ケニア円借款案件(ソンドゥ・ミリウ水力発電事業)
9月18日の衆議院・外務委員会での政府答弁(未定稿)

→→衆議院外務委員会による調査議員団の派遣について
→→調査議員団に対する日本のNGOの要望書(2001.08.28)をみる
→→調査議員団に対する現地NGO連合体の覚書(2001.09.03)をみる

→→衆議院・外務委員会 ODA調査団報告会(2001.09.27)

 2001年9月18日の衆議院外務委員会では、下村博文議員からの国会質問の中 で 「たいへん民主的で、環境にも配慮した形で事業が進められている」との報告が なされました。それに対し、田中真紀子外相も「追加融資を行う方向で検討する」 と応えています。


*この議事録は、9月18日に行われた決算委員会のビデオを利用して作成したものです。

  • 下村委員
     私は、ODAの問題について取り上げたいというふうに思います。

     我が国の歳入が五十兆近くの中で、ODAに対しては約一兆円がことし投入をされている。来年は一割削減がされるという状況の中で、このODAのあり方について抜本的に見直しをしていこう、今こういう状況でございます。その中で、国会で、本委員会でも何度か同僚委員が取り上げられておりましたが、ソンドゥ・ミリウ水力発電、全部で九回取り上げられた。また、文書質問も四回取り上げられたということで、マスコミなどでも報じられておりますし、大変に注目をされている。このソンドゥ・ミリウ水力発電が実際今どういう状況になっているのかということを、この委員会として公式に派遣団をだし、視察をしよう、こういう状況の中で、理事五人で今月の二日から四日までケニアに行ってまいりました。

     このソンドゥ・ミリウ水力発電については、改めて我々視察したメンバーが、国会議員の方々あるいはNGO、一般の方々を対象に報告会を今月の二十七日に行うという状況でございますけれども、改めてこの委員会で、この視察に行った結果をとらえて大臣にお話を伺いたいと思いますが、その前に、我々がケニアのソンドゥ・ミリウに行ってまいりました簡単な視察の概況についてご報告を申し上げたいというふうに思います。

     これは、もう既に十六年前から、ケニアの大変に我が国に対する期待、一番大きな期待として、ケニア国内においてまだ電力状況が十%もいっていないということで、ぜひ電気開発を最大限ケニアはやりたいということの中で、既に七十億円の円借款のもとに、これは他の委員がダムという言い方をされていましたが、実際はダムではありませんで、これは水流式の、山にトンネルを掘ってそこに水を流して、そして山の上から水を落とすことによって水力発電を行う、こういう発電でございますけれども、この工事が第一期が進んでいたわけでありますが、地元のNGOがインターネットなどを通じて我が国のNGOの皆さん、そして国会議員の方にもそういう情報が行ったということで、国会で九回にもわたって質問をされた、こういう案件でございます。

     この地元における環境悪化の問題とか、それから、ケニアの債務負担能力があるのかどうか、この事業が適切であるということのほかに、ケニアの債務負担能力があれば、第二次円借款をすることによって更に百億追加で我が国が出すということに対する問題点、それから、この第二次の、フェーズツーの入札手続が不透明ではないか、あるいは政治家の関与があるのではないか、あるいは工事中におけるNGO関係者における銃撃とか住民への暴力等々、あるいは記者の逮捕も含めまして、人権問題があるのではないかというようなことが我が国の国会で質問されたわけでございます。

     全てを全部見ることは出来ませんでしたが、少なくともこのプロジェクトにおける目的と会議とか、環境・社会面での問題点、それから、ケニアの債務返済能力があるかどうかということについて、我々は精力的に、反対をしているNGOの代表の方々にもお会いしましたし、またモイ大統領等初め関係閣僚の方々にもお会いをしましたし、また、現地に出向きまして、現地の工事現場の方々あるいは住民の方々と幅広く、大勢の方々から意見を聴取したというのがこの視察の実体であります。

     地元のケニアのデーリー・ネーションという新聞が、我々の視察に対して、当初はこの日本の議員団は、待機していたケニア代表団を残したまま、日本語のできる事業技術者の同行のもと独自に事業地を訪問することを決めるなど緊張感漂う場面もあった。電力公社職員によると、日本の議員団は最大限独立しての調査を希望し、キスム空港到着時にはプロジェクトの車両に乗ることさえ拒否し、独自でチャーターした車で事業地を視察したというふうに報道されておりますように、かなり我々としては客観的な立場からきちっとソンドゥ・ミリウ水力発電の状況について把握をしてきたつもりでございます。

     この中で、日本において、明らかに間違った情報の中で国会質問をされているという例が実はたくさんあったということを言わざるを得ないということがございます。幾つもそういう例はあるわけでありますけれども、小学校二つの建設費が四億二千万もかかっているのは、以上ではないか、何らかの汚職とかあるいは不正などが行われているのではないか、これについてきちっと調べろ、こういう質問をされた、あるいは質問趣意書を出された議員の方もおられました。

     実際、調べてみますと、小学校二校、それから中学校一校、また教会、そしてそれを含めて周辺の土地整備等、合わせて二億五千七百万円が使われていたということで、我が国の状況等を考えて、また現場の物価から考えて、決して高い額ではなかった。

     その中で、例えば小学校では、ひとつ九百万を超える始業ベルが使われている、これも同じような趣旨で問題ではないかということが委員会で取り上げられていましたが、実は、九百万円のベルではなくて、九百ケニア・シリングのベルだった。九百ケニア・シリングというのは、日本円にして千四百円なんです。この千四百円のベルをそこの責任者が寄贈を学校にしたということが、どういうわけか九百万を超える始業ベルとなった。

     事ほどさように、このような間違った形で我が国に対して情報が入っている部分があるのではないかということが現地に行って分かった。

     それから、これはポイントだと思いますが、河川維持流量です。この発電所が出来ることによって、今申し上げましたように、ダムではないわけですから、トンネルに水を引いて、そのトンネルから水を流すことによって電気を出す、その導水路の方の水をソンドゥ川から転流すると水が減ってしまう。特に、ケニアにおいては、乾季、雨季がはっきりしております。乾季においてこの発電所の取水源から水を取ることによって、下流における生態系に影響し、それは、例えば下流には滝があるんですが、滝が枯渇するとか、あるいは周辺の森林が影響されるとか、あらゆる生態系への影響があるのではないかということも取り上げられておりましたが、実際に、もちろんその後の地元の方々との協議の上でもあるかというふうに思いますが、一定のソンドゥ川の水については確保するということで、乾季において一定以下になればこの発電所の水は取らないということで、これはちょっと日本においても考えられないぐらいですね。ですから、その期間は発電所が停止するということを前提として作られているということで、大変に民主的なシステムで考えられているのではないかということがわかったということであります。

     それから、なぜそのような、ある意味では誤解されあるいは間違った情報が我が国のNGOを通じて来ているのかということは、現地のNGOの方々、特に、反対としているNGOの方々にお会いしたわけですけれども、その反対としているNGOの方々、コピヨ元議員、それから気候・ネットワーク・アフリカのアクム女史等々、五、六人の方々にお会いしたわけですけれども、お二人の元国会議員がこのNGO、ソンドゥ・ミリウの代表者になっているんですが、この反対派のNGOの元国会議員というのは、この国も小選挙区制でございまして、落選した議員が、地元のケニアの人たちの言い方をそのまま申し上げれば、来年に選挙があるんですが、来年の選挙のために自分の政治運動としてこのソンドゥ・ミリウの反対運動をNGOをつくって、やっている。事実、そういう方々にお会いしたということでございます。

     ですから、そういう政治的な思惑の中でそのままNGOの方々の意見を聞くと、逆に我々が利用される、誤解される。こういう状況が実はケニアのNGOの中にあって、我が国のNGOとはその辺の性格が異なっているということも、現地で実際にそういう方々

    にあって感じたことでございます。

     しかし、そういう反対としているNGOの方々を含めまして、これはモイ大統領から地元の人たちも、我々が行ったときには、これは組織化されたとはとても思いませんが、地元住民の方々が、とにかく日本から国会議員が来たのは初めてのことだと。そもそも外務委員会としてケニアどころかアフリカ地域に視察に行ったのは初めてのことであったわけでありますけれども、是非この第二次借款、このソンドゥ・ミリウ水力発電が継続できるように是非してくれという住民の方々の熱烈な要請といいますか要望といいますか、それを受けた中での視察であったということについてご報告を申し上げたいと思います。

     しかし、そういう状況があるにもかかわらずストップをして、そして一年半ぐらい立って、そして我が国でも国会で再三取り上げられて問題になっているそのプロジェクトが、ことしの一月の二十四日に住民対話集会というのを開きまして、これはその事業がストップしているということで、関係者の方々に集まってもらう、この事業の現状報告と、それから地元住民、NGO等々の方々から意見、要望、不満を聴取する事を目的として開催をし、そしてその結果、この事業のために住民代表、それから有識者、NGOから成る技術委員会というのを設置をしたんですね。この技術委員会を通して、このソンドゥ・ミリウの事業については地元の方々の意見を反映しながら進めていこうということで、この技術委員会には先ほど申し上げました反対派のNGOの方々も入りまして、そして、この技術委員会を来ようと経済活動問題小委員会、それから、保証と移住問題担当小委員会、環境問題担当小委員会、安全と健康問題担当小委員会という委員会をつくって、住民対話集会を行っているという状況です。

     この住民対話集会等の中での技術委員会で、最近、特にこの七月になってから、ぜひこのプロジェクトは進めてほしい、住民はこの事業の完成を必要としている、本事業によってもたらされる便益はこれに派生して生じている問題をはるかに上回るということがこの技術委員会で報告をされ、また、このNGO等を通じた地域の住民の苦情とか懸念、これについても、正しいものもあれば、しかし、的を得ていないものもあるということで、かなり民主的な技術委員会をつくった中で結論を設けて、ぜひこれを進めるべきであるということを提案しております。

     また、先ほどの反対をしているNGOの人たちも、この事業そのものについては、ぜひこれはケニアにとって必要なものであるから進めてほしいということであります。ちょっと客観的なうがった見方をすれば、これは我が国に対してもそうですし、また、ケニア政府に対してもそうですが、反対しているNGOの人たちからすれば、ごね得といってはちょっと言葉は語弊があるかもしれませんけれども、もっといろいろなことを要求することによって資金を引き出すということのために反対をしている部分もかなりあるのではないか。それぐらい、日本でも同じようなプロジェクトはいろいろとあると思うんですが、このプロジェクトが中断したことによってこのような技術委員会をつくって、そして地元の人達の意見を丁寧に継続して聞くというようなことはちょっと考えられないことではないかと思います。

     ちなみに、道路をつくって、そして建築資材等を運ぶ中でほこりが出る、粉じんの問題があるということで、これは日本ではちょっと考えられませんが、一、二時間ごとに山の中で、民家がそれほどある地域ではないんですけれども、そういうところにいわゆる水まきをすることによって、数時間ごとにほこりを立てないように立てないようにという配慮をしたり、さらには百メートル置きぐらいに土盛りをつくりまして、車がスピードを出せないようにするというような、日本でもしないような大変な配慮を環境対策としては随分気を使ってされている。逆に日本以上にケニアの方が環境問題についてはるかに先進国で、また、住民の人たちの意見を随分聞いているのではないかというのが我々の感想でございます。

     これをしていると話がこれだけで終わってしまいますので、このあとはまた二十七日の報告会で土肥委員長を中心として詳しく行うと思いますので、ちょっと質問をさせていただきたいと思うんですが。

     一つは、今申し上げましたような技術委員会ですね。これはNGOとか学者とか事業機関等の代表が定期的に参加をしてやっているわけですけれども、こういう委員会がケニアとかそのほかの国において設けられている、そういう前例は実際あるのかどうか、日本ではちょっと聞いたことはないんですが、これについてお聞きしたいと思います。

  • 植村副大臣
     ただいま下村委員のお尋ねの技術委員会のことでございますが、その前に、この十五年以上にわたりましたソンドゥ・ミリウ水力発電計画についてのいろいろな問題がございました。しかし、今回は委員長を初め委員の方々がじかに行って、百聞は一見にしかずということで、いろいろなことを調査され、しかもこれが評価されているということは、本当にこの委員会の派遣ということは意義があったものと思います。

     特に、ODAに関してのいろいろなうわさがございますが、こういう問題も一切に、ODAが借款を行う場合に、綿密に計算されたものであることを裏づけた、そういう意味におきまして、非常に高い評価をされるものだと個人的には思っております。

     さて、今お尋ねの技術委員会のことでございますが、近年、世界的にこの環境、社会問題という意識が高まってまいりましたところでございますが、我が国といたしましては、こういった円借款事業の実施に当たりまして、非援助国の事業実施機関が住民やあるいはNGOから意見を聞くという、公聴会を開催するということはありましたが、このような例はほかにもありました。しかし、この技術委員会のように、住民あるいはNGO、事業実施機関の代表や有識者の方々が事業実施上の問題について定期的に協議し、あるいは解決策を提言するという枠組みが設けられたことは、近年、他に同様の例があるとは聞いておりません。

     したがって、この委員会の取り組みにつきましては、非援助国の側においていろいろな立場の利害関係者を含む幅広い範囲の人々の参加を得まして、社会、環境問題などの事業実施上の問題に対応するような真剣な姿勢を示すものとして評価に価するものと考えております。

  • 下村委員
     ありがとうございます。

     今お答えいただいたように、技術委員会等を設置するということから診ても、一〇〇%とは言えないかもしれませんが、かなり地域住民の苦情、懸念については配慮しているということで、環境問題等については非常に対応しているのではないかというのが私の結論でございます。

     また、政治家の関与の問題でありますが、これは直接わからない部分もありますが、現地の関係の方々との話し合いの中で、特定の政治家の関与はあり得ない、これは大臣も既に答弁されていますが、改めて現地へ行ってそういう認識を持ちました。

     それから、債務負担能力の問題でありますが、これについては、ケニアの債務負担能力について外務省の見解をちょっと確認をしていきたいと思いますが、いかがでしょうか。

  • 植村副大臣
     債務返済能力の予測ということは御承知のように、今の世界的な非常な混乱した経済事情だというときに当たりましては、大変難しい問題ではありますけれども、ケニアの債務返済能力も世界経済の動向全般にかかわるということは今申し上げた通りでございますが、今後慎重にそのあり方について対応していくということは必要であると思います。

     しかし、ケニアが債務削減を行わない方針を累次にわたり表明していること、あるいは昨年十一月のパリ・クラブでは、債務削減に至らない条件での債務繰り延べが合意されたこと等を踏まえて検討しているところであります。

  • 下村委員
     これは田中大臣にお聞きしたいわけでありますけれども、一方、こういう状況の中で、最初に申し上げましたように、ODA予算の一〇%削減、もう予定されているわけですけれども、どのような分野をどのように削減されようとしているのか、基本的な方針についてお聞きしたいと思います。

  • 田中国務大臣
     御存じのとおり、今財政状況が大変厳しい中にありますので、ODA予算につきましても、めり張りのついて効率性の、しかもしっかり見えるようなものに組み込まねばいけないという観点に立ちまして、いろいろ検討いたしておりますが、先ほど下村委員が大変詳しくレポートを言ってくだすって、もっともっと伺いたかったぐらいでございましたけれども、その御報告を伺って、このケニアの問題についてむしろ具体的に申し上げた方がよろしいかと思いますけれども、ソンドゥ・ミリウにつきましては、第二期分につきましても円借款を供与する方向でやはり検討していきたいというふうに思います。

     それは私どもの調査もございますし、また、今先生がおっしゃったようなああいうふうなことも踏まえておりますが、いずれにしましても、効率的に私どもの税金が大いに使われるようにトータルで運用していかなければならない、かように考えております。

  • 下村委員
      ソンドゥ・ミリウについても今大臣からお答えいただきましたが、我々も現地の視察の中では、これはいろいろな問題があって一年半おくれた。このおくれただけによって水力発電所の損害が日本円にして三十億ぐらいにはなるということでありますが、やはり、ケニアの全般的な状況の中で、これは、ここで中断してストップをさせるということではなくて、改善点等解決をしながら、反対派の人たちも推進をしてほしいというのは、これはケニア全体の声でもありますから、ぜひこの第二期の供与については早めに決定をすることが望ましいのではないかというのが、行った大方のメンバーが恐らく感じたことではないかというふうに思います。

     しかし、今後、これだけ国会で取り上げられたODAの問題もなかったのではないかというふうに思いますし、今申し上げたようなところではクリアをしているというふうに思いますが、その前に質問いたしましたケニアの返済能力については、これはきちっと把握をしていただきながら、本当に発展途上国に対して喜ばれるようなODAをすることによって国際貢献をしていただきたいと思います。

     ありがとうございました。

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