8月23日フェアウッド研究部会セミナー報告

森林保全2024.7.10

初めまして、インターンの國兼です。

 

23日に行われた、フェアウッド研究部会のマルミミゾウについての講演会に参加してきました。

講師はWCS・自然環境保全研究員、NPO法人アフリカ日本協議会・理事の西原智昭さん。西原さんは、コンゴ共和国などアフリカ中央部の熱帯林地域で野生生物の研究調査や熱帯林保全に携わってこられた方で、今回は、マルミミゾウの棲む森で起こっている熱帯林や野生生物の保全の実態および先住民族の現状とその課題、エボラ出血熱の状況、そして日本との関わりについて講演をしていただきました。メインのテーマであったマルミミゾウは、ここ10年で62%も減少していて、その一番の原因となっているのは、象牙目的の密猟だそうです。

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この問題には日本も関わっていて、マルミミゾウの象牙というのは、印鑑、三味線などの日本の伝統工芸品に使われている素材で、高度経済成長期時代にコンゴ共和国からマルミミゾウの象牙を一番多く輸入していたのは日本であったそうです。現在でも日本の象牙管理制度は不十分で、マルミミゾウの保全と日本の文化(伝統芸能)。この二つをどちらも守るためには早急に対応をする必要があると感じました。

また、マルミミゾウは多種の果物を食べ、大量の糞を森の広範囲でします。つまり、さまざまな種子を森中に運ぶ役割を担っており、マルミミゾウの減少は森林の減少に直結するのです。

さらにコンゴ共和国では、木材資源確保のための森林伐採も行われ、森林の減少が進んでいます。そしてこの森林の減少が、間接的にエボラウイルスの感染に繋がっているそうです。エボラウイルスの感染経路としていま挙げられているのは、フルーツバットという現地では食用として食べられているコウモリによる感染です。フルーツバットはエボラウイルスの抗体をもっていて、このウイルスに感染している個体を人間が食べてしまうと、人間はウイルスに対する抗体をもっていないため、症状がでてしまうのです。

なぜフルーツバットによるウイルス感染の増加と森林減少が関係しているのか、それはまだ仮説の段階ではあるそうですが、森林の減少に伴い、それまで森の全域に生息していたフルーツバットは残された森に集中し、逆に現地住民の生活区域が広がったことで、フルーツバットと遭遇する確率が高くなってしまったことが原因であると述べられていました。

現在これらの地域では、マルミミゾウや森林だけではなく、現地に住む先住民族も存続の危機に晒されているそうです。このピグミーと呼ばれるアフリカ熱帯林地域の狩猟採集民族は、狩猟能力、危険な毒ヘビ、ハチ、アリなどを遠くからでも一瞬で見つける能力、また森を歩く能力が非常に長けていて、私たち現代人が持っていない、あるいは失ってしまった能力をもった、貴重な民族であるとおっしゃっていました。ですが、森林の消失、政府による定住化政策、貨幣経済の浸透、先進国型教育の導入と強制、主にこの四つの要因により、民族の存続危機に陥ってしまっているそうです。このままこの要因を解消できず、ピグミーが持っている能力、知識、伝統を失い、継承されることがなくなってしまえば、環境の保全や研究どころではなくなると西原さんは強く訴えていました。

この講演会は、いままで自分が知らなかった多くの知識を得ることができる機会になりました。全体を通して自分が特に重要であると考えたのは、環境を保全するということはただ単に森林だけ、生物だけを保全すればいいということではなく、一つの問題はそれ以外の他の要素とも深く関わっているという考え方でした。この考え方を、さまざまな活動で役立てていきたいと感じました。

 

 

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