のバイオ燃料導入目標により生じた世界的なバイオ燃料ブームは、熱帯諸国での農園開発を加速しています。
ブラジルでは、牧畜や大豆・サトウキビなど食糧目的の耕作地需要増加に加え、バイオ燃料生産のための耕作地需要増加が加わり、アマゾンの森林減少が過去最大のペースで進んでいます。
東南アジアでも、インドネシアやマレーシアで、パーム油を原料とするバイオディーゼル(BDF)の生産で世界市場を主導しようとする国を挙げての開発競争が始まっています。これにともない、スマトラ島やカリマンタン島(ボルネオ島)の各地では熱帯林の農地転換が急速に進み、深刻な森林減少や土地を巡る企業とコミュニティの間での対立が続いています。
輸送エネルギーのごく一部を賄おうとするだけでも、逆にCO2吸収源である森林を急速に減少させ、食料難、土地紛争を引き起こしているのです。
バイオ燃料が、ガソリン代替の救世主でないことはすでに明らかです。自動車等の単体の脱・石油化に加え、輸送エネルギーを消費する移動が最低限ですむ消費、ビジネス、まちづくりなど、モビリティのあり方そのものの大きな変革が求められているのです。
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