2003年より、国際協力銀行(JBIC）とともにサハリンII第二期工事への融資を検討していた、米国の輸出入銀行(US Ex-Im)と英国の輸出信用保証局(ECGD)が、 3月4日、同事業への融資の検討をやめることが公表されました。 https://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/press/20080304.html

事業者であるサハリンエナジー社が、融資申請を取り下げたことがその理由です。しかし現実にはその裏に、融資審査を開始して今日まで、サハリンIIプロジェクトの自然環境や地域社会に及ぼす影響への対策が不十分であったため、両機関の「環境政策」の基準を満たすことができず、そのために融資の判断が延期され続けてきたという背景があります。

ふたつの機関が引いた今、サハリンII第二期工事への融資を検討しているのは、 日本のJBICのみとなりました。一方2008年2月現在、建設工事は90パーセント完了しています。すでにこれまで引き起こされた環境へのダメージは元に戻すことができない状況であるとともに、今もパイプラインルート上では地滑りが起きています。

FoE Japanを含む18団体は、JBICが自ら設けている「環境社会配慮ガイドライン」 の基準への遵守を堅持するよう求めるため、3月25日、JBICに対してレターを送りました。

以下は、レターの日本語翻訳版です。
＞英語原文はこちら

国際協力銀行
総裁　田波耕治殿

拝啓
田波耕治殿

2008年3月3日、サハリン・エナジー社(SEIC)が米国輸出入銀行および英国輸出信用保証局(ECGD)からおよそ10億ドルの融資を受けるための申請を取り下げる発表をしたことはご存知かと思います。これらの有力な政府系輸出信用機関の融資からの撤退は、JBICのように当該プロジェクトに関わる可能性のある他の銀行に政治的、資金的また評価面での多大なリスクをもたらすことでしょう。

エンバイロメンタル・ファイナンス、モスクワタイムズ、ロイター及び他の各社によって報道されるように、デューデリジェンス（適正評価）手続が長引いことによるSEICの融資申請の取り下げは、止まるところを知らないプロジェクトの環境問題に関連するものです。

事実、これら銀行のデューデリジェンス（適正評価）手続きは、まさにSEICが融資機関の環境政策への遵守に至らなかったために遅延したのです。さらに、2007年には、欧州復興開発銀行が、サハリン・エナジー社が同行の環境政策を何年にも渡って遵守できなかった結果、サハリンIIへの融資検討を取りやめました。

これら公的機関の政策は、JBICが適用している政策と類似し、またJBICも遵守を宣言するOECD輸出信用グループの環境および公的に支援された輸出信用のコモンアプローチで活かされている環境保護への一定基準を設けています。

したがって、JBICのサハリンIIへの潜在的融資はJBIC自身の環境ガイドラインおよびコモンアプローチに違反するものです。欧州復興開発銀行、米国輸銀およびECGDの撤退に照らして、JBICのサハリンIIへの融資可能性は、コモンアプローチの権威を弱め、世界的な輸出信用機関の環境パフォーマンス改善を求める、他の金融機関の努力を弱めるでしょう。さらに、JBICのサハリンIIへの融資可能性は、コモンアプローチを向上させようとする機関の間でリーダーであるとするJBICの主張の信憑性を揺るがします。

私たちは、JBICがサハリンIIプロジェクトの環境・社会問題を改善するために努力してきたことは認めますが、既にプロジェクトの90パーセントが完成した今となっては、今日まで工事によりサハリンにもたらされた環境破壊の損害を緩和するには遅すぎます。その損害の多くは修復不可能です。更に、まだ解決されていない進行中の地滑りのような問題があります。

したがって、私たちは、JBICがサハリンIIへの融資中止によって、その環境ガイドラインおよびコモンアプローチに対する義務を果たすことを要求します。できる限り早期にお返事をいただけるよう御願い申し上げます。