【声明】Climate Justiceに基づいた気候変動に関する国別貢献の強化・再提出を

気候変動

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パリ協定の1.5℃目標に整合した数値目標を伴った、気候変動に関する国別貢献(Nationally Determined Contribution。以下、NDC)の強化・再提出を求める。

パリ協定のすべての締約国は、NDCを、5年ごとに強化して国連に提出することが求められており、ほとんどの国が最初のNDCを提出している。しかし、現時点で各国が国連に提出しているNDCのままでは、今世紀末には、パリ協定で合意された1.5℃を大幅に上回り、3℃以上温度上昇すると計算されている。そのため、各国はNDCを見直し再提出することが求められている。また、2018年に公表されたIPCC1.5℃特別報告によれば、1.5℃目標達成のために、2030年までに世界全体で2010年比45%のCO2削減が求められている。

日本は今でも世界第5位の大型排出国であり、歴史的な排出量も甚大な中、日本のNDCは「2013年比で2030年26%削減」「2050年80%削減」となっており、英国やフランスが2030年までに1990年比少なくとも40%削減、ドイツが55%削減といった数値を挙げる中、不十分であると言わざるをえない。

気候変動の緊急性:既に深刻化する気候変動の影響

現在すでに、地球の平均気温は産業革命以前より1℃以上上昇している。 2019年、世界各地で猛暑や大雨・洪水、森林火災等、災害が発生し、多くの人が犠牲になった。フランスやパキスタンでの記録的な熱波、ブラジルやインドネシア、オーストラリアでの森林火災、日本でも昨年の西日本豪雨に引き続き、10月には連続して上陸した巨大台風によって大きな被害があり、年々脅威を増す気候変動はもはや「気候危機」と表現されるまでになっている。

また、国連難民高等弁務官事務所が発表した2018年末時点における難民2,040万人のうち3分の1が、多くの場合、気候変動の悪影響によって極めて弱い立場に置かれ、資源やインフラの欠如に苦しんでいる発展途上国に避難している。[注1]

このように、気候変動の被害は、これまで温室効果ガスをあまり排出してこなかった途上国においてより顕著にあらわれている。

求められるClimate Justice

一方2019年は、気候変動対策の強化を求め、スウェーデン国会前でたった一人座り込みを始めたグレタ・トゥーンベリさんの行動に勇気づけられた世界中の若者による、気候の公平性(以下、Climate Justice) を求めるムーブメントが発展した年でもあった。Climate Justiceとは、先進国が化石燃料を大量消費してきたことで引き起こした気候変動への責任を果たし、すべての人々の暮らしと生態系の尊さを重視した取り組みを行うことで、化石燃料をこれまであまり使ってこなかった途上国が被害を被っている不公平さを正していこうという考え方である。

こういった、気候の「不公平」に取り組み、日本が歴史的責任を果たすためには以下のことが求められる。

1. 温室効果ガス排出削減目標の強化およびその実施

・ 2030年の温室効果ガス排出削減目標を、「1990年度比50%の水準まで削減」(6億3500万t-CO2)に引き上げ、再提出すること。

・ 気候変動対策の実施にあたっては、化石燃料の消費を前提としたCCS/CCU等の利用は避け、温室効果ガスの継続的な排出を認め大規模な温室効果ガス削減を遅らせる恐れのある国際炭素市場取引制度に依存しないこと。気候変動対策を推進する際、ライフサイクルにわたる温室効果ガス排出評価、十分な環境社会影響評価、人々の参加、情報公開を担保するための制度設計を行うべきである。

・ 国際貢献においても、インフラ輸出偏重の支援策ではなく、すでに生じている損失や被害への技術・資金支援や、コミュニティのニーズに沿った支援を中心にすること。現在、日本は石炭火力を含め海外の多くの化石燃料事業に公的支援を行っており、環境・社会影響が問題となっている。これまで化石燃料をはじめ多くの資源を消費してきた日本には、気候変動への歴史的責任がある。この歴史的責任を果たすため、日本は、国内における温室効果ガスの大幅削減だけでなく、化石燃料関連事業への公的支援は早急にやめ、持続可能でコミュニティのニーズやFPIC(自由意志による、事前の、十分な情報に基づく合意)に基づいた緩和・適応策への支援、またすでに生じている損失や被害への資金・技術支援へと切り替えること。

2. エネルギー基本計画の見直し

現行のNDCの基盤となっているエネルギー基本計画の見直しを求める。
現行のエネルギー基本計画では、再生可能エネルギーの主力電源化を謳いながらもその割合は22〜24%に留まる一方、原発20〜22%、石炭26%としており、気候変動対策の観点からも不十分と言わざるを得ない。
福島原発事故の痛切な反省を踏まえ脱原発を明記するとともに、2050年代の脱炭素達成のためにも2030年までに石炭火力は停止し、2030年には再生可能エネルギーを中心(40%以上)とした、原発ゼロ、石炭ゼロのエネルギーミックスの実現を目標とすべきである。
同時に、最終エネルギー消費量についても、 2030年度に720百万kl(2010年度比30%削減)以下を目指すべきである。[注2]

上記のような「気候の公平性(Climate Justice)」に則った日本のNDCの達成には、「経済成長ありき、産業政策優先」の現在の日本の政策から、市民の参加を前提とした「自然やそれとともに生きる人々を中心にすえた持続可能で民主的な社会」を目指す政策へのシステム・チェンジを必要とする。ライフスタイルの変化を含むシステム・チェンジを今後10年間で実現するためにも、社会・市民に開かれたプロセスで進めることを求める。

[注1] https://www.japanforunhcr.org/archives/18513

[注2] 未来のためのエネルギー転換研究グループ、「原発ゼロ・エネルギー転換戦略:日本経済再生のためのエネルギー民主主義の確立へ」、2019年6月25日、https://www.etffjp.group/

 

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