NGOの要望書


このプロジェクトについて

世界銀行の中国・チベット入植プロジェクトの停止を求めてNGOレターを提出

6万人近くの貧しい中国系農民をチベット自治区ドゥラン市に入植させようとする世界銀行のプロジェクトについて、7月5日、NGOが日本理事あてに以下の要望書を提出しました。

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世界銀行 日本代表理事
原田 有造様

2000年7月5日

「中国西域貧困削減プロジェクト」に関する要望書

 7月6日に世界銀行理事会が予定されております「中国西域貧困削減プロジェクト」につきまして、私どもは、去る4月末に提出されました査察パネルの報告を誠実に検討し、本プロジェクトの融資を中止するよう要望いたします。

 多くのチベット人・モンゴル人が居住する青海省都蘭県に5万7千に及ぶ農民を入植させるという本プロジェクトの計画については、独自の文化・宗教をもつ先住民族の人権、大規模な農地開発による環境への影響、環境アセスメントや現地住民の参加などの点で、かねてより多くのNGOから問題点が指摘されてきましたことはご承知の通りかと存じます。

去る4月に理事会に提出されました査察パネルによる報告書は、いまだ一般には公開されておりませんが、様々な報道機関や国際NGOからの情報によりますと、プロジェクト準備の過程において、先住民、非自発的移住、環境アセスメント、自然生息地、ダムの安全性、害虫管理など7つの政策について明らかな違反があったと報告してるとのことです。これらの点は多くのNGOや専門家によって指摘された問題点・懸念を裏付けるものです。

私どもは、特に以下の点について多大な憂慮と懸念を感じています。
(1) 環境・社会アセスメントにおける不備 世銀の環境アセスメント政策は代替案の検討を義務付けているにもかかわらず、本プロジェクトのアセスメント報告書には代替案が存在しておらず、代替案との比較検討がされていない。また、世銀のEAガイドラインによれば詳細なアセスメントを要する《カテゴリーA》に分類されるべき計画(大規模な移住、ダム・貯水池建設、灌漑、土地の開墾など)が入っているにもかかわらず、本プロジェクトはカテゴリーBに分類された。さらに、プロジェクト地域が狭く限定されたため、少数民族を含めた多くの住民が環境・社会アセスメントの対象外となった。

(2) 影響を受ける地元住民、特に先住民族の参加の問題 たとえばプロジェクトによって、この地域を行き来する遊牧民族の遊牧ルートが侵害されることになるが、彼らに対するコンサルテーションはまったく行われなかったと聞いている。また、実際にヒアリングを受けた住民についても、「プロジェクトに反対すれば迫害されるという恐れ」を感じているという心理的事実が確認されており、実質的な意味での「住民参加」は実現されていない。

(3) 先住民族行動計画 多様な先住民族の違いや意思が反映されていない。プロジェクト計画の入植予定地にはチベット族、モンゴル族、トゥ族など様々な民族が居住しており、それぞれ固有の文化・社会・宗教的背景を考慮した個別の先住民行動計画が策定されるべきである。

(4)世銀事務局のガイドライン実施体制の問題
世銀のスタッフ間でガイドライン(Operational Policies, Operational Directivesなど)の重要性とその遵守すべき内容についての認識が不統一で、明らかに拘束力があると想定されているガイドラインを、拘束力がないと認識している点が指摘されている。こうした事実は、本プロジェクトの参加ガイドラインの実施、環境影響評価分類などにおいて、他の国と異なる環境分類をするなどにより、中国における環境・社会アセスメントがおざなりになった要因のひとつである。このような実施体制における場当たり的な対応は、世銀が融資するプロジェクトの質の低下を招くとともに、世銀への不信をもたらすことになる。

●要望事項●

1.「中国西域貧困削減プロジェクト」への融資撤回
査閲パネルの報告を誠実に検討し、地域住民の実質的な参加が不可能な本プロジェクトを停止すること。

2.貧困緩和のための代替案 貧困緩和を目的とした代替案を作成し、ガイドラインに基づき検討すること。その際には、先住民族計画を個別の民族毎に作ること、同時に真正な参加を保証すること。

3.世銀のガイドライン実施体制の見なおしと監視 プロジェクトの質を確保するため、独立委員会を設置、他の中国のプロジェクトについても各種のガイドラインの実施が適切にされているかどうか調査を行うことを世銀事務局に要求すること。

以上につきまして、世界銀行に対して第2位の出資国として、責任ある判断を下されますことを切に希望致します。

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これまでの経過について
独立審査パネルの報告書 概要
プロジェクト取り下げ(2000.07.06.)


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