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ボランギット集落(2002年3月)
稲刈りをするボランギット住民(2002年3月)
ボランギット住民への聞き取り(2002年3月スタディツアー) |
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住民の話では、7月下旬、重武装した軍服姿の男約7人を連れた事業者が、3回に分けて「強制立ち退き」を敢行。住民らは為す術もなく、家から引きずり出されました。着の身着のままで、その場からヘリコプターで連れ去られた人もいたようです。ダムの建設現場周辺の住民は現在、非常に大きな恐怖感とともに生活を送っています。
事業者のこの暴力的な行為について、国際協力銀行は国会議員との会合の中で「現地からは、立ち退きにあたってトラブルはなかったと報告を受けている。暴力的な手段に訴えるような『強制排除』もなかった。」と回答。貯水に関しても、「貯水の開始に踏み切るにあたって解決されなければならない問題は何もなく、底流口をふさぐ作業もJBICの立ち会いの下、平和裏に行なわれた。」と主張しました。
しかし、これまで、この事業の影響を受ける先住民族や住民は
(1)先住民族の合意の欠如(フィリピン先住民族権利法の違反)、
(2)自治体の合意の欠如(フィリピン地方自治法の違反)、
(3)被影響住民の生活再建の失敗
などの問題を解決する唯一の手段として、貯水の中止を求めてきました。そ の貯水が開始されたことは、現時点で事業者が問題の解決を放棄したことと
同じです。
また、7月5日、公共事業チェック議員の会が日本政府および国際協力銀行へ融資凍結を申し入れたことに対し、7月26日、国際協力銀行の丸川理事から「貯水を始めるにあたり、対話を継続すること、また、強制排除は絶対にしないとの確認をフィリピン政府からとった。」との回答がありました。その貯水の開始前の段階で、すでに「強制排除」が起こっていた事実は、日本政府および国際協力銀行の認識の甘さを示しています。
国際協力銀行は今年4月、新しい環境社会配慮のためのガイドラインを制定し、その部分施行を10月に控えています(全面施行は2003年10月)。その前向きな姿勢とは裏腹に、依然として、サンロケダムのような杜撰な事業への融資を継続していることは、今後のガイドラインの適切な運用に、大きな疑問を抱かせます。 |
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