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アグノ川沿いで砂金採りをしてきた人々。川沿いの砂をふるいにかけ、水で丁寧にさらうと金が採れる。今は事業者によって禁止されている。(2002年9月)
生活の糧がなく、収入源もないため、苦しい生活を送る世帯が増えている。水代や電気代も払えず、この再定住地を後にし、「再々定住」する者も出ている。(2003年4月) |
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「今、私たちは飢饉を待つことしかできません。」サン・マニュエル町(サンロケ村)ブボン集落に住むアンシ・バナヤットさん(58歳)は悲しげに語る。彼女は、今と比べてよりよかった昔の生活を悲痛な面持ちで懐かしんだ。彼女らは昔、川へ砂金採りに行くこともできた。また、耕す農地もあったということだ。
アンシさんは8歳の時、川がくれる自分たちへの贈り物を知るようになった。小作農の家庭に生まれた彼女は、自分の家族らと一緒に砂金採りに出かけた。川が運んでくるその資源は、これまでずっと、彼女たちの家族が最も苦しい状況に直面したときに生き抜く糧を与えてくれた。
彼女が結婚し、家庭を持ったときも、砂金採りと農地での耕作が生活の糧となった。毎日、骨身を惜しまず働いた。彼女の7人の子供らは、そうすることで、食卓に食事が並ぶことを学んだ。農地や川沿いで汗を流すことで、彼女らは子供を学校にやることができた。
しかし、今、状況は一変してしまった。
現在、彼女らは耕作地を0.5ヘクタール借りている。収穫期毎に30袋の米が取れるが、次の収穫期までに自分たちの消費用として手元に残るのは、たった3袋だけだ。
彼女の子供3人は結婚し、2人は現金収入の手段として各々トライシクル(注:バイクの横にカートを付けたフィリピンの小型の乗り物。)を所有している。しかし、この地域では利用者が少ないため、トライシクルの供給過剰の状態となっており、この小ビジネスは破綻してしまっている。今、彼らはトライシクルの登録証を更新できず、用事のあるときや(ナラ村)カビテ集落にある自分たちの農地への行き来に、「サービス」で運転しているだけだ。
彼女の娘の一人は現在、カマンガアン再定住地に家を持つ。彼女も、生活は母親と変わらず厳しいと漏らした。再定住地の人々のために用意された生活協同組合もうまくいっておらず、すぐに破綻してしまうだろうと彼女は思っている。持続的な生活の糧がないという現実から、彼女らは今、毎月の電気料金や水道料金の支払いさえ厳しい生活状況に直面している。
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