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サンロケダム周辺で暮らしてきた人々は従来、アグノ川とその周りに広がる土地に根付いた生活を送ってきました。朝5時に起き、6時半には学校に出かける子供たちへの朝食を用意し、家畜にエサを与え、その後、水田や川での砂金採りに出かける――そんな日々を過ごしてきたと言います。
しかし、今は耕す土地がない。川での砂金採りももうできない。最悪の場合、家の周りにブタ小屋を建てたり、野菜を植えるほんの小さな庭もない。何をするでもなく、家の玄関先や木陰にぶら下がったハンモックに腰掛けている人々の一人は「今はすることがないから、ただ座っているだけ。昔だったら、土曜には、学校が休みの子供たちも一緒に砂金採りに行っていたけれど。」そうぼやいていました。
そんな中、生活手段を求めて山に戻っている人々もいます。貯水エリア(ブランギット村)から事業者の用意した再定住地に移住せず、以前生活していた場所から一つ山を越えた別の山の中腹、おそらくは貯水池の中に沈まないであろう場所で、生活を続けていこうとしている人々です。彼らは月に3〜4度の割合で山から下り、魚や炭などを売って、必要なものを調達した後、また山に戻って生活をしているということでした。
9月半ば、その彼らの生活している場所を訪れる機会がありました。慣れていない私たちの足では片道5、6時間(彼らの足で3、4時間)。一つ山を登りきると、ダムに向かって貯水池のちょうど左側に出、そこからはずっと、ダムと貯水池を望みながら貯水池を取り囲む山々を越えていきます。そして、貯水池を挟みダムとちょうど向かい合う辺りまで来たところで、ようやく一軒、二軒と家が見え始めました。現在、4、5世帯がこの辺りで生活しているということです。 |
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<ダムと貯水池> 歩き始めて2時間ほどすると、ダムと貯水池が見え始めた。(2002年9月 FoE Japan撮影)
<新しい住まい> 歩き始めて5時間。ようやく目的地の家に到着する。(2002年9月 FoE Japan撮影) |
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