【声明】気候変動対策目標据え置きで方向転換なし。Climate Justiceに向き合わない日本の国別目標
> PDFはこちら
3月30日、日本政府は気候変動に関する国別目標(Nationally Determined Contribution。以下、NDC)を決定した。[注1]
パリ協定のすべての締約国は、NDCを5年ごとに強化して国連に提出することが求められており、ほとんどの国が最初のNDCを提出している。
しかし、現時点で各国が国連に提出しているNDCでは、今世紀末には1.5℃を大幅に上回り、3℃以上温度上昇すると試算されている。
そのため、各国はNDCを見直し再提出することが求められている。また、2018年に公表されたIPCC1.5℃特別報告によれば、1.5℃目標達成のために、2030年までに世界全体で2010年比45%のCO2削減が求められている。
日本は今でも世界第5位の大型排出国であり、気候変動に対する大きな歴史的責任を負っているにも関わらず、大きな見直しなく「更なる削減努力の追求に向けた検討を開始する」との追加のみでNDCが再提出されたことは、世界の気候危機を加速するような態度表明であり、許されるものではない。
さらに、次期NDCについては「エネルギーミックスの改定に整合的に」検討するとして、気候変動政策の策定プロセスを優先しないことを宣言しているかのような内容となっている。
また、市民との対話が欠如した非民主的なプロセスでの決定も問題である。
2019年には、気候災害の激甚化により、気候変動に関する危機感が日本でも共有された。さらに、若者たちを中心に各地で対策を求める声があがり、大きく関心が高まった。
日本の将来に関わる重要な政策であるにも関わらず、市民に問いかけるプロセスもなかったことは非常に残念だ。
「Climate Justice(気候正義、気候の公平性) 」[注2]に則った日本のNDCの達成には、経済成長ありきで産業政策優先の現在の日本の政策から、市民の参加を前提とした持続可能で民主的な社会を目指す政策への大転換を必要とする。
ライフスタイルの変化を含むシステム・チェンジを今後10年間で実現するためにも、社会・市民に開かれたプロセスで進めることを求める。
FoE Japanは、日本が歴史的責任を果たす上で不十分なNDCに反対し、気候正義「Climate Justice」の視点に立ち、以下の点を踏まえた再提出を強く求める。
・ 2030年の温室効果ガス排出削減目標を、少なくとも「1990年度比50%の水準まで削減」(6億3500万t-CO2)に引き上げ、再提出すること。
・ 野心的な削減目標とあわせて、エネルギー基本計画およびエネルギーミックスも見直すこと。
・ 国際貢献においても、インフラ輸出偏重の支援策ではなく、すでに生じている損失や被害への技術・資金支援や、コミュニティのニーズに沿った支援を中心にすること。
*「気候変動に関する国別目標」に係るFoE Japanの提言・声明等はこちら
2020/2/14「【声明】Climate Justiceに基づいた気候変動に関する国別貢献の強化・再提出を」
[注1]環境省:「日本のNDC(国が決定する貢献)」の地球温暖化対策推進本部決定について https://www.env.go.jp/press/107941.html
[注2] Climate Justiceとは、先進国が化石燃料を大量消費してきたことで引き起こした気候変動への責任を果たし、すべての人々の暮らしと生態系の尊さを重視した取り組みを行うことで、化石燃料をこれまであまり使ってこなかった途上国が被害を被っている不公平さを正していこうという考え方である。