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開発金融と環境プログラム>資源開発と先住民族の権利 連続セミナーシリーズ 第2回議事録要約
イベント
第1回
「先住民族の権利保護に関する国際的な動きとフィリピンの実情」議事録要約
第2回
「ニッケル開発による先住民の危機と国際動向」議事録要約
第3回
「資源開発とCSR
〜環境社会影響とその対策〜」開催情報
資源開発と先住民族の権利 連続セミナーシリーズ 第2回議事録要約
  2008年10月5日に本連続セミナーの第二回目『ニッケル開発による先住民の危機と国際動向』が行われました。今回はお二人のゲストをお招きしました。お一人はニューカレドニアの先住民族団体代表であり、先住民省の大臣を務めた経歴もお持ちのラファエル・マプーさん、もう一人は先住民族の抑圧の歴史と世界的な動向について研究を続けられている、法政大学大学院・非常勤講師の藤岡美恵子さんです。以下はセミナーの内容の要約です。 最後に講義録全文をリンクしていますのでお時間のある方はぜひそちらもご一読ください。

■ラファエル・マプーさんのお話

ニューカレドニアの人口は現在24万人、そのうちカナック人と呼ばれる先住民族が10万6千人です。動植物を崇拝するトーテム思想を持ち、自然に根ざした生活を送っていました。

ニューカレドニアの経済の中心はニッケル産業、観光、水産業ですが、ニッケルや金などの鉱山開発は1950年代から始まりました。何百万トンものニッケル鉱石が掘り出され、昔の鉱山跡がそのまま残されているのですが、大雨が降るたびに廃棄物から真っ赤な濁流が流れ出すというような公害が今も起きています。その後、ラテライトなど新たな鉱山開発や、世界の資源ブームにより、ニッケル鉱山も再開発されていますが、大規模な産出活動のため、環境容量を遥に越えるものとなっています。

ニューカレドニアの政治状況も芳しくなく、近年始まった、あるニッケル鉱山開発とそれに伴う工場建設の法廷闘争を例に見ていきますと、工場建設及び操業許可の前提となる許可があるのですが、裁判でその取り消しが認められたにも関わらず、行政府は工場建設の許可そのものを取り消さなかった為に工場建設が続行してしまっている、という現状があります。これにより、廃液の海上流出や固形廃棄物の地下汚染、大気汚染や、採掘現場付近の地滑りなど環境面で様々な問題が生じています。また、経済的にも地元にはほとんど利益をもたらさないことがわかっています。ニッケル鉱脈自体はただ同然で、フランス政府から外資系企業に売り渡されたもので、工場建設にかかる費用にはフランス政府から多額の補助金が投入され、ニューカレドニアの州政府も事業税を操業開始から15年間免除するとしています。

このような、地元にとって何のメリットもない事業が進められている背景として、事業地の属する南部州は、圧倒的多数の独立反対派、つまりフランス系住民が住んでいることが挙げられます。この計画によって外部から人が入ることで、カナック人の人口比率を下げようとしているのです。この動きをフランス政府が、そしてそれに則して州政府が後援、推進しているという、日本人からみれば摩訶不思議な状況が存在しているのです。

こうした動きに対し、先住民の有力者と共に建設反対運動のための団体が活動しています。また、その弁護士を勤める方は、こうした先住民族の権利を守るための国内外における法廷闘争や法的活動を支援する、国際的な法律家グループの結成に動いています。或いは、生物多様性を守り、回復するための財団設立などの動きもあります。

最後に、今回のような活動を先進国の市民の皆さんが支援して下さることで、多国籍企業の行動を変え、地球規模の環境問題が改善に向かうということを申し上げたいと思います。



■藤岡美恵子さんのお話

先住民族の権利と資源開発がどういう関係にあるのかについてお話します。先月、国連にて国連先住民族宣言が採択され、この中で最も重要な原則が規定されています。それは、自決権といわれる原則で、この権利に基づき、先住民族は自らの政治的地位を自由に決定し、ならびにその経済的、社会的、文化的発展を自由に追及する、とされています。この自決権が、世界の先住民族がいま、最も求めている、最も重要で、不可欠な権利です。これまでの植民地の下では自決権が剥奪されていたがために、例えば、鉱山開発をする、しないという意思決定の自由は奪われてきたのです。

この宣言では資源開発に関わる重要な規定がありまして、宣言の第32条では先住民族の土地、領土、資源に関する規定がなされているのですが、「国家は特に鉱物、水、または他の資源の開発、利用、採掘に関連して先住民族の土地、領土、及び他の資源に影響を及ぼすいかなるプロジェクトの承認にも先立ち彼彼女らの自由でかつ情報に基づく合意を得る為に、関係する先住民族とその代表機関を通じて誠実に協議し協力するものとする」とあります。これが本日取り上げています、FPIC(Free Prior Informed Concent=自由で、事前の、十分な情報を得た、同意)という原則です。

今、世界各地の先住民族は資源開発、特に石油天然ガス、鉱物資源に関してはこのFPICの原則を適用させる、それを採掘産業などの企業、採掘権を与える国家、そして、それにお金を出す民間銀行や国際的な開発機関に対してこの宣言、原則を守らせようとしています。各国の法律の中に入れさせる、企業の行動考慮に入れさせる、または投資機関の融資ガイドラインに入れさせる、それを目指した活動を今、世界の先住民族は行っています。

しかし、FPICを取り巻く環境には様々な傷害があり、その実施が極めて難しい現状があります。まず、FPICの原則は存在しても、実際上それが守られていない、という問題があります。事前の情報を与える場合でも、情報伝達における言語、様式の問題や、期待される成果ばかりが強調されて負の側面に触れない、環境影響評価などが過小評価されている、ということがあります。また、開発推進側が先住民族の同意を取り付けるためにでっち上げの先住民グループ・代表を作ることや、一部の賛成派を擁立し、反対派と分断することで住民間の信頼関係を破壊することもあります。これは先住民族自身の問題でもあるのですが、女性や若者が意思決定や協議の場に参加できない、といった問題もアリアンス。

或いは、公式に苦情が申し立てられているにも関わらず政府がFPICの認証を発行してしまう、これは認証取得に関して何らかの不徳や不正が行われたわけですが、更に、そうした不正な手続きを取り消す仕組みがない。環境破壊や人体への健康被害は取り返しのつかない問題であり、その為に事前の合意が非常に重要となるのですが、それがきちんとなされないと、問題はより複雑・深刻化してしまうのです。

いま、世界的な資源ブームの中で資源開発が急速に増えており、そこに流れる資金も増えています。特に日本の資金はかなり資源株に流れています。私たちお金を出す側にいる人間の生活は、そうした資源の上に成り立っているのですから、先住民族の権利という観点からこうした資源開発を少しでもやめさせる、或いは食い止める、そして、改めて先住民族の声が聴かれるような仕組み作りを、私たちが選択していくことが非常に重要なのではないかと思います。



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