現地NGOの連合体 日本政府調査団に確認書を提出(2001.6.24)
→→この件に関する現地NGOのプレスリリース(英文)をみる 以下は、ケニアで6月16日に行われた現地NGOの連合体と日本政府の現地調査団による会談の席で、NGO側が提出した確認書。
------------------------------------------------------------------- ソンドゥ・ミリウ水力発電事業NGO連合
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ソンドゥ・ミリウ水力発電事業への 日本調査団に対する確認書
2001年6月16日
私たちNGO連合はソンドゥ・ミリウ地区の住民といっしょに活動していますが、まず日本政府がケニアのエネルギー開発に対し継続して支援していることに対し、感謝の意を表したいと思います。事業にNGO連合が反対しているという最近の報道とは違い、私たちはソンドゥ・ミリウ水力発電事業の成功を強く願っています。
私たちが本事業を支持しているのは、次の3つの理由からです。
NGO連合としても、こうした崇高な目的を持つ事業に対し、無邪気に反対することはできません。NGO連合とケニア電力公社(KENGEN)の間の対立も、決して事業の継続する、しないを巡るものではないことをご理解ください。私たちは一度も、日本政府に対し事業への融資ストップを求めたことはありません。実際には、私たちは事業が計画よりも早く完成することを願ってもいます。
私たちが指摘するこの事業の問題点は、大きく分けて2つあります。
当初、事業計画段階にて環境影響調査や住民の移転計画、社会・経済面での調査や実行可能性調査が専門家の手により行われていました。しかし、事業主体であるケニア電力公社には、こうした事業計画内容を正確に実施する姿勢が感じられません。私たちにこの点に関し、深く憂慮してきました。 事業計画は、以下の点について定めています。
国民の多くがこの国家的事業を歓迎するいっぽうで、事業のため土地と生計手段を失った地域住民は依然として、ケニア電力公社によるこうした約束事項が正確に履行されることを待ち続けています。
例えば発電電力についても、主な発電ラインであるアヘロからラエ、カティノ、ウルディ、パプ・オンディティ、ハランベー、コルウェニィ、ケンドゥ・ベイ、そして他の町や施設といった周辺の地域にかけ供給されるというように約束されていました。しかしこれに反し、ケニア電力側の対策は工事のための仮設のディーゼル発電機を設置するにとどまっています。これは発電所完成時には取り払われることが決まっており、結局地元への電力供給は行われないことになります。
また住民たちは、発電所工事のため使われているトラック、発電機、足場、水管、橋といった資産が、地域の信託基金のため寄付されることを望んでいます。
さらに、住民からの土地の買上価格も、電力公社側により一方的に決められ、住民の意見が聞かれる場はありませんでした。これは1993年に行われた環境影響調査のなかでの、影響住民の意見はNGOなどにより代弁されるべき、とした条項に反しています。
私たちは、電力公社との交渉を通じ他よりも高い補償金を受け取っている住民がいることにショックを受けています。こうした土地・家屋・農地・果樹といった住民資産への補償計算が不正に行われていることについては、早急に調査を行うべきであると考えます。
また生計手段を失ったことに対する補償は、一切行われていません。さらに岩盤工事の際の爆薬使用が原因で被害を受けた民家についても、補償はまだです。
ケニア電力公社による影響住民の移転計画がこうして行き詰まっている現状、同時に移転住民の収入補償を確実に行うためのフォローがなく、それをチェックする機能が不足していることも問題です。
住民の健康面については、トラックが走る工事用道路からくる粉塵が大きな問題となっています。地区の公衆衛生事務所が出すデータによると、工事地周辺で粉塵による健康被害が多く報告されています。こうした問題は昨年電力公社側および保健局、州事務所によってもすでに確認されていますが、しかし現在まで何も対策は講じられていません。この結果、粉塵による呼吸器系障害によりペニナ・オディンゴさん(35歳)とグレース・アキンイさん(9歳)が亡くなりました。他にも多くの住民が粉塵被害に苦しんでいます。
ミリウ川をダムにより塞き止めれば、確実に下流の生態系に影響を及ぼします。地域の文化遺産であり信仰の対象でもある「オディノの滝」に、季節を問わず1年を通じて水が流れ続けることを、住民は強く求めています。この滝は、ダムができれば絶滅する恐れのある稀少な魚たちの大切な繁殖場にもなっています。
発電所建設により失われるコグタの森には、猿やハイエナたちが住んでいます。行き場を失った彼らは村の近くに住むようになり、人間との間にいろんな問題を生むでしょう。今後の森林復興計画の中では、こうした野生動物たちの住処をどうやって再生し守っていくか、慎重な論議が必要です。
2. 汚職問題
こうした悪質な汚職のケースは後を絶ちません。この問題については、徹底した真相追及と防止改善策の実行が必要不可欠だと考えます。日本からの事業融資はすべて借款であり、今後ローンとしてケニア側が返さなければいけないお金なのですから。
私たちは日本政府が、事業を環境および財政面から見直そうとしていることを歓迎しています。また日本のみなさんの税金が正当に使われ、かつそれがケニアの一般の人たちの利益になっているかどうかを調べるため、国際的な公認会計士事務所による会計監査が、この事業に対して為されるべきだと考えています。それ故に、住民から純粋に出された様々な不満や要求を、根拠のないものとしてメディア上で非難した日本の青木盛久大使の姿勢を、私たちは大変憂慮してきました。
事業の更なる遅滞を防ぐため、私たちNGO連合はこうした住民の提起した問題に対する平和的な解決方法が早急に考え出されることを切望しています。私たちは問題解決のための調査・勧告を目的として設立された技術委員会のメンバーでもあります。しかしながら、私たちはこの技術委員会が、単に事業が開かれたものであることをアピールするための形式的な機構に過ぎないことも経験してきました。例えば、調査の円滑な実施のため、すべての汚職を停止するよう勧告した委員会の緊急提言は、結局一度も実行されることはありませんでした。私たちは、委員会の勧告が尊重されることを明記した、委員会と電力公社との間の確認事項がきちんと実施されることを強く求めています。
最後に、住民やNGOのメンバーに対する脅しや暴力の問題について触れます。住民やNGO側は、事業を妨害するためでにはなく、より良いものにするために様々な意見を述べているにも拘わらず、事業者側からの嫌がらせや脅迫が相次いでいる現実は、人権を蹂躪するばかりか更なる計画の遅れを招いています。
私たちは日本政府が調査団を派遣し、事業の状態をチェックすることを大変うれしく思っています。「アポンド・カサウェ」や「オディノの滝」といった特に工事の影響の強い地区を訪ね、住民の直の声を聞くことに最大限時間を使われるよう、私たちは切望しています。
今回の日本調査団により、ここに挙げた種々の問題点に対する最終的な解決方法が提示され、そして事業への追加融資が再び決定されることを強く期待しております。
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