ケニアの抱える問題点
田中 優
歴史:
1888年、英国の植民地。
1963年、独立。KANUの1党支配が続く、72年まで、年平均10%の成長
1992年、複数政党制に移行したが、
1995年、リ−キ−の新党サフィ−ナを承認せず、IMF・世銀、EU諸国が援助を停止。
人口: 2,800万人
面積: 58万
首都: ナイロビ 150万人
公用語: スワヒリ語
経済: サハラ以南のアフリカでは工業化が進み、観光産業が成長。
主な輸出品 茶、コ−ヒ−、石油製品、果物・野菜、セメント
主な輸出先 英国、ドイツ、米国、日本、アラブ首長国
輸出総額: 30億270万ドル (輸入 34億4,100間ドル)
人間開発指数: 137位 識字率 78.1%で、アフリカの首位10位に入る債務状況
債務総額: 68億9,300万ドル
多国間 52% 2国間 38% 民間 10%
1980年 31% 28% 41%
債務返済額: 8億4,000万ドル
1人当たり債務額 253ドル
返済額 31ドル ODA 22ドル
GNP 327ドル
債務の輸出比率 226%
債務残高の輸出比 177% (1994〜96)
GNP比 77%
輸出債務返済比 28%
主な債権国: 日本、フランス、オランダ、米国、イタリ−
日本の円借款の残高:
GNPに占める比率: 債務返済 10.5% 医療 2.7% 教育 6.8%
1ドルの援助に対して、4.04ドルの債務を返済
HIPCsイニシアティブ: 対象国であるにもかかわらず、IMF・世銀は債務削減を拒否
1.主要経済指標
|
1990年 |
1995年 |
1997年 |
人口(千人) |
24,368 |
26,688 |
28,612 |
名目GNP |
|
|
|
総額(百万ドル) |
8,958 |
7,583 |
9,654 |
一人あたり(ドル) |
370 |
280 |
340 |
経常収支(百万ドル) |
-527.1 |
-480.1 |
- |
財政収支(百万ケニア・シリング) |
-7,412 |
- |
- |
対外債務残高(百万ドル) |
7,056 |
7,376 |
6,486 |
為替レート(1US$=ケニア・シリング) |
22.195 |
51.430 |
58.732 |
2.主要社会開発指標
|
1990年 |
1997年 |
出生児の平均余命(年) |
60 |
54 |
乳児死亡率 |
68 |
74 |
成人非識字率(%) |
31 |
22(95年) |
初等教育就学率(%) |
- |
- |
安全な水を享受しうる人口割合(%) |
31(88-90平均) |
45(96年) |
所得が1ドル/日の人口割合(%) |
− |
50.2(92年) |
3.我が国ODA実績
|
1990年 |
1995年 |
1998年 |
贈与(総額) |
75.52 |
93.77 |
40.86 |
(無償資金協力) |
(49.59) |
(47.72) |
(8.91) |
(技術協力) |
(25.93) |
(46.05) |
(31.94) |
政府貸付(純額:支出−返済) |
17.67 |
104.66 |
11.73 |
総計(百万ドル) |
93.20 |
198.43 |
52.59 |
<債務の問題> →→途上国の対外債務に関するグラフをみる
■ アフリカ諸国が直面している経済問題とわれわれの要求
アフリカ諸国の経済発展に関わる切迫した問題は一層深刻化している。先進工業諸国や国際金融機関は、債務問題の解決のための真剣な努力を行うのでなく、債務問題を構造調整政策の継続のための圧力として利用している。「重債務国貧困国」(HIPC)プログラムや「貧困を減らすための戦略計画」(PRSP)などを通じてである。
アフリカの対外債務や公共債務は1970年以来年々徐々に増加している。しかし他の途上国特に南アメリカと比べると、アフリカの債務は世界の債務の中では比較的低い割合である。1998年にはナイジェリアの債務は全世界の債務の3.485%(230億ドル)、コートジボアールは2%(100億ドル)、南アフリカは2%(100億ドル)、コンゴ民主共和国は2%(80億ドル)、ケニアは1%(50億ドル)、セネガルは0.5%(30億ドル)、エチオピアは2.5%(90億ドル)であったのに対して、南アメリカの対外債務の比率はアジアやアフリカよりも高かった。ブラジルは14.8%(980億ドル)、メキシコは13.8%(870億ドル)、アルゼンチンは11.4%(870億ドル)であった。
アジアは韓国が8.7%(570億ドル)、インドネシアが10%(660億ドル)であった。この傾向は1980年代から統計的にそれほど変化してはいない。1998に於いて債務のGDPに占める比率は文末の表に記載されているが、ナイジェリア、コートジボアール、南アフリカ、コンゴ民主共和国、ケニア、セネガル、エチオピアはそれぞれ、71.1,
116.3, 291.1, 57.9, 44.7,174.7, 133.5である。前述のように問題は債務返済の財源と、債務発生の原因である。公式的に考えれば、債務返済の資金は他から調達される。それはどこから調達され、どのように人々の生活と関わっているのか?
<債務救済と新規借款>
「債務救済」策を受けた国には「(原則として)新たな借款はしない」と日本政府は言いますが、バングラデシュは平成11年度に「債務救済無償援助」合計約73億円を受けたあと、平成12年に約160億円の円借款をしていると書いてありました。
「バングラデシュだけやないです。債務救済を受けながら新規借款を得てる例を90年代だけでも挙げてみると、ラオス、ビルマ、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、イエメン(これは繰延なので厳密には新規ではないけど)、ウガンダ、ケニア、タンザニア(これも繰延です)、トーゴー、ニジェール(繰延)、ボツワナ、マラウィ、モーリタニアとあります。「重債務貧困国HIPCs」も中に含まれてんのでさらにややこしいですなぁ。」
<構造調整プログラム>
Recent
studies have revealed some of the damage done by user fees imposed
by IMF/World Bank structural adjustment programs.
(最近の調査により、IMF/世銀の構造調整プログラムによって押し付けられた利用者料金による損害が明らかにされている。)
In
Kenya, introduction of a 33 cent fee for visit to outpatient
health centers led to a 52 percent reduction in outpatient visits.
After the fee was suspended, visits rose 41 percent.
(ケニアでは健康センターへの外来患者への33セントの料金が導入され、外来患者が52%減った。料金が停止された後、外来患者は41%増加した。)
<債務の状況>
■ どこの国が日本からお金を借りているのですか?
HIPC40カ国のうち、日本がもっとも多額の債権を抱えている対象国は、ビルマ(ミャンマー)で約25億ドル(約2600億円)。続いて、ケニア(約11億ドル、約1150億円)、ベトナム(約10億ドル、約1050億円)、ガーナ(約9億6000万ドル、約1000億円)となっています。
ジュビリー2000UKの対象52カ国のうちでは、フィリピンが約116億ドル(約
1兆2000億円)、と日本に対してもっとも多くの債務を負っています。このほか、バングラデシュ(約34億ドル、約3600億円)、ナイジェリア(約24億ドル、約2500億円)が続きます。
総額で見ると、HIPCの最大の債権国は日本です。これは、日本が世界一の援助国であることに加え、借款率(有償援助、ローン)も他国に比べて圧倒的に高く、したがって借款額も世界一となるためです。
■
日本はこれまでにいくら帳消しする約束をしたのでしょうか?
昨年6月の独ケルン・サミットで、G7諸国は以下の債務救済措置に合意しました。
a)2国間の政府開発援助(ODA)で貸された債務の全額帳消し
b)ODA以外の貿易保険、日本輸出入銀行融資などの債務の90%帳消し
HIPC(重債務貧困国)40カ国が日本政府に負っている債務の多くが、ODAによるものです。日本政府は、約9000億円のODA債権のうち約4000億円の放棄を約束し、4月には非ODA債権帳消し枠を90%から100%に拡大しました。額としては1400億円の追加帳消しです。
なぜ9000億円全額ではなく4000億円なのかと言うと、この差額分は、ビルマ
(ミャンマー)、ケニア、ベトナム、ガーナの各国が抱えている債務で、政府はこれの4カ国の債務は帳消し対象から外しています。うちビルマは民主化が進んでいないためで、残りは経済的理由からとされています。政府はこの3カ国は債務救済を求めていないと主張していますが、ジュビリー2000では日本が各国政府に不適切な圧力をかけているとみています。
加えて、日本は世銀・IMFを通じて多国間で貸された債務の救済を目的に設置されたHIPC信託基金への既出分を含め2億ドルの支出を発表していますが、実際には各国の負担の公平を求める動きなどにより、多国間債務の帳消しもほとんど進んでいないという状況です。
<債務免除を受けない理由>
ガーナの担当官女史(の話)では、アクラの日本大使館員が交渉に当るのだそうですが、「年間7,000万ドルの円借款を出してやるが、HIPCsイニシアティブを受けると、出さない。Grant分はない。」と言われたそうです。しかしこのような脅迫を、決して「公言しないよう」言われている。
一方HIPCsの方は、ガーナはDecision Point に達しており、IMFは最初、年間5〜6,000万ドルの削減となると計算した。ガーナ政府としては、HIPCsはまだCompletion Pointまで3年かかるし、日本の円借款はたとえローンであっても、すぐに毎年入るわけだからHIPCsを断ったほうがよいと判断した。しかし日本大使館との交渉後、IMFは再度計算したら2億ドルの削減になるといってきた。
しかし、いずれにしても、削減は3年後であり、ガーナは今新しいお金が欲しい。つまり、円借款を受ける方を選ぶというのです。
ボリビアでは、HIPCs対象国となった96年以来日本は円借款は止まったままである。輸銀の債務のリスケ交渉では、8.6%という高利を押し付けられている。私が日本では、市中銀行でも、預金は0%で、借りても3%だというと、「良く知っている、だから怒っている」、といいました。円借款がアンタイドというのは嘘で、ボリビアでは、橋を建設したが、日本の業者が受注し、500万ドルかかった。ボリビアの業がやれば100万ドルかからない、といいました。日本政府は円借款はアンタイドというけど、実態はタイドで、しかも割高なのが問題です。結局、日本企業が儲け、返済するのは、ボリビアの貧しい人たちです。
<政府の弾圧>
■運動は世界70カ国に
大蔵省前に集まった人々は「人の輪で債務の鎖を断ち切ろう」「貧困と戦争なき社会を目指して」などと書かれた横断幕やプラカードを手に、政府開発援助(ODA)債権の即時無条件の帳消しなどを求めた。来日中のケニア、ウガンダ、タンザニアの代表も参加し、債務返済のために医療や教育が受けられない重債務国の現状を訴えた。
■一方、ケニア・ナイロビでは
4月13日、NGOと教会関係者を主体としたケニア債務削減ネットワークのメンバーら87名は、ナイロビで平和的なマーチを行った。これは、ワシントンで行われていた世銀総会に向けてのもので、同時期に日本でも大蔵省前でアクションを行っている。
ところが、事前に警察の許可も得た合法的なマーチだったにも関わらず、マーチが世界銀行前にさしかかったところ、機動隊は催涙ガスと警棒で襲いかかり、12人の少年を含む63人が逮捕されてしまった。参加者の数名は、かなりの怪我を負った模様である。
逮捕者は法外な罰金を言い渡され、外部との連絡は禁止された。さらに、医師のケアが必要な2名に対しても、なんらの医療サービスも行われずに中央警察署に監禁され続けた。
これについて、ケニア債務削減ネットワークと国際開発連帯共同機構は、世界の市民運動グループに電子メールで応援を求め、それに呼応して、各地のジュビリーその他は、ファクス、電子メールその他でケニア政府および警察に抗議を集中。その甲斐あって、5月22日、法務長官は、63名の無条件釈放を命じた。
ケニア政府は、ハバナで行われたG77会議において、債務帳消しに反対の立場を表明したが、今回のこの逮捕もそれに呼応している。4月にジュビリー日本委員会の招きで来日したギタリ大主教によれば、ケニア政府は腐敗を極めており、将来の債務帳消しを受けるために現在の援助金がカットされること、および帳消しに際して市民団体の監視が義務づけられることの恐れているものと思われる。
<エイズの問題>
ナイロビ 2001年6月14日(IRIN)
ケニア国会は火曜日、エイズ治療に必須の医薬品の価格を大きく引き下げると見られる法案を、全員一致で通過させた。
この産業特許法は、政府が、エイズ治療のカクテル療法で使われる抗HIV剤=ARVsを含む特許品である医薬品の輸入あるいは廉価なコピー薬を製造することを可能にするものである、と必須医薬品キャンペーンのメンバーは語った。
これまで伝えられことによると、ケニア国会の法案採択により、ケニアは、この4月に国際的な巨大製薬資本が安価なコピー薬を多くの人々に提供することを可能にする法律に対して申し立てていた訴訟を取り下げた南アフリカ共和国に続き、アフリカにおける同様の法律を採択した2番目の国となった。
必須医薬品を求めるケニア連合の弁護士であるインドラ・ヴァン・ギスバーゲンは木曜日、IRINに対し、以下のように語った。「現在ケニアで使われている抗HIV薬の少なくとも50%は特許品だ。ケニアでは、わずかに1000人か2000人しか抗HIV薬による治療を受けていない。しかし、新しい法律により、エイズ治療薬利用への道がさらに大きく開けるはずだ。」
予期されている値下げはケニアの貧しいエイズ患者が抗HIV薬を使用できるほどになるとは思えないが、中流クラスの人々にとっては抗HIV薬はかなり身近なものになるだろう、とヴァン・ギスバーゲンは語り、「これは突破口です」と付け加えた。
けれども、製薬会社の中には今週中ずっと、この法制化による実際の効果に対する懐疑が漂っている。ロイターが伝えるニュースによると、国際医薬品製造業協会のハーベイ・ベイル事務局長は水曜日、この法律採択は「政治的なイベント」にすぎず、ケニアの人々が受けるヘルス・ケアには何の変化も見られないだろう、と語っている。
60カ国の医薬品製造業者組織を代表する国際組織のメンバーであるベイルは、ロイターに以下のように語った。「現在ケニアで使用されているエイズ治療薬の約80%はジェネリック薬であり、またそれ以外の薬も製薬会社が同地域で販売されているコピー薬と同じ価格で販売しているものだ。」
木曜日のデーリィー・ネーション紙の社説は、以下の警告を発している。「この産業特許法は、政府が重大な問題に関わってリーダーシップを見せた特筆すべき例ではあるが、新しいカクテル療法薬が利用できるようになることが現在のエイズ危機を一挙に解決するものではない。」
さらに「この法律制定によって可能になるエイズ治療薬使用により、HIV/AIDS感染者の苦しみを緩和し延命を図ることが可能になったものの、予防のための公共キャンペーンは継続されなくてはならない」と社説は続ける。
「予防こそが唯一の解決策であることを繰り返し繰り返し強調することは、これからも重要だ」と、デーリィー・ネーション紙は付け加えている。
現在、およそ250万人のケニア人がHIVに感染し、毎日500人もの人がHIV関連の病気で死んでいると推定される。
<ソンドゥ・ミリウダムの状況>
■ NHK:
ケニア水力発電 円借款追加へ
ODA=政府開発援助で建設中のケニアの水力発電所に対して、地元で反対の声が出ていたため、現地調査した外務省は「建設を中止すべきだという意見はなかった」として、追加的な円借款を実施する方向で検討することになりました。
この事業は、ケニア西部のソンドゥ川で日本の円借款を利用して水力発電所を建設しているもので、第一期の工事分七十億円に続いて第二期の工事分を追加融資するかどうか検討を進めていました。
しかし、現地のNGO=非政府組織などから発電所の建設で川の水量が減って生態系に影響が出るとか、住民の移転が強制的に行われたといった批判が寄せられていました。
このため、田中外務大臣が再調査を指示し、外務省では担当課長を現地に派遣して反対する人たちから事情を聴くなど改めて調査しました。
その結果、環境面などへの配慮を求める声など問題点の指摘はありましたが、建設を中止すべきだという意見はなかったということで、田中外務大臣もきのう参議院決算委員会でこうした調査結果を明らかにしました。
これを受けて外務省は追加的な円借款を実施する方向で検討することにしています。
■ 共同通信:ケニアODA継続を検討 計画中止意見は皆無と外相
田中真紀子外相は二十五日の参院決算委員会で、日本の政府開発援助(ODA)によるケニア西部のダム建設をめぐり現地での反対運動が伝えられていた問題で、現地調査の結果として「建設計画を中止すべきだとの意見が皆無であり、全員が継続を強く求めている」と指摘、今後も第二期分円借款の実施を検討していく考えを表明した。
調査では今月中旬、ソンドゥ・ミリウ川の水力発電所建設現場に派遣された外務省の担当課長らが、地域住民や非政府組織(NGO)から聞き取り調査するとともに、ケニア政府関係者らと意見交換した。
外相は現地に環境面などで問題があることは認めながらも「最も批判的な問題提起をしていたNGOの一部関係者も『自分たちは計画の熱烈な支持者だ』として、事業実施を求めている」と述べた。
民主党の桜井充氏に対する答弁。
→→報告会の議事録をみる
→→別の配布資料「ソンドゥ・ミリウ水力発電プロジェクトとは?」をみる
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