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現地レポート(4)
「巨大ダムの弊害大きく 地域社会に恐怖感」 (2002.11.20) |
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2002年11月20日
巨大ダムの弊害大きく 地域社会に恐怖感
抑圧されるサンロケダムへの反対の声 |
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日本の国際協力銀行の融資約800億円で建設が進められてきたフィリピン・サンロケダム。現地住民の指摘してきた懸念、問題は何ら解消されないまま、今年8月に貯水が開始され、現在、プロジェクトは約98%まで終了しています。事業者によれば、来年早々にも、発電部門の操業運転が始まるとのことです。
しかし、この巨大プロジェクトが順調に進む一方で、現地周辺の地域社会では現在、社会不安が増大し、住民は恐怖感とともに日々の生活を過ごしています。サンロケダムに反対する住民への監視の目がかなり厳しくなっており、とくに、サンロケダムに反対している現地の農民・砂金採取者の組織「TIMMAWA(アグノ川の自由な流れを取り戻す農民運動)」のメンバーへのハラスメント、活動の妨害などが顕著になってきているためです。
ハラスメントは、「テロリスト、NPA(新人民軍)」などのレッテルをTIMMAWAに貼り、他の住民がTIMMAWAの活動に参加するのを抑制することから、TIMMAWAの集会の妨害、TIMMAWAの中心メンバーの家の取調べまで、これまでに何度となく繰り返されてきました。このような動きは、サンロケダムのプロジェクト・サイトであるパンガシナン州サン・マニュエル町、サン・ニコラス町両町で見られ、どちらも町の自治体(Municipality)レベルでイニシアティブが取られています。
サン・マニュエル町のある村の住民によれば、最近では、軍隊が村の中を巡察することも頻繁にあるとのこと。住民の活動参加に対する無言の圧力となっているだけでなく、日常の生活の中でさえ、恐怖感を抱かざるを得ないような状況が生まれています。また、サン・ニコラス町では、10月半ばから、町長が「サンロケダムに隣接するアグノ川沿いの村で、テロリスト・グループによるシンパ拡大の動きが見られるため、治安の悪化が懸念される」とし、夜間外出禁止令(午後9時〜午前4時)を執行。TIMMAWAをテロリストとして扱い、住民によるサンロケダム反対の声を抑制する動きであることは明らかです。
11月16日には、以上のようなことを背景とし、TIMMAWAのリーダーの家周辺で、威嚇発砲を伴った事件も発生。翌日は、サンロケダムの影響で生活難を訴えている砂金採取者の集まりが予定されていましたが、TIMMAWAのリーダーの住む村の住民は恐怖感から、誰一人として集会には参加できませんでした。
(この件に関するより詳細な情報は、WEBサイトでご覧いただけます。
→→ https://www.FoEJapan.org/aid/jbic02/sr/press/20021120b.html)
パンガシナン州サン・マニュエル町、サン・ニコラス町の住民は、サンロケダムの建設によって、農業・砂金採取などの生活手段を失い、現在、多くの人が経済的な生活難を抱えています。そして、今、彼らは、家族内・地域社会内での不信感、不安、恐怖感など、社会的にもさまざまな弊害を受けています。
アジア最大級の大きさを誇るサンロケダム。この大型プロジェクトをめぐって、地域の生活に生じている様々な影響、変化。TIMMAWAのリーダーは「サン・ニコラス町で、自分たちに対するハラスメントが頻繁に起こり、実際にどのような状況なのか、ちゃんと知ってほしい。」と述べていました。
国際協力銀行はこれらの事実を真摯に受け止め、現地の問題解決に取り組むべきです。また、現在、26次円借款パッケージの中で融資が検討されているサンロケダムの灌漑部門への融資決定に際しても、このような社会状況について十分認識し、融資を検討することが求められます。
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