※このプレス・リリースは、3月14日の国際反ダム・アクション・デーの活動に合わせたRWESA-Philippinesの活動(記者会見および日本政府とのマニラでの会合)のために用意されたものです。
2005年3月10日
巨大ダムは利益より被害を生み出している
JBICは巨大ダム事業への融資を止めるべきだ
国際協力銀行(JBIC)が別の巨大ダム事業、今回はフィリピン南部の北ダバオ州とコンポステラ・バリー州に位置するダム事業になるが、そのダム事業への融資を迷っているなら、約2万人の小農民と先住民族の移転とともに、地震による災害の可能性といったものが、JBICにとっても最低限の懸念事項になるように思われる。
しかし、もし融資を決定すれば、JBICは災害を招くだけでなく、影響を受ける住民との間に対立の雰囲気を自ら生むことになるだろう。JBICは同様に、ダム事業による環境と住民への影響を最小化するという最近作った自らのガイドラインに違反する形にもなりかねない。
こうしたことから、東・東南アジア河川ウォッチ・フィリピン(RWESA-Phils)のメンバーは、フィリピン人は「ひどい社会・環境破壊を引き起こしてきたそのような事業は必要ない」と述べ、フィリピンにおけるダム事業への融資を止めるようJBICに要求した。RWESA-Philsはフィリピンにおいて破壊的な河川開発事業を中止するために運動を行なっているダムの被影響住民と住民組織の全国ネットワークである。
現在、フィリピンでは計画、建設段階などさまざまな段階にある巨大ダム事業が14件あるが、その大半はJBICによって融資された、あるいは、融資されているものである。
木曜の記者会見で、Hugpong Dibabawon and Manguangan (Hudima)の先住民族DibabawonsとManguangans部族は北ダバオ州のサウグ川多目的ダム事業(SRMDP)に反対した。同案件は国家灌漑庁(NIA)と日本の海外農業開発協会(OADA)による共同事業(FoE Japan注:OADAの関わりは、調査段階での補助調査。)で、38億ペソの事業に対する融資が、OADAの仲介によってJBICからなされるのではないかと言われている。
「この事業は危険かつ不適切なものだ。同事業は、影響を受ける地域に暮らす先住民族と小農民の中に混乱を生じさせ、更なる苦しみをもたらすだろう。」とHUDIMAの代表Edeleano Otbot氏は述べた。
Otbot氏によれば、SRMDPはDibabawonsとManguangans部族の先祖代々の土地660ヘクタールと重なっている。事業地はまた、The Philippine Rift Zone、The Philippine Trench、The Davao Trenchという3つの大きな地震断層につながっているため、活断層地域でもある、と彼はさらに言った。
北ダバオ農民組織(DANOFA)とその他の農民組織の農民らもSRMCPに対する反対の意を表明した。
DANOFAのスポークスパーソンであるAmancio Carmelo氏は、同地域の農民らが事業の利益を受けない一方で、アサンション町の6つの村で農地が沈んでしまう、と述べた。それとは別に、7つの他の村も水没という差し迫った危険の中にある。というのは、堤高49m規模のダムの貯水池を作るために、700ヘクタールの森林地が一掃され、その後、そこは沈んでしまうことになるからだ。
Carmelo氏によれば、同ダム事業を通じて病気が蔓延する可能性もあるという。最近の健康に関する調査の中で、ニュー・コレラ町の7つの村でSochistoma Japonicaという精神分裂病や死にも至る皮膚病につながる飲料水媒介の寄生虫が広まっているということがわかった、と彼は言った。一旦ダムが建設され運用されれば、水田に続く側水路に沿って流れていく水によって、その寄生虫が運ばれていくことになるだろう、とCarmelo氏は述べた。
Kalikasan-PNEの全国コーディネーターClemente Bautista氏は、サウグダム事業を論争を招いているパンガシナン州のサンロケ多目的ダム(SRMD)事業と関連付けた。SRMDはJBICによって融資がなされ、フィリピン政府が負債を抱える不利なものであることが明らかとなっている、とBautista氏は述べた。「事業の部分的な費用として4億ドルを政府が負っているだけではなく、フィリピン人は今、サンロケダムが発電をしない場合であっても、サンロケダムの運用者である外資企業に月1,000万ドルという唖然とせざるを得ない金額を支払っている。」とBautista氏は続けた。
「これまでの経験は、フィリピンにおけるJBICのダム事業が決して住民の利益につながっていないことを示している。一層悪いことには、それらのダム事業は環境破壊、住民移転、生活手段の崩壊、政府内の汚職、そして、外国多国籍企業による私たちの水やその他の自然資源の乱用を招いてきた。」とBautista氏は述べた。
フィリピンのダム影響住民を手伝っている組織、FoE Japanの波多江秀枝も同じ意見を共有している。フィリピン政府とJBICは「住民を窮境に追いやってきた」サンロケダムやボホールダム事業の経験から学ぶべきだ、と彼女は述べた。JBICとJICAが資金を投じたボホール州での幾つかのダム事業では、見込んでいた経済的利益が達成されていないことにも、彼女は言及した。
JBICの新ガイドラインには、影響を受ける移転住民の回避についての条項が設けられており、JBICのマニラ事務所も、サウグ川多目的ダム事業において、「自らのガイドラインに違反する危険性」があることを考慮するべきだ、と彼女は述べた。
ダムの影響を受ける住民らは、3月14日、マニラでRWESA-Philsによって行なわれる国際反ダムアクションデーに参加する。RWESA-Philsはパシグ市オルティガスにあるアジア開発銀行で抗議行動をおこなう予定だ。
彼らはまた、金曜日に、JBICと会合を持ち、JBICの融資による巨大ダム事業への反対の意を繰り返し伝えることになっている。
※RWESA-Philsの国際反ダム・アクションデーに合わせた一連の活動の情報
> FoEJ 現地レポート 「RWESA-フィリピンの国際反ダム・アクション・デー」(2005年4月2日)
> サンロケダムの問題に取り組む地元団体 TIMMAWAのポジション・ペーパー
(2005年3月10日)
> ボホール灌漑ダムの問題に取り組む地元住民のプレス・ステートメント
(2005年3月8日)
> サウグダムの問題に取り組む地元団体の共同要請書
(2005年3月10日)
> RWESA-Philippinesの活動に関連した記事 (2005年3月12日Today紙)
> RWESA-Philippinesのプレス・ステートメント (2005年3月14日)
> RWESA-PhilippinesからJBICマニラ事務所へのレター(2005年3月15日)
「JBICの融資する巨大ダム事業に関する会合の遺憾な取り消しについて」
> サンロケの地元住民が反ダムアクションデーに行なった活動の関連記事
(2005年3月17日Sunstar紙)
※個別のダム事業に関する情報
> サンロケ多目的ダム事業
> ボホール灌漑ダム事業
> サウグ川多目的ダム事業
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