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地元の先住民族・住民グループ および 国際環境団体 からの要望書 |
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2002年8月12日
※日本では、8月13日、この要望書を日本政府(外務省、財務省)、 国際協力銀行および事業出資者である丸紅、関西電力に送付しました。
サンロケダムの貯水中止を!
サンロケダムの操業をストップして!
8月8日午後1時、サンロケダムの貯水が開始されました。貯水が中止されない限り、1600ヘクタールにおよぶ貯水予定地の中にある8つの小さい村は、数ヶ月のうちに水没してしまうことになります。
貯水が始まる前、この村々にはほとんど人は暮らしていませんでした。というのも、移住する際、「よりよい生活」を約束されたからです。しかし、持続可能な生計手段が一切提供されなかったため、サンロケパワー社によってすでに禁止されていたにもかかわらず、貯水予定地にしばしば砂金採取に行く者がいる状態が続いていました。7月、貯水予定地にいた20人以上の砂金採取者らが、フィリピン国家警察および地方の役人、また、フィリピン電力公社(NPC)のスタッフによって、彼らの小屋から強制的に引きずり出されました。彼らはそこを立ち退くよう強要された上に、彼らの小屋も焼かれてしまいました。こうして、貯水の開始の準備が整ったのです。
この8つの村に加え、ダム上流に暮らす20,000人以上の先住民族が今後、土砂堆積や洪水によって損害を被ります。これは、影響を受ける先住民族社会の土地、資源、そして文化遺産に対して彼らが持つ権利を直接、侵害することになります。同ダム事業が影響を受ける先住民族の「自由意思による、事前の、情報を十分与えられた上での合意」を得ていなかったというフィリピン政府自身の調査結果があるにもかかわらず、先住民族の生活がダムの操業によっては危険にさらされないかのように扱われ、厳密な法解釈の下、その調査結果も簡単に片付けられてしまっています。
6月、フィリピン政府およびフィリピン電力公社(NPC)は、同事業により悪影響を受ける人々が指摘してきた問題すべてに満足な取り組みがなされるまで、貯水を延期するようにという要求に、彼らが応じることを示しました。その中の問題の一つは、経済面での悪影響であり、サンロケダムの貯水予定地で砂金採りに従事してきた人々の代替の生計手段が確保されていないことでした。また、アグノ川流域の先住民族社会がさまざまな形で、悪影響を受けることが別の問題として指摘されてきました。
上述したような問題が依然未解決のままである現時点で、サンロケパワー社(SRPC)が貯水を開始することを許可してしまったことは、フィリピン政府とNPCの背信行為です。フィリピン政府とNPCが影響を受ける地域社会に対して言行不一致の態度を取っていることの証左にほかなりません。他方、人々の正当な要求にもかかわらず、SRPCは、すぐにでもダムの操業を開始して投資の元を取り、さらなる利潤を生み出そうと、問題を無視して貯水を敢行してしまったのです。
サンロケダムの電力購買契約(PPA)の下、SRPCは、発電する電力量がゼロであっても、12年間操業する間に、原資分の利益どころか、それ以上の利潤を上げられることが保証されています。NPCは、サンロケダムで発電される電気を、現在の電力料金より200〜300%も高い電気料金価格で支払わなくてはならないのに加え、最大出力費用および稼動費用に基づき、12年間、月900万米ドルもの額をSRPCに支払わなくてはなりません。NPCは総額で、12年間、最低でも12億米ドルを支払う必要があり、発電量は、高いときには年に300万米ドル、月に500万米ドルもの巨額を支払わなくてはなりません。結局はフィリピン国民が肩代わりすることになるSRPCに対するこのNPCの支払い義務のことを考えると、NPCが契約破棄をする場合の条件に従ってその利子を支払わなくてはならないとしても、ダムを稼動せず、SRPCの資本支出を払い戻すほうが安く上がることになります。そうすれば、フィリピン国民はSRPCに高い電気料金を支払わずにすみます。SRPCから電気を買うことはただ、既存の電力過剰に加え、影響を受ける地域社会とフィリピン国民が、財政面、環境面、経済面、そして社会面で多大な代償を払うことになるだけです。
フィリピン政府の現在の指導者たち自身が、独立発電事業者(IPP)であるSRPCとの契約が財政的にも法的にも問題をはらんでいることを認めています。フィリピン政府は、深刻な土砂堆積の問題や、上流および下流での多大な洪水被害の可能性などダムの稼動による悪影響を含め、移住した農民や砂金採取者の生計手段の問題に対する解決策の提示など、多くの問題に対する解決策を模索する一方で、サンロケでの発電に向けたあらゆる準備を中止するべきでした。フィリピン政府の指導者は、SRPCに勤める外国人の友人たちがダムの稼動が遅れることによって被る損失よりも、フィリピン国民の幸福を明らかに軽視しているのです。
フィリピン政府は、このところ、サンロケダムプロジェクトを正当化するため、灌漑事業を引き合いに出しています。サンロケの貯水池に集中することになる汚染物質の有毒性の点から、灌漑の質について指摘されている懸念を、フィリピン政府は無視しています。同ダムの灌漑部門のために建設される巨大な用水路は、10,000ha以上もの水田の破壊にもつながります。さらに、サンロケダムの灌漑部門はまた別の融資を必要とし、貧しい農民とフィリピン国民にさらなる法外な支出をしいるだけです。フィリピン灌漑庁の技術者が、アグノ川の氾濫原に位置する農地への不安定な水供給の問題に対して、サンロケダムが唯一の解決策でも、最善の策でもないと認めていることを、フィリピン政府はうまく言い繕ってきました。しかし、サンロケダムは、パンガシナン州の灌漑のニーズを解決する手段ではありません。というのも、サンロケダムによってより大きな悪影響が生じるからです。深刻な環境への影響や、負債の問題、また、生活手段を持つ権利を含む様々な権利の侵害を引き起こすことなく、パンガシナン州の農民のニーズを満たすためには、より適切な灌漑の方法があるのです。
フィリピン政府およびNPCは、影響を受ける住民が指摘してきた問題を考慮して、同事業を再評価したのであれば、より早期に事業の実施を中止することができたはずです。現時点で、彼らに残されている唯一の選択肢は、国民の損失を軽減するために懸命に取り組むのみです。
フィリピン政府は、サンロケダムプロジェクトに着手し、継続し続けたために、国民の発展に寄与するというよりもむしろ、重大な判断ミスを犯してきたという事実、深刻な社会的不正行為を招いてきたという事実、また、影響を受ける地域社会の権利が公然と侵害されてきたという事実を甘受し、認めるべきです。海外からの融資を受け、海外の投資家によって進められいているこの事業は国民の発展のためではなく、明らかに彼らの利潤追求のためのものです。道徳的にみて、環境や国民へ取り返しのつかない損害が及ぶことを阻止するのと同じく、富める国と貧しい国の間の不均衡をただ悪化させるだけのプロジェクトを中止することは当然のことです。
したがって、我々はフィリピン政府、フィリピン電力公社、およびサンロケパワー社に対し、以下の事項について要求します。
1. サンロケダムの貯水中止
2. 電力購買契約の破棄
3. 影響を受ける先住民族の権利の尊重
4. 移住した農民に対する持続可能な生計手段の提供
5. 砂金採取者の現金収入源の喪失に対する補償および彼らに対する持続可能な生活手段の提供
我々はまた、日本政府および国際協力銀行に対し、この不当な事業への残りの融資の拠出を早急に凍結するよう求めます。
シャルピリップ・サンタナイ先住民族運動(SSIPM)
イトゴン・バランガイ間連合(II-BA)
アグノ川の自由な流れを取り戻すための農民運動(TIMMAWA)
故郷コルディリェラの農民連合(API-TAKO)
コルディリェラ民族連合(CPA)
国際環境NGO FoE Japan(FoEJ)
国際河川ネットワーク(IRN,USA)
プレスリリース (2002.08.09) 「フィリピン・サンロケダム 抜き打ちで貯水開始」
https://FoEJapan.org/aid/jbic02/sr/press/20020809.html
地元の住民組織からの声明文 (2002.08.05)
「貯水予定地の破壊と強制立ち退きに訴えたサンロケパワー社」
https://FoEJapan.org/aid/jbic02/sr/statement/20020805.html
地元の先住民族・住民グループからの声明文 (2002.08.09)
「サンロケダムの貯水中止を! サンロケダムの操業をストップして!」
https://FoEJapan.org/aid/jbic02/sr/statement/20020809.html
FoE Japanから日本政府/国際協力銀行へ(2002.08.09) 「貯水停止と融資凍結についての要望書」
https://FoEJapan.org/aid/jbic02/sr/letter/20020809.html
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