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内閣衆質一五一第七一号 平成十三年六月十五日 内閣総理大臣 小泉 純一郎
衆議院議長 綿貫民輔殿
衆議院議員首藤信彦君提出 ケニア共和国ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員首藤信彦君提出
一について →→質問主意書の該当部をみる ソンドゥ・ミリウ水力発電計画(以下「本件計画」という。)については、ケニアとの間で、平成元年六月に事業実施に先立つ調査、設計等(環境影響評価、事業規模、事業費及び事業期間の調査等)に対し六億六千八百万円までの円借款を供与することを内容とする交換公文の締結を行った。この円借款については、同年十月の借款契約締結の後、当該調査、設計等を日本工営株式会社が受注し、約六億六千六百万円が本件円借款の対象となっている。 平成九年一月には、本件計画の第一期分として土木工事の一部(取水設備、導水路、アクセス道路等の整備)及びコンサルティングサーゼスの実施に対し六十九億三千三百万円までの円借款を供与することを内容とする交換公文の締結を行った。この円借款については、同年三月の借款契約締結の後、土木工事部分につき、国際競争入札の結果、株式会杜鴻池組、ベデッカ、マーレーアンドロバーツ共同企業体が受注し、約四十四億二千五百万円が本件円借款の対象となっており、また、コンサルティングサービス部分につき、日本工営株式会杜が受注し、約十八億七千六百万円が本件円借款の対象となっており、いずれも現在工事及び業務が進ちょく中である。 また、本件計画の第二期分として残りの土木工事(放水路、発電所、変電所等の整備)及び発電機等の調達に対する追加の円借款の供与については、平成十一年九月にケニァ側に事前通報を行ったが、いまだ交換公文及び借款契約の締結に至っておらず、現在、慎重に検討を行っている。 なお、この第二期分については、ケニア側が、既に第一期分の工事が進ちょく中であり、工事の円滑な実施の確保の観点から第二期分の準備を進める必要があること、第二期分の円借款について平成十一年九月に日本側から事前通報がなされていること等から、第二期に対する円借款の実現可能性につき相当程度の見通しが得られたとの判断の下に、自らの責任により、平成十二年一月に入札手続を開始し、同年四月に受注企業を決定し、同年六月に国際協力銀行に対し入札評価結果に係る同意申請を提出したと承知している。国際協力銀行は、第二期分の供与については現在政府において検討中であるため、この入札評価結果に係る同意については、第二期分の供与についての結論が出た段階で対応を判断することとなる旨ケニア側に伝達していると承知している。 円借款は、被援助国からの返済を前提とする援助形態であり、被援助国の債務返済可能性を含む経済状況に配慮した上で供与を決定すべきことは当然である。一般に、ある国の将来の債務返済可能性を予測するには、当該国のマクロ経済動向や輸出入の推移、その前提になる世界経済等の動向等、様々な不確定要因を総合的に勘案する必要がある。ケニアの債務返済可能性に関しても同様であり、今後も引き続き慎重に推移を見守る必要はあるが、我が国としては、ケニア側が国際通貨基金と経済の安定化を図るため貧困削減成長措置を実施することに合意していること、平成十二年十一月にパリで開催されたケニア政府代表者と関係債権国政府の代表者との間の協議において、債権国側がケニアに対し債務削減に至らない条件での債務繰延に合意したこと、ケニア側がこれまで累次にわたり債務削減を求めない方針を明確に示していること等を踏まえつつ、ケニアに対し本件円借款の供与を慎重に検討しているところである。
二について →→質問主意書の該当部をみる 本件計画に関連し、平成十三年一月、現地において事業実施機関であるケニア電カ公社、事業実施業者、地域住民、本件計画について今まで間題点を指摘してきた者を含む非政府組織(以下「NGO」という。)及び有識者が参加した対話集会(以下、「対話集会」という。)が行われ、本件計画の継続支持、第二期分の円借款の早期供与の要望及び関係者による定期的な協議の場の設立が決議されたと承知している。これを受けて、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者から構成される本件計画に関する技術委員会(以下「技術委員会」という。)が設立されており、本件計画の実施上の諸間題については技術委員会の場において改善に向けた議論が行われると承知している。 本件計画による発電所が完成し、導水路にソンドゥ川の水を転流する際には、転流に伴うソンドゥ川の流量の減少による生態系等への影響に配慮し、乾季においても必要な河川維持流量を確保することとなっていると承知している。河川維持流量については、技術委員会において必要に応じ調整を行うことを検討していると承知しており、具体的には、現地の水供給プロジェクトの改善や、乾季において流量が少なくなった場合に発電所の操業を抑制すること等が検討されていると承知している。ソンドゥ川の月平均流量.の平均値は有秒四十一.五九立方メートルであり、発電のために必要な水量は毎秒四十立方メートルであるとの御指摘であるが、これは発電所を最大稼働した際の水量であり、実際には河川の状態に応じ、発電所の操業抑制等が検討されることとなっており、流量が少なくなる乾季を含めて発電のための転流によってソンドゥ川の河川維持が害されることのないよう必要な河川維持流量が確保されるものと承知している。いずれにせよ、転流に伴うソンドゥ川の流量減少により問題が生じる場合には、技術委員会における協議を踏まえ、必要に応じ事業実施機関等において適切な措置が講じられるものと承知している。具体的には、平成十三年六月中旬に技術委員会から本件計画に係る環境杜会間題について報告書が提示される予定であると承知しており、我が国としては、報告書の内容を精査するとともに現地の状況を注視し、引き続きケニア側に対し、適切な対応を行うよう要請を行っていく考えである。 なお、現在、本件計画による水量の変化に伴い影響を受ける区間においては、ソンドゥ川の水は灌漑に使用されていないものと承知している。
三の1について →→質問主意書の該当部をみる 平成三年に作成された環境影響評価書は、事業実施機関により既に公表されていると承知している。さらに、事業実施機関は地域住民に対し、土木工事の実施前から本件計画の内容に関する説明を行ってきており、ソンドゥ川の水の発電所への転流や放水路を通じての復流による流量変化についても既に説明済みであると承知している。また、事業実施機関は、今後とも定期的に地域住民との対語を行っていく予定であり、その中で更に本件計画の内容に関する説明を行うこととしていると承知している。我が国としても、この点につき現地の状況を注視していく考えであり、また、既にケニア側に対し、適切な対応を行うよう要請を行っているところである。
三の2について →→質問主意書の該当部をみる 対話集会において事業継続支持を表明した事実はないとして対話集会の議事内容に疑念を示している御指摘のNGOがいかなる組織か、また、現地住民をどの程度代表するものか明らかでないが、対話集会では、そこでの議論を踏まえて本件計画の事業継続支持等を内容とする決議文が作成され、議長が読み上げた後に挙手により採決がなされ、反対する者なく同決議文が採択されたと承知している。 なお、対話集会の討議の記録については、日本側参加者において非公式な記録を作成した経緯はあるが、対話集会はケニア側により開催されたものであり、公式な記録はケニア側の責任で作成され、公表されるべきものと考えているが、.政府としては、対話集会における討議の模様を把握するための文書及び電磁的記録として、日本側参加者の責任において作成した対話集会の討議の概要、ケニア側作成の対話集会の討議の概要、対話集会における決議内容を記したケニア側議長作成の決議書及び対話集会を収録したビデオテープを求めに応じ提示することとしている。
三の3について →→質問主意書の該当部をみる 技術委員会は、対話集会における決議を受けて設立され、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者から構成されており、本件計画の実施上の諸問題について改善に向けた議論が行われていると承知している。また、これまで技術委員会においてその構成について討議が行われ、必要な構成員の追加も行っていると承知している。御指摘のNGO連合が、具体的にいかなるNGOから構成されているのか、また、現地住民をどの程度代表する組織であるのか明らかでないが、御指摘の問題は、技術委員会の組織及び運営に係る事項であり、技術委員会において検討及び判断が行われることになっているものと承知している。しかしながら、我が国としても、技術委員会が本件計画の円滑な実施のための重要な討議の場との認識の下、既にケニア側に対し、技術委員会の組織及び運営について地域住民及びNGOの意見を十分に吸収し、本件計画実施上の問題点に対応するとの観点から最も適切な形態のものとされるよう要請を行っているところであり、また、技術委員会で討議された改善案が適切に実行に移されていくような体制が整備されることが重要であることについても指摘を行っている。 なお、技術委員会の現委員長は、事業実施機関から選出されているが、これは事業実施機関が本件計画実施に係る責任主体であること等にかんがみ、最初の技術委員会において協議を経て決定されたものと承知しており、現委員長が本件計画実施者の利益のみを優先する態度を続けてきたとの御指摘のような事実は確認されていないと承知している。また、御指摘の本件計画の第一期において重大な汚職、人権侵害が指摘されている事項のうち、汚職の問題に関しては、技術委員会において事実関係を調査中であると承知しており、我が国としても、既にケニア側に対し、十分な実態調査が行われるよう促しているところである。また、人権侵害の間題については、今後ケニア側の司法手続等の中で事実関係等が明らかにされるものと考えられるが、我が国としては、同様にケニア側に対し、十分な実態調査が行われるよう促しているところである。
三の4の@について →→質問主意書の該当部をみる 国際協力銀行の環境杜会調査団による現地調査においては、対話集会における住民の意向等を確認することを目的とし、時間的な制約の間題はあったが、地域住民、NGO及び技術委員会の構成員から意見聴取を実施したとの報告を受けている。具体的には、補償対象者の一覧表から当該調査団員が無作為に選んだ住民及びNGO側が指定する住民合わせて約十名を対象とし、これらの住民を訪間の上、意見を聴取したと承知している。雇用の拡大等については、現在、技術委員会において検討されていると承知しているが、我が国としても、既にケニア側に対し、本件事業実施地域からの雇用の拡大等について指摘があることに言及の上、適切な対応がなされるよう要請を行っているところである。なお、対話集会においても、多くの住民が本件計画の継続、雇用の拡大等を要望したことが、在ケニア日本国大使館及び国際協方銀行の報告により確認されている。
三の4のAについて 本件計画の開始に伴って新しく営業を開始した商店や飲食店については、国際協力銀行の環境杜会調査団による現地視察等により、具体的な数の把握までは至っていないものの、増加していることが確認されている。事業実施機関により実施されている環境杜会モニタリングに基づく抽出調査の結果によれば、補償対象者の約半数が補償金を用いて宿泊所や商店などの経営を行っていることが確認されている。また、立ち退きによって影響を受けた地域住民の生活水準等の状況については、事業実施機関によるモニタリングが実施されており、問題があれば技術委員会の議論を踏まえ、改善に向けた検討がなされることと承知しているが、我が国としても、既にケニア側に対し、適切な対応がなされるよう要請を行っているところである。
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