低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する基本的な方針(案)等に対して意見を提出しました

2024年5月、水素社会推進法とCCS事業法とが国会で成立した。
水素社会推進法は、化石燃料由来のものも含めて水素やアンモニア等を「低炭素水素等」と定義し、その活用促進を掲げるものである。

「低炭素水素等」の基準などを含む「基本方針案」へのパブリックコメント(2024年8月7日~9月10日)に対し、FoE Japanからも意見を提出した。

・低炭素水素基本方針パブコメ 9月11日18時締切

低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する基本的な方針(案)等に対する意見公募|e-Govパブリック・コメント

・関連資料(6月7日審議会資料、「水素社会推進法について」)

総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 水素・アンモニア政策小委員会(第14回)/資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会(第15回)/産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 水素保安小委員会(第6回) 合同会議(METI/経済産業省)

FoE Japanから提出した意見

1)「基本方針案」の「低炭素」の基準について

・支援する「低炭素水素等」について、国内製造、再生可能エネルギー由来のものに限定すべきである。

(理由)

・低炭素水素の要件として、「天然ガス改質の際の水素製造に係る CO2排出量と比較して、約70%の排出削減を実現する水準として 3.4kgCO2/kg-H2」が掲げられている。
国際輸送時の排出を考慮しない(Well to Gate)こととなっているが、カーボンニュートラルの目的に鑑みれば、輸送時も含めたライフサイクルでの基準とすべき。

・CCSについても、技術的課題、立地の課題、コストの課題が未解決である。

・国内製造を優先するとしながらも、海外からの輸入についても支援することとなっている。輸送時のCO2排出があることに加え、エネルギー安全保障の観点からも、国内製造のみとすべき。

・再生可能エネルギー由来の水素・アンモニア等を海外から輸入する場合にも、高価格、輸送時のCO2排出もあり、エネルギー構造の海外依存は改善されない。
・原子力由来の水素・アンモニアについても、原子力発電自体の依存度を低減する政策や、原子力発電自体の不安定性・不確実性に鑑み、推進すべきではない。

2)「基本方針案」の低炭素水素等の用途について

・水素・アンモニアの発電への利用(火力発電への混焼)は、石炭火力・LNG火力の利用を延命・推進することとなるため、除くべきである。

(理由)

・化石燃料由来の水素・アンモニア等を支援し、一度設備の建設や製造、サプライチェーンの構築を行えば、数十年にわたって使い続けることになる。それを化石燃料への混焼という形で発電に用いることは、石炭火力も含めた化石燃料発電の利用を当面、すなわち少なくとも10年以上にわたって継続させてしまう。

・水素・アンモニアの発電への利用は、2030年度までに20%程度、2040年度までに50%程度が見通されているにすぎず、仮に専焼が実現するとしても2050年に近い年である。それほどの年月、化石燃料、特に石炭火力の利用を温存することは、気候危機への対策という観点から全く許されない。

3)水素等供給事業者の判断基準となるべき事項(案)について
低炭素水素等の供給方法として、①非化石エネルギー源(再エネ等)の利用、②CCSの利用、③非化石証書その他の方法、とあるが、これらは「再エネ」に限るべきである。

(理由)

1)の理由と同じ。
さらに、③で言及されている非化石証書等の利用は、実際には化石燃料からのCO2排出を行うということである。抜け穴として使われ、まったく排出削減につながらない恐れがある。


以上

(以下参考)



・審議会

水素・アンモニア政策小委員会 (METI/経済産業省)

・水素社会推進法の概要と問題点

水素社会推進法案の概要と問題点 | 国際環境NGO FoE Japan

 

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