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現地レポート(6')
「12月5日 国連人権委員会 特別調査官のヒアリング」 (2002.12.15) |
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2002年12月5日
Luzon-wide Regional Dialogue with the UN Special Rapporteur on
Indigenous Peoples' Rights, Dr. Rodolfo Stavenhagen
(ルソン全地域における先住民族の権利に関する
国連特別調査官Dr. Rodolfo Stanvenhagen とのDialogue)
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日時:2002年12月5日(木)9:00〜15:30
場所:バギオ市Santa. Catalina Convent
主催:Tebtebba Foundation
UN-OHCHR
LRC-KSC, CPA, KAMP
(Dialogueのサンロケダムに関する部分のみ要約)
1.イトゴン町ダルピリップ村の先住イバロイ民族によるプレゼンテーション
●地元組織SSIPMのVice-Chair
・ 自分たちは、サンロケダムの建設工事が始まる前、1995年から、サンロケダムの操業開始によって起こる土砂堆積により自分たちの村が埋まってしまうのではないかと懸念してきた。それは、サンロケダムの上流に1950、60年代に建設されたアンブクラオダム、ビンガダムの経験があるからだ。しかし、自分たちに対するコンサルテーションが行なわれなったりと、人権を侵害されてきた。
・ サンロケダムの操業が始まり、土砂堆積が起これば、自分たちは今の村から出て行かなくてはならなくなるだろう。そして、その際、自分たちの先祖代々の土地が公共地として扱われ、補償ももらえないのではないかと危惧する。
・ 自分たちの大事な生計手段だったアグノ川沿いでの砂金採取も、ダムの操業開始でできなくなってしまうのではないかと懸念している。事業者はその場合、生計支援プログラムを提供すると言っているが、彼らの提示するプログラムよりも、砂金採取ができる、現在の生活のほうがいい。
・ 自分たちは新人民軍(New People's Army : NPA)のレッテルを貼られるというハラスメントを受けているが、自分たちはペンを持っているだけで、NPAが持っているような武器は持っていない。私たちがNPAでなことは明らかだ。
・ 今回の国連人権委員会の調査官による報告書で、問題が解決されることを望む。
● 地元組織SSIPMのメンバー
・ 1950年代にサンロケダムの上流に建設されたアンブクラオダムで影響を受けた人々の中には、50年経った今でも、まだ補償を受け取っていない人々がいる。
・ 事業者はサンロケダムに対する私たちの合意を求めているが、私たちは、現在も反対闘争を続けている。地方自治体の合意は私たちの合意を意味するわけではない。
・ サンロケの操業開始によって、土砂堆積などの悪影響が私たちの村に及び、地域の伝統的な文化が壊されるのではないかと懸念する。
・この会場にいる人すべての人に、私たちの権利をサポートしてくれるようお願いしたい。
●イトゴン町バランガイ間連合 II-BA
・ パンガシナン州では、ダムの建設現場や採石場、また約18kuにわたる貯水池など、広大な土地がサンロケダムのために使用され、すでに多くの人が生計手段を奪われている。
・ ここベンゲット州イトゴン町でも、アグノ川上流の支流も含め、土砂堆積の影響は約50kuにおよぶことが予想され、また、集水域管理計画に含まれる約500kuの地域にもさまざまな影響がおよぶことが懸念される。
・ この事業は1994年、ラモス大統領時代に復活を遂げ、エストラーダ政権を経、現在のアロヨ政権へと引き継がれてきた。そして、日本の国際協力銀行の融資を受けて、フィリピン電力公社、サンロケパワー社、そして、環境天然資源省、公共事業道路省、国家灌漑庁などフィリピン政府機関が事業を進めている。建設工事は1998年に始まり、2003年1月の操業運転開始が目標とされている。その後、サンロケパワー社が25年間、操業した後、まだ操業がかのうであればの話だが、フィリピン電力公社がダムの操業を引き継ぐことになっている。
・ イトゴン町の中でも、特に、イバロイ、カンカナイ、カラヌヤンという先住民族への影響が懸念される。彼らの約80世帯は貯水地域で生活しており、その他、川沿いでの砂金採取など、その地域を頻繁に訪れていた約120世帯、個人ベースでいうと約600人が影響を受けることになる。また、今後起こる土砂堆積で影響を受けるのは約500世帯、集水域管理計画の影響を受けるのは約300世帯で、全部で約50,000人の個人が影響を受けることが予想される。
・ サンロケダムの影響により、具体的には、@上流での侵食や鉱山開発の鉱屑ダムの崩壊による土砂堆積で先祖代々の土地が脅かされるのではないか、A貯水地域、土砂堆積の地域、集水域管理計画の地域で生活している人々が立ち退きを強いられるのではないか、B社会的、経済的側面で生計手段の変化を強いられるのではないかという懸念があげられてきた。
・ 先住民族権利法では、事業者が先住民族の「自由意思による、事前の、情報を十分に与えられた上での合意(Free, Prior and Informed Consent : FPIC)」を得なければ、事業を行なえないことになっているが、実際には、FPICがなくとも、ダムの建設工事は進められてしまった。このことから、フィリピン法に違反するのではないかと、歴代の大統領にも訴えてきたが、これまでに解決されていない。
・ 勧告として、@サンロケダムの操業中止、A洪水掃きゲートの開放、B移住世帯の確定を提示したい。
2.国連人権委員会・特別調査官のコメント
・ 長い間、サンロケのことについては、耳にしてきており、書類にも目を通してきた。そして、国連人権委員会の年次報告書でもサンロケダムの問題を取り上げた。
・ 個人的な経験として、メキシコの人類学者として駆け出しだった頃にメキシコ政府の巨大ダムプロジェクトに携わったときの話をしたい。このダムは、南米で最大級の多目的ダムで、洪水制御、灌漑、発電によって多くの人が恩恵を受けるはずだった。もちろん、アクセス・ロードが設置され、森林を伐採して土地が切り開かれた。そして、貯水を始めようかというときに、そこに先住民族が住んでいることにエンジニアが突然気づいた。ダムの門を閉じ、水位30mの巨大な湖になる予定で、約500kuの範囲に住む人々が影響を受けることがわかった。そこで、人類学者が呼ばれ、自分もそのうちの一人だった。自分たちに課されたタスクは、これからダムの水門を閉じると、ここが沈んでしまうので立ち退くように先住民族を説得することだった。もちろん、ダムが建設されるのを見て、先住民族の人々は、ダムができたことについては知っていたが、誰も建設については知らされておらず、FPICはなかった。また、彼らは、何が起こるのか信じていなかった。最初、自分が説得に行ったときは、銃を突きつけられ、「ここを出て行け」と言われた。この後、政府は、「新しい村を作る。それは今よりもずっといいところで、新しい近代的な家があり、農地も用意されている。補償パッケージもある。」と言ってこいと私たちに言った。こうして、政府は100km以上離れたところに村を作り始めた。そして、先住民族の人々がそこに来たとき、「今までのところにすみたいので、忘れてくれ。」と言われた。このとき自分は21歳の学生だったが、人権問題、とくに先住民族の問題に目覚めるきっかけとなった。
・ 50年経って昨年、そのエリアを再び訪れた。500人の先住民族のコミュニティーに行くと、そこは多目的ダムから2〜3マイルほどのところなのに、いまだに電気が通っていなかった。(ここで、会場から「ここアグノ川沿いも同じ。」との声があがる。)また、若い25歳の女性が言うには、「自分の祖父は移転させられ、政府から補償の約束を受けた。しかし、彼はそれを受け取る前に亡くなってしまった。その後、父が失った土地や家畜、果樹などの補償を求め、さまざまな政府機関を何年もはしごした。しかし、彼も補償を受け取ることなく、亡くなってしまった。今は私が補償の約束を守るよう政府に訴えている。私たちは『開発』の名の下に、すべてを失った。」ということだった。
・ だから、今ここで受けたサンロケダムに関する報告は、あなた方がどれだけ苦労しているのか理解できるので、自分にとっては非常に身近に感じるものだった。そして、政府の目と耳を開かせることが、どれだけ大変なことかもわかる。だからこそ、このような大枠の話の報告であっても、あなた方のメッセージが伝わるように、メッセージを出しつづけることが重要だ。そして、このような報告が、政府の目と耳を開かせることを願う。
3.フィリピン国家先住民族委員会(NCIP)のコメント
●Atty. Leilene Carrantes
・ 私たち自身、私たちが行なった現地調査の報告書を持っている。しかし、政府が、電力購買契約(PPA)の締結日を理由に、先住民族権利法のFPICをこのプロジェクトに適用しないと言っている。(注:2001年6月に「先住民族権利法に定める合意(FPIC)がないことを報告している。)
・ 補償については、NPCと請求者との間で交わした覚書(MoA)があり、それに基づき、補償されることになっている。
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