【面会・回答の要請】住友商事にグループ統括責任者として説明責任を求める

日本に輸入されるバナナの一大拠点であるフィリピン・ミンダナオ島コンポステラ・バレー州の日系企業スミフルフィリピン(以下、スミフル(※))が経営する農園・梱包工場で、正規雇用や団体交渉権等を求めている労働者への深刻な人権侵害(殺傷を含む銃撃、放火等を含む)が相次いで起きています。
この件に関し、8月9日、エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会との連名で、スミフル・グループの株49%を保有する住友商事に対し、説明責任を求める要請書を送付しました。

■本件に関する問題は写真と合わせ、こちらの緊急報告をご覧下さい
■また、本件の問題の概要や詳細な経緯等は、エシカルバナナキャンペーン・特設ウェブサイトをご覧下さい。

※スミフルとは
旧称「住商フルーツ」。本社はシンガポールのSumifru Singapore Pte Ltd。ただし、住友商事は2019年9月までに持ち株分すべてを売却することを表明。スミフルフィリピンはシンガポール本社の100%子会社。

  > 要請書は(PDF)はこちら


2019年8月9日

エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会
国際環境 NGO FoE Japan

住友商事株式会社
代表取締役 社長執行役員 CEO 兵頭誠之様

<面会・回答の要請>
スミフル社売却と貴社CSR方針について

2019年6月18日、貴社ウェブサイトに下記のお知らせが掲載され、Sumifru Singapore Pte Ltd社(以下、スミフル社)の株式売却が発表されました。

貴社ウェブサイトにおいては、その売却発表以降も数週間、スミフル社について貴社「グ ループ」であることが明示され続けていたことを確認しております。私たちはこれまで、その貴社「グループ企業」が10年以上にわたり現地労働法に違反する行為および結社の自由の妨げを行なってきたことを書簡や会合等を通じて指摘してきましたが、それらに対する貴社の清算は完了していないと考えております。

貴社の考える「企業の社会的責任」に、2008年6月20日付で行われた合併以降のスミフル社に対する経営責任、スミフル社の株式保有によって利益を得ていた行為、並びに 2019年6月18日の突然の売却がどのように整合するのか説明いただきたく面会の機会を頂戴できますようお願い申し上げます。

<ご説明いただきたい事項>
1)2018年12月の面会時、エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会メンバーへの説明 として、スミフル社は貴社の投資先に過ぎず、直接の管理下にない旨をご説明いただ きました。これは親会社としての経営上の責任が貴社に存在しないという主張と理解 いたしました。しかしながら、貴社ウェブサイトに2019年4月に掲載されたグローバル事例の紹介ページには「グループ」との明示がなされていました。また、貴社の「企業の社会的責任」ウェブページにおいては、その考えが「当社グループ」に適用されるものであることが明示されています。貴社が自ら表明していたグループ内全社に適用されるべき「企業の社会的責任」方針をスミフル社に適用しないとした理由と根拠について説明をお願いします。また、グループ企業であったスミフル社が貴社の「企業の社会的責任」方針を遵守していなかったことに関し、貴社としての見解、並 びにこれまで及び今後の対応を改めてご説明ください。

2)スミフルフィリピン社と梱包工場 90 の労働者らの間に存在していた請負関係は日本 で一般的に認知されているところの「偽装請負」にあたり、事実上の直接雇用関係が 2008 年時点で存在していたことを 2017 年 6 月 7 日にフィリピン最高裁判所が認定して以降も当該の労働者らは1名もスミフルフィリピン社の正社員として雇用されていません。また、2018 年 5 月にフィリピン労働雇用省が発表した「Companies Engaged and Suspected to be Engaged in Labor-Only Contracting」では、スミフルフィリピン社につい て、南コタバト州において 1687 名の労働者が同じく「偽装請負」状態にある可能性 が示されています。フィリピンにおいて、「偽装請負」は社会課題として広く認知されておりますが、貴社の考える「当社グループのサステナビリティとは、企業活動を通じて常に社会課題に真摯(しんし)に取り組み、社会とともに持続的に成長すること」と照らし合わせ、貴社の企業活動として、どのようにこうした社会課題に取り組まれたのか、具体的な行動内容と併せて説明をお願いします。

3)同様に、2017年6月7日のフィリピン最高裁判所判決に伴って労働組合 NAMASUFAが梱包工場90における労働者を代表する独占的交渉権を持つ組合(SEBA)と認められて以降、団体交渉が正常に行われていないことは、貴社ウェブサイトに記載されている「当社グループは、国連グローバル・コンパクト 10 原則及び国際労働機関(ILO) が中核的労働基準として定めている 4 分野 8 条約「結社の自由・団体交渉権の承認」「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「差別の撤廃」を支持、尊重するとともに、事業活動を行う世界各国の法令を遵守し、人権課題に取り組んでいます」との宣言とど のように整合性がとれていたのか、また、整合性がとれていなかった際に貴社としてどのように経営責任を果たしたのか、具体的な行動内容と併せて説明をお願いします。

4)特に 2018年9月以降、スミフルフィリピン社系列梱包工場の労働者とその家族に対して、「(その労働者が)労働組合を辞めなければひどい目に合う」と武装した男たち が脅迫・恐喝するなど深刻な人権侵害のケースが複数報告されています。中には子どもの目撃している中でそのような行為が行われていることも報告されており、子どもの心身の健全な成長に多大な影響を及ぼしていることが危惧されています。このように労働者と子どもを含むその家族の安全が十分に保障されてこなかったことが貴社の「人権の尊重」と「子どもの権利が侵害されることがないよう取り組んで」きたこととどのように整合性がとれていたのか、具体的な取り組み内容と併せてご説明をお願いします。

5)貴社はグローバル・コンパクトに署名をされていることを以前の会合にて確認させていただきましたが、スミフル社が行なってきた組織的な人権侵害に対して、十分な対策を行わずにきたこと、その企業行動によって利する立場にいたこと、及び是正することなく株式をその最たる責任を負う親会社 Thornton Venture Limited 社に売却することが、グローバル・コンパクト原則2「人権侵害への非加担」とどのように整合するのか、これまで具体的に非加担を目指して行動してきた実績があればその具体例と併せて説明をお願いします。

以上

<署名団体>
エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会/国際環境 NGO FoE Japan

<本要請に関する連絡先>
特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC) 担当:田中 滋
〒101-0036 東京都千代田区神田淡路町 1-7-11
TEL:03-5209-3455/FAX:03-5209-3453/office@parc-jp.org

(参考)貴社ウェブサイトより「グループ」表記について

 

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