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サンロケダム
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「フィリピン・サンロケ灌漑事業 日本政府 円借款供与の検討を中止
 ―住民の強い懸念背景に」  (2008.11.30)
    過去10年間、国際協力銀行(JBIC)の融資で建設されたサンロケ多目的ダム事業 には、地元住民から多くの懸念が挙げられてきましたが、その灌漑部門(ダム下 流での新たな堰や水路の建設)への円借款供与を日本政府は断念したようです。

フィリピン経済開発庁(NEDA)が2008年11月10日付けで発表したプレス・リリー ス(注1)によれば、フィリピン政府は、事業費の大半である99億5千ペソ(約 200億円)を自己出資し、中国から13億ペソ(約26億円)の融資を受けることを すでに伝えました。この発表を受け、FoE Japanが外務省に事実関係を照会した ところ、円借款供与の検討がすでに中止されていたようであることが明らかにな りました。

今回、円借款供与の中止に至った理由等について、日本政府は明らかにしていま せんが、環境、社会、人権問題に対する国内外からの強い懸念が背景にあったと 考えられます。日本政府が地元住民やNGOの声にも耳を傾け、今回のように、融 資決定の判断を慎重に行なってきたことは、非常に評価、歓迎される対応でした。

日本政府は、2001年前後から、同ダム事業の灌漑部門(2002年より「アグノ川統 合灌漑事業」に改名)への円借款供与をフィリピン政府に要請され、2003年12月 には、小泉首相(当時)がアロヨ大統領に借款供与を約束(プレッジ)。フィリ ピン向け第26次円借款パッケージの一対象事業として、政府間での合意文書の締 結に向けた協議を継続してきました。しかし、
 @巨大なサンロケダムの建設が取り返しのつかない生活破壊を
  地元にもたらしたため、移転・補償問題などの解決を第一に求める声
 A灌漑部門での大規模な水路の建設による農地収用などで、
  新たな問題が起こることを懸念する声
が地元住民から絶えず挙げられたこと、さらに、2006年5月に政治的殺害という 背景の中で、同ダム事業に反対してきた農民リーダーが暗殺され、日本のNGOか らも人権面に配慮するよう強く求められたことから、日本政府は、「政府として 本件に慎重を期」(注2)する態度を取ってきました。

 一方、日本政府の融資決定が先延ばしされるなか、フィリピン政府が他の融資 先を探している、という報道が、昨年から地元で聞かれるようになっていました。 結局、フィリピン政府は、中国という別の融資先を見つけ、事業費の大半を自己 資金で賄うという決定を余儀なくされたわけです。

 地元住民は、日本政府が今回の決定に至るまでに、農民団体の代表の暗殺など を始めとし、あまりにも大きい代償を払ってきました。また、日本政府が灌漑部 門に融資をせずとも、同ダム本体事業が引き起こした生活被害は消えるわけでは なく、また、これからも継続されるであろう灌漑部門の問題に住民は向き合って いかなくてはなりません。

「日々の暮らしに困らなくなること。それが自分達にとっての『Development』だ。 ダムは『Development』ではない。」

農民団体の代表であった故ホセ・ドトン氏は、生前、こう述べていました。現在、 地元では、フィリピン政府が事業費の大半を本当に自己資金で用意できるのか、 すでに懐疑的な見方もあり、水路ルートの変更など、計画の変更についても耳に するようになっています。今回の日本政府の決定が、地元住民の意思決定による 農民のための灌漑事業、そして、住民にとっての『Development』の実現につな がるよう、今後も期待しつつ、また、ダム本体事業が引き起こした生活被害の問 題にも引き続き取り組んでいきたいと思っています。

(注1) https://www.neda.gov.ph/ads/press_releases/pr.asp?ID=1013
(注2) 2007年10月31日の財務省・NGO定期協議議事録
     (https://www.jacses.org/sdap/mof/gijiroku/mof36.pdf


 →サンロケダムに関するより詳細な情報はWEBサイトでご覧いただけます。
     https://www.FoEJapan.org/aid/jbic02/sr/index.html        
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