「もしもシベリアに永久凍土が存在しなければ、そこは広大な砂漠となっているはずです」 日本における凍土研究の大家、北海道大学の福田正巳教授はこう強調しました。 なぜシベリアに、密度の高い植生が存在しうるのか。それは永久凍土の分布と関係があります。タイガの下に数百メートルもの厚さで形成されている永久凍土が夏、表層部分が溶け出し、タイガに水分を供給するのです。 永久凍土は、約2万年の寒冷期に形成されましたが、その後、寒冷期が終わってもなくなってしまわなかったのは、地表の森林が断熱材の働きをしたからです。 タイガと永久凍土・・・・この両者は相互に依存しあう共生関係です。 そこでもし、森林が伐採されたり、火災でなくなってしまったらどうなるでしょうか。下の図のように、永久凍土は失われ、二度と回復することはありません。永久凍土に蓄積されていた有機物は分解され、大量のメタンが発生します。このメタンは二酸化炭素の20倍もの温暖化作用があるため、地球温暖化が加速されます。そして永久凍土がまた溶け出す・・・・というような悪循環が引き起こされる恐れがあります。 「永久凍土がなくなるとどうなるか」。この疑問に大しては正確な答えは現段階ではわかっていません。しかし、地球環境の変動、砂漠化、土地荒廃、森林の減衰などが互いに影響しあい「何かとてつもないことが起こる」という可能性は充分あるのです。
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