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「『生活の糧を!』苦しくなる生活に地元で抗議活動」 (2003.11.14)


「生活の糧を!」苦しくなる生活に地元で抗議活動   

――色濃く残るフィリピン:サンロケダムの影響く
 
  11月12日、サンロケダム用地内へ続くメイン・ゲート前に500名以上の人々が集まりました。同ダムの建設の影響で生活の糧を失ったパンガシナン州の農民および砂金採取者が中心で、(1)適切な補償、(2)持続的な生計手段、(3)今年雨季に起きた中部ルソンの洪水被害に関する第三者による調査(サンロケダムも原因の一つとして挙げられている)――の3点を事業者に要求するためです。

1998年にダム建設が着工されて以来、事業者らは土地や家屋、農作物に対する金銭補償、また、生活再建計画といった補償措置により、生活はより良くなると広言してきました。しかし、5年が経った今、現地で目につくものの一つに、事業者の用意した再定住地の空き家があります。たとえば、事業者も認めているように、カマンガアン再定住地には、1999年に約180世帯が移転してきましたが、そのうち、少なくとも72世帯(今年9月時点)がすでにその場を後にし、再定住地の外に「再」再定住しています。水・電気代の支払いが苦しいのに加え、事業者の提供する狭い再定住地では、自分たちの消費用の野菜を栽培することすらできないため、新たな生計手段を求め別の土地に移ったり、家をレンタルすることで収入源にしようとする人々が出てきているからです。
  放水するサンロケダム
 <洪水掃きから放水するサンロケダム>
 6ゲートある洪水掃きのうち2つを開き放水。雨季の大雨により水位のあがった貯水池の水位を調整する。(2003年9月 FoE Japan撮影)


再定住地の空き家
 <カマンガアン再定住地の空き家>
 生計手段がないため、水・電気代などを払えずにここを後にする人がいる。(2003年9月 FoE Japan撮影)
漁の準備
 貯水池に漁に行くため、網を修理している。8〜10人で1グループを組み行なっているということだ。昼3、4時頃家を出て、貯水池で漁をしながら一晩を過ごし、朝帰ってくるという。(2003年9月 FoE Japan撮影、以下同)

廃材集め
 廃材集めから帰ってきた若者のグループ。収入を7人で分けるということだった。

廃材集めの道具
 サイト内の大きな廃材をLPGを使って分断し、持ち帰る。
    再定住地には行かず、自分で新しい移転地を探した人々のなかにも生活の苦しくなっている人々がいます。ダムの用地から歩いてほんの数分のところに移転したある家族は、今年5月にすでに発電を開始したサンロケダムを横目にこう語っていました。「隣の家は電気を止められてしまいました。自分たちも、ここ数ヶ月電気代を滞納しているので、近いうちに止められてしまうでしょう。」(今年9月の現地聞き取り調査より)

このようななか、少しでも生計の足しにと地元の人々が始めているのは、ダム貯水池での漁とダム用地内での廃材金属の収集です。「上流の鉱山から流れてくる有毒物質によって魚が汚染されていれば、人体にも被害が及ぶ可能性がある。」こんな懸念を持ちながらも、漁に従事する地元の人々の数は現在増えています。また、敷地内での廃材集めについては、昨年8月から9月にかけ、ダム用地内で、廃材を取りに来たのではないかと疑われた住民が事業者の雇用するガードマンによって発砲されるという事件が相次ぎ、うち1件では19歳の少年が射殺されました。その後、事業者は、廃材を用地内に埋めて処理しましたが、それでもなお、生計手段を持たない地元の人々のなかには、廃材を拾いに行く毎日を続けている人々がいます。

12日の抗議活動に参加した人々は、事業者側の補償措置が失敗であったと訴えました。そして、適切な金銭補償と農地や砂金採取の代わりになる持続的な生計手段の提供を事業者に求めました。しかし、抗議活動の最中に行なわれた3時間にわたる会合のなかで、何とか暮らしを立てていこうとしている地元の人々に対し、事業者の態度は「傲慢だった」と参加した住民は話しています。

サンロケダムの融資元である日本の国際協力銀行(JBIC)は、10月初めにもったFoE Japanとの会合のなかで、「生活再建は長期的な視点で確保していかなくてはならない」と主張していました。これまで長期にわたって、「生活再建」を粘り強く求め続けてきた地元の人々に、事業者、また、JBICはいつまで「待つ」ことを求めるのでしょうか。「今の生活」がなければ、「長期的な生活」の見通しなど立たないことは誰にでも理解できるはずです。


現地NGOプレス・リリース 「農民、砂金採取者 サンロケパワー社の対応に失望」 (2003年11月13日)

地元紙記事 「政府を悩ます サンロケ多目的ダムへの果てしない抗議」 (2003年11月14日)
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