世界ダム委員会最終報告書 2000年11月16日
メコン河はチベットに源を発して、中国雲南省、ビルマ、ラオス、タイ、カンボジアを通って、ベトナムのメコンデルタから南シナ海へ注ぐ全長4400キロ余りの国際河川である。流域6か国には全体で200以上の大規模ダム計画があると言われている。ダム計画のうち本格調査や建設に移っているもののほとんどが海外からの援助、とりわけ日本からのODAを受けている。1990年代、中国とビルマを除くメコン河下流域国で、日本の二国間協力、あるいは日本が最大の出資国であるアジア開発銀行(ADB、本部マニラ)や第2の出資国である世界銀行(本部ワシントン)が建設もしくは本格調査で支援した主なダムプロジェクトは以下の通りである。
【日本の二国間協力】
この中で、ラオスのナムルックダム(2000年完成)では建設に伴う国立公園内の違法伐採や事前に予測されなかった住民移転が起きている。同じラオスのトゥンヒンブンダム(1998年完成)でも事前の環境調査で全く把握していなかった漁業被害や田畑・人家などで2万5千人が影響を受け、今でも問題が解決されていない。また世界銀行が融資し今回の世界ダム委員会のケーススタディに選ばれたタイのパクムンダム(1994年完成)、事前には予測していなかった大きな漁業被害などが起き、事前予想の7倍の住民移転と6千世帯への漁業補償を迫られている。発電能力も計画の6分の1に落ち込み経済効果も小さいと世界ダム委員会のケーススタディ報告書は結論づけている。影響を受けた住民は建設完了から6年たった今でもダムサイトや首相府前で抗議行動を続けている。更に現在世界銀行が支援を検討しているラオスのナムトゥン2ダムでは、環境影響調査が行なわれる前に水没予定地の伐採が行なわれ一部で住民移転も始められていた。 このようにメコン河流域国で次々とダム計画が進められている一方、ベースラインデータが不十分な環境影響調査や、計画段階での不十分な住民参加や情報公開に基づいてダムが建設されたため、自然資源に依存してきた地域住民が生活の糧を奪われる結果になっている。今回の世界ダム委員会の勧告を世界銀行だけでなく、メコン河流域のダム開発に大きな役割を果たしているアジア開発銀行や日本の援助機関(JICAやJBIC)が遵守するべきである。更に【その他】のタサンダムは600万kWの超巨大ダムであり、人権問題が国際的な批判を受けているビルマへの援助の枠組みでは調査といえども絶対に関与しない案件であるにも関わらず、通産省が監督する特殊法人が調査を行なっている実情を考えると、援助だけでなくこうした特殊法人や日本企業に対しても、世界ダム委員会の勧告を守るよう積極的に働きかける必要がある。
|
→→プレスリリース・トップに戻る
→→最終報告書の要点を見る →→公的金融機関へのNGOの要望書 を見る →→フィリピン、サンロケダムの実例を見る →→公共事業チェック議員の会の談話を見る |