「ビジネスと人権に関する国別行動計画」の策定について外務省にパブリックコメントを提出
2018年、日本政府はビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP:National Action Plan)の策定へむけて本格的に動き出しました。
今回は、政府が作成した「ビジネスと人権に関するベースラインスタディ報告書」を踏まえたNAPに盛り込むべき優先分野・事項へのパブリックコメントの募集に対し、FoE Japanからも意見を提出しました。具体的には、これまでフィリピンやインドネシア等で日本企業が展開するビジネスに関連して、深刻な人権侵害を受けてきた現地住民の事例を踏まえ、以下の点をNAPに盛り込むよう提言しています。
・人権や労働に関する事項を含む、企業が国外で行なう事業について報告を行なう義務に係る法整備や体制強化
・公的資金の支援を受ける企業による実効的なデュー・ディリジェンスの実施の確保に向けた関連省庁・機関の体制強化(人権に係る調査・判断能力の強化)
・「実効的で適切な」国家基盤型の「非司法的苦情処理メカニズム」を確保するためのOECD多国籍企業行動指針に係る日本連絡窓口(日本NCP)の強化
また、今後、NAPの策定に向けたプロセスにおいて、透明性の高い議論の場を確保するよう提言しています。
NAPとは、政府が2011年3月に国際人権理事会において全会一致で承認された「ビジネスと人権に関する国連指導原則」を運用し、実施していくための優先事項や行動計画をまとめた政策文書です。国連人権理事会は、指導原則の実施を促進するために国連ビジネスと人権作業部会を設置しているところ、同作業部会は、各国政府に対し、NAPを策定し、かつ定期的に改訂することを奨励しています。
NAPは2015年6月、ドイツで開かれたG7サミットの際に出されたG7エルマウ・サミット首脳宣言で言及され、注目が集まりました。この宣言は、カナダ、ドイツ、アメリカ、イギリス、イタリア、ヨーロッパ連合(EU)の首脳、そして日本がサミット内で合意したことが宣言として出されたもので、宣言内では「我々は、ビジネスと人権に関する国連指導原則を強く支持し、実質的な国別行動計画を策定する努力を歓迎する」と述べられています(外務省「2015 G7エルマウ・サミット首脳宣言(仮訳)」参照 )。
これを受け、世界各国はNAP策定に動き始め、2019年現在では20以上の国ですでに策定されています(OHCH「State national action plans on Business and Human Rights」参照)。
今後、2020年半ばのNAP策定に向けて議論が続きますが、FoE Japanは、日本企業のビジネスによる人権侵害の回避を目指し、NAPに市民社会の声が反映されるよう、提言を続けていきます。