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2005年6月
国際環境NGO FoE Japan
フィリピン・サンロケ多目的ダム事業 灌漑部門
―アグノ川統合灌漑事業(ARIIP)―
サンロケ多目的ダムは発電、灌漑、洪水制御、水質改善の4つを目的として建設された。そのうち、発電、洪水制御、水質改善については、2003年5月の商業発電の開始とともにその機能を果たすことがすでに期待されています。
しかし、灌漑部門(下流87,000ヘクタール)については、その目的を達するため、ダム下流での
- 分水用ダムの建設
- 主水路の建設
- 側水路の建設や修復作業
- 排水路の建設や修復作業
などがこれから必要となります。現在、その事業開始の準備がフィリピン政府によって進められており、日本の国際協力銀行へも融資を要請中です。しかしながら、この灌漑事業について、必要性への疑問や事業プロセスにおける不備が多く指摘されています。
事業の概要と指摘されている問題点をまとめましたのでご覧ください。
>サンロケダム灌漑事業 事業概要と問題点 (PDF版)
以下は、資料から抜粋した問題点の概要です。
■ 事業の計画段階での協議に影響住民(移転住民)が参加できなかった。協議が行われたときには すでに「移転以外の選択肢はない」状態だった。
■ 灌漑用水の供給源であるサンロケダムの貯水池は発電用水の供給源でもある。そのため、水量が 不足した場合に発電用水との調整から供給が不足する危険性が大きい。
■ 既存の灌漑システムは2つあり、それぞれ別の河川を水源としてきた。この事業は、水源を一元化す るため、灌漑用水の配分をめぐる農民間の紛争が起こるリスクが高まる。また、水不足の際のリスク が分散されないため、問題が広範囲に広がり深刻化する危険性がある。
■ 高い水利費の支払いにより農民に新たな生活負担を強いることは、「農民の生活水準の向上」とい う灌漑の目的に矛盾する。
■ 移転・補償について十分な情報提供がない。協議での説明はもっぱら口頭で行われる。住民が理解 できない言語で書かれた文書に署名させられたり、署名した文書のコピーを渡されていないなど、どの ような文書に合意したのかあいまいな住民が多い。
■ 資金が確保されていないという理由でサンロケダム本体事業の補償よりもさらに不十分な補償内容 になっている。
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