世界ダム委員会最終報告書 2000年11月16日
フィリピン・サンロケダムに関する会長談話 現在、フィリピン・ベンゲット州イトゴン市の市議会は、サンロケ多目的ダムプロジェクトへの支持撤回決議の採択を、再度検討中である。これは、今年9月13日にイトゴン市議会において採択されたプロジェクトへの支持撤回決議(賛成7・反対1・欠席2)に対し、市長が行使した拒否権を、再度覆そうというものである。また、ダム下流のパンガシナン州サンニコラス市やサンマニュアル市でも、本プロジェクトへの支持を撤回する決議の採択に向けて、同様の動きがある。 フィリピンの地方自治法は、本プロジェクトのような開発プロジェクトに対し、関連自治体による支持取り付けを求めている。つまり、本プロジェクトは、法的正当性を根底から問われる事態となっているのである。 これまで、国際協力銀行による融資の審査は、法手続きの正当性のみを重視し、住民参加や社会・環境配慮などについて軽視してきた。そのために、本プロジェクトによって生じる立ち退きや先住民族の権利侵害、環境破壊への対応が適切になされず、被害が拡大していることへの不満が顕在化し、地元自治体が相次いで支持撤回を表明しているのである。また、本プロジェクトについては、経済合理性の観点からも疑問の声が上がっており、地元の先住民族が当初から反対の意思を明らかにしてきたことなどから見ても、十分に予見できたことである。 これは、国際協力銀行などの事業側が、地元住民やNGOの声に真摯に耳を傾けず、慎重な判断を怠った結果である。よって、最低限確保するべき法的な整合性さえも揺るがす事態を招いたのである。いたずらに支援を継続して、日本・フィリピン両国民間の信頼関係を損なった国際協力銀行の責任は、極めて重大であると言わざるを得ない。 国際協力銀行は、こうした事態を重く受け止め、プロジェクトへの融資をいったん停止し、本プロジェクトへの融資について全面的に見直すべきである。併せて、地元住民やNGOとの適切な協議の下に、問題の解決に向けて本プロジェクトを抜本的に見直すよう事業主体に働きかけるべきである。その際、立ち退きを迫られ生活の糧を失う人々に対して、充分な補償と持続可能な生計手段が早急に確保されるよう、特段の配慮がなされねばならない。 国際協力銀行には、融資撤回という選択肢も含めて検討し、本プロジェクト問題の根本的な解決に向けて、政府系金融機関としての責任を果たして欲しい。
公共事業チェック議員の会
会 長 中村 敦夫
連絡先:中村敦夫 事務所(参5632 TEL:03-3508-8632)
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