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第三回環境関連フォーラム 報告 (2004年12月6日)



JBIC「サハリン環境フォーラム」第3回目終了。次回は来年1月に札幌で開催


国際協力銀行(JBIC)のサハリン環境フォーラム第3回が12月6日(月)に行われました。前日の悪天候のため飛行機の欠航が相次ぎ、残念ながら北海道の関係者が参加できない中での開催となりましたが、影響が懸念される野生生物をはじめ、 生態系という観点から環境影響評価(EIA)を行うことの重要性など様々な立場の方からの幅広い議論が行なわれました。(当日の議事録はJBICのホームページに掲載される予定です。なお、当日挙がった意見を一部抜粋したものは文末に掲載してあります。)

次回のフォーラムは1月24日に札幌で開催されます。ようやく油流出など直接的な被害を懸念している「現場」のひとつである北海道での開催です。しかしJBICは北海道での開催は東京でのフォーラムの「報告会」という位置付けで行うとし、第3回目をもって「意見を聞く形でのフォーラム」は終了し、今後はこれまでのフォー ラムで上がった意見や情報を事業者サハリンエナジー(SEIC)に伝え、その回答が帰ってきた時点でまたフォーラムを開催するといっています。つまり当事者である北海道の関係者が懸念を伝える場を十分に確保できるかどうかはいまだもって疑問です。

また、フォーラムの議題としてFoEJapanが提案し、これまで取り上げられていないものに「漁業資源」「累積的な影響」「現地住民、先住民への影響」があります。JBICは「水産資源」に関しては北海道のフォーラムで意見を聞くと言っていますが、「現地住民、先住民への影響」については、「専門家」を集めて行うフォーラムの議題にはそぐわないということで、フォーラムの中では扱わず、別途受けつけるとしました。融資機関だけでなく、日本の企業も関わるこのプロジェクトの現地の人々への環境・社会的影響について、適切な配慮がなされなければならないのは言うまでもなく、こうしたJBICの対応は問題だと考えます。FoEJapanは、現地での情報などをJBICに提出し、その対応を含めて今後皆様にご報告していきたいと思います。

世界でも様々な動きがあります。11月には国際自然保護連合(IUCN)によるコク クジラに関する決議案が出ました。「これ以上のインパクトを与えれば、絶滅につながる」とし、石油企業・融資機関・国に対する勧告が出されています。日本でも「オオワシ・オジロワシ保護増殖事業計画の策定に関わる専門家会合」が12月8日に設置され、環境省は来年の1月までに保護増殖計画の素案を策定することになっています。

引き続きJBICには、同プロジェクトへの適切な環境審査が求められます。



(当日挙がった意見から一部抜粋)

・オオワシは日ソ渡り鳥条約、天然記念物、種の保存法などに指定されている希少種。日本・ロシアの専門家が行なった調査とSEICの環境影響評価(EIA)のデー タに数に違いがあり、EIAの信憑性が疑われている。川や湾の油汚染のみならず、開発そのものによる影響が懸念される。

・サハリン北東部から南部にかけ、Important Bird Area(鳥類の重要生息地) に選定された場所が少なくとも4ヶ所ある。サハリン北東部の湿地帯は閉鎖性の水域 であり、水の回流が起こりにくく、油流出が起こると壊滅的な影響を受ける。サ ハリンIですでにかなりの影響を受けており、累積的影響が懸念される。

・EIAには流出した油の残留効果について配慮されていない。エクソンバルディーズの事故から10年後に行われたレビューの結果、10年経ってもその残留効果によっ て魚類、鳥類、哺乳類が生理的な影響を受けていることが分かっている。

・EIAはどのような影響が起こるかを事前に予測し対策をとるもの。技術的な対策は重要だが、その前に開発が行われる場所の自然環境のデータを把握してから行う必要がある。

・個別の重要種や希少種のみならず、生態系という観点から環境アセスを行うのは世界の通例。日本では過去の反省に立ち、1997年に技術指針に盛り込まれた。

・サハリン北東部で繁殖する希少種の調査がされていない。海鳥のウミガラスなどレッドリストに出ているものなどもEIAには書かれていないが、これからどのように調査するのか。(JBIC:SEICは文献調査も含め、現在調査を行っている。今後出てくるアデンダムの中で記述される部分もあると思われるので、作業中のものを待っている)

・日本の公的金融機関が出資するということで、ベストプラクティスを行ってほしい。アセスについて、定性的な問題で済まさず、定量的なデータをもって環境影響への措置を行うことも必要。

・日露渡り条約で、環境省はオオワシやハマシギに関しての調査をロシアに提案している。ロシアは検討中。

・11月に政府・NGO共同で水鳥の会議が行われた。アジア太平洋地域全体で渡り鳥に関して、各国で生息地を明らかにしつつ保全しようとする動き。

・コククジラに関してIUCNの決議が出た。これ以上の影響が及ぶと絶滅するため、各国がアクションプランを作成すべきとある。

・トド・オットセイに関してEIAでは考慮されておらず、調査もかなり古い文献からされている。調査時期、方法が対象種に適していない。油流出や開発行為による海の汚染は上陸場のみならず、餌場にも影響を与える。海洋生態系についての事前調査が不十分で、事故発生時に影響を最小限に留めることができるのか懸念。

・12月5日に札幌にて北方四島に関するシンポジウムがあった。世界稀にみる生態系を誇る島々をとりまく豊穣の海はオホーツク海北部の海流によってもたらされていることが判明。サハリン開発による影響が懸念された。

・SEICのEIAのコククジラのデータ、解釈など不完全。データと結論の結びつきも定かでなく問題。開発はサハリンIIで終わらない。サハリンIIのみをとって EIAをつくるのは理解できない。工事による影響、通常の運用による影響、事故による影響がある。これらは正しく評価されていない。

・コククジラは半年しか採餌せず、その餌場も非常に限られている。工事による音の影響もある。コククジラに関するIUCNの独立パネルの結果が出るのは2月中旬。それが出なければ正しいレビューはありえない。

・閉鎖性が強い水域であり、季節的な条件も異なる。

・過去の開発で試掘の後を処理しなかったため、希少な植生が影響を受けている。

・アラスカの油田の油をためる場所でたくさんの鳥が死んでいるという情報があ る。

・アラスカの油田では環境への配慮のため、コストが合わなくなっている。サハリンではコストが少なくてすむというのはおかしい。無責任な開発をするべきではない。


*議事録、当日の配布資料はJBICのホームページに掲載されています。


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