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オオワシ保護に関する国会質問議事録 (2004年4月26日) |
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第159回国会 参議院行政監視委員会 第4号
日時:2004年4月26日(月)
質問者:岩佐恵美 参議院議員
回答者:日下一正 資源エネルギー庁長官
加藤修一 環境副大臣
中川昭一 経済産業大臣
小野寺浩 環境省自然環境局長
森田嘉彦 国際協力銀行理事
○岩佐恵美議員 私は今日はサハリンにおける石油ガス開発と環境問題について質問をしたいと思います。
サハリン北東部沖合のオホーツク海大陸棚で石油ガス開発のプロジェクト、サハリン1、サハリン2が進められています。それぞれの概要について簡単に御説明いただきたいと思います。
○日下一正長官
御答弁申し上げます。
今お話ございましたように、サハリン1、サハリン2、双方ございます。
このうち、サハリン1プロジェクトにつきましては、操業責任者のエクソンネフテガスのほか、日本、ロシア、インドの企業を事業主体として三つの鉱区を対象に石油ガス開発を行うプロジェクトでございまして、総事業費は約百二十億ドルが見込まれております。計画では、二〇〇五年に原油の生産を開始し、その後、天然ガス購入のめどが付きましたら準備をいたしまして、国際パイプラインによりまして我が国に供給する予定であります。原油、天然ガスともそれぞれ我が国の輸入量の六%ないし一一%、ピーク時にはかなりの供給になることが見込まれております。
他方、サハリン2プロジェクトにつきましては、我が国企業とシェルが出資するサハリンエナジー社が事業主体となり、二つの鉱区を対象に石油、天然ガスの開発を行うプロジェクトでございまして、総事業費は約百億ドルと見込まれております。同プロジェクトでは、原油は夏の間だけの生産でスタートしておりまして、一九九九年から生産開始でございます。二〇〇六年には年間を通して生産、出荷がなされる予定でございます。天然ガスにつきましても、二〇〇七年よりLNGの形、形態によりまして供給される予定でございまして、ピーク時には、原油については総輸入量の四%程度、天然ガスにつきましては日本の輸入量の一八%程度に達することが見込まれているところでございます。
○岩佐恵美議員 それぞれの事業への国際協力銀行の融資はどうなっているでしょうか。決定額とそして執行額、それぞれ御説明いただきたいと思います。
○森田嘉彦理事 お答えいたします。
ただいまの、まずサハリン1のプロジェクトでございますけれども、こちらにつきましては、日本側の投資会社を通じまして約九億ドルの融資を決定しているところでございます。
一方、サハリン2のプロジェクトにつきましては、これはフェーズ1とフェーズ2に分かれておりますけれども、フェーズ1の初期の石油の開発、こちらのプロジェクトにつきまして、事業実施主体でございますサハリンエナジー社、こちらに対しまして約一億二千万ドルの融資を行っております。
サハリン2のLNGの生産段階でございますフェーズ2につきましては、融資要請は受けておりますけれども、現在検討中の段階でございまして、まだ融資の金額等、具体的な内容について決定する段階には至っておりません。
○岩佐恵美議員 サハリンは広大な手付かずの自然が残されています。鳥類、海生哺乳類など、多くの希少野生動物が生息しています。今その環境の破壊が大きな問題となっているわけですが、特にこの地域で繁殖しているオオワシは、冬、北海道で越冬して、日本の天然記念物に指定されています。サハリン北東部で発信器を付けたオオワシの八〇%以上が冬、北海道に渡ってきている、そのことが確認をされています。サハリンでのオオワシの繁殖地が破壊をされれば、北海道へのオオワシの飛来数、これは激減することは明らかです。
オオワシの生態について説明していただきたいと思います。
○小野寺浩局長 オオワシは大型のワシ類で、翼を広げた長さは二メーター二十から二メーター五十、ロシア極東のオホーツク海沿岸、カムチャツカ半島、サハリン北部及び日本に分布し、総個体数は六千羽から七千羽と言われております。そのうち、日本では北海道東部を中心に千四百羽から千七百羽が越冬していることとされております。通常、水辺に近いカラマツなどの巨木に営巣、四月から五月上旬に産卵、五月末から六月にふ化し、八月には幼鳥が巣立ちます。
オオワシは個体数が減少していることから、環境省作成のレッドデータブックによって絶滅危惧U類に分類され、種の保存法に基づく国内希少種に指定されております。オオワシは日ロ渡り鳥等保護条約で渡り鳥として附表に掲載され、両国においてそれぞれ保護施策を推進されることとなっております。我が国における保護方策としては、代表的な越冬地である知床半島を国指定の知床鳥獣保護区特別保護地区に指定し、その越冬地を保護しているところでございます。
○岩佐恵美議員 環境省は猛禽類について保護マニュアルを作っています。そして、開発などに際しての配慮を求めているわけですけれども、事業用地に営巣木が発見された場合、オオワシと同様のイヌワシについてどのような措置を求めているでしょうか。
○小野寺浩局長 「猛禽類保護の進め方」は希少猛禽類保護のための指針として平成八年に当時の環境庁が作成いたしました。つがいの行動圏及び行動圏内の繁殖に重要な場所などを調査によって把握すること、個々の事案ごとに専門家の指導、助言を求めることなどを保護対策の前提とした上で、イヌワシの保護方策で配慮すべきこととして、具体的には営巣地を中心とした営巣中心域においては環境の改変を避ける必要があること、十二月から四月ごろは生態調査を含めた営巣中心域への接近は避けるべきとしております。営巣中心域は地域や個体によって異なるため、事案ごとに調査する必要がありますが、イヌワシの場合は過去の事例を基に推定すれば、巣から半径一・二キロメートル程度とされております。
○岩佐恵美議員 かなりデリケートな鳥、大型であっても、鳥ですね。多分イヌワシもオオワシもそう変わらないと思うんですね。そういう鳥に対して一体どうなっているかという問題なんですが、釧路湿原で野生生物の保護に取り組んでおられる北海道野生生物保護公社が、モスクワ大学と共同で、二〇〇〇年から四年間、現地のオオワシ調査を行っています。
二〇〇三年のNGOの調査によりますと、サハリン1のチャイボ湾のパイプライン建設計画ルート上に繁殖中のオオワシの巣が発見されています。このパイプライン計画の中心線で既に測量工事が行われています。そして、二メーター幅で伐採が行われている。営巣木はその中心線から六・五メーターしか離れていない。先ほどの話だと一・二キロということですから、もう全然、そういうオーダーからするともう本当に考えられない至近距離なんですね。パイプラインの本格工事は幅四十メーターにわたって表土を削る予定です。そのため、この営巣木は確実に切られることになるということです。また、チャイボ湾に建設中の橋からわずか二百メーターのところでも繁殖中のオオワシの巣が確認されて、しかもひなが一羽確認されたんです。幼鳥が親を待っている巣からは建設の道路が丸見えだと、そして建設工事の大きな騒音が響いていたということです。
環境省のマニュアルでは、国内の猛禽類についてはこういう乱暴なやり方は認められない、それは先ほどの答弁でも明らかであります。ところが、現地の建設会社の環境担当者は、NGOの調査に対して、巣から二百メーターのバッファーゾーンを設けているので問題ない、そう主張したと報告されています。
サハリン1の事業について、オオワシについて適切な環境影響評価が行われたのでしょうか。
○森田嘉彦理事 お答え申し上げます。
サハリン1のプロジェクトに関しまして作成されました環境アセスメント報告書、これにつきましては、ロシア政府の方で現地法制に基づきまして適切なものであるということで承認をしているものでございます。私どもの銀行といたしましては、この報告書の内容につきましてレビューを行いまして、その上で、先ほど申し上げましたように、融資の決定を行っているものでございます。
ただいま先生から御指摘のオオワシの営巣地の問題につきましては、現在、事業実施主体が調査を行っているというふうに承知いたしております。仮にこういったオオワシの巣が計画地に発見されるとかそういった場合には、先ほどのロシア側の政府の承認も得ました環境アセスメント報告書、これに基づきまして適切な対策が実施主体によって取られるというふうに承知いたしております。
○岩佐恵美議員 環境影響評価がきちんと行われていたなら、NGOに指摘されるような、こんな無法とも言える、私、本当に無法地帯だなと思ったんですね、そういう乱暴な工事、これが行われるはずがないんですね。日本のJBICが融資する事業に対して希少野生動物の生息環境を破壊するような乱暴な工事、これが行われるなどということは私は絶対に許されないことだと思います。
そこで、サハリン1の環境影響評価書、これはどうなっているのかというふうに伺ってみたら、ロシアの国内の一部地域でのみしか閲覧できない、国際的には公開されていないということなんですね。今のお話だと、どうも旧日本輸出入銀行、現在のJBICですけれども、そこがサハリン1の事業の融資に当たって直接ちゃんと環境影響評価のチェックをしたのかどうかというのも疑わしいような感じがいたします。
それで、私どもとしては、一体このサハリン1の見られない評価書というのはどうなっているのかということを直接見たいということで皆さんにお願いをして、とにかく借り出すことができましたので、これは後でちゃんと精査をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、こういう重要な事業に情報公開がされないというのは私は大問題だと。今後こういうことがないようにきちんとしていただきたい、そういう要望を申し上げておきたいと思います。
今、サハリン1の問題ですが、サハリン2の環境影響評価についてもNGOから事実と違うという点が数多く指摘をされています。
例えば、NGOの調査では、チャイボ湾で十五つがいのオオワシの繁殖が確認されました。ところが、アセスでは五つがいしか記載されていません。日ロ共同調査団の四年間の調査から推定されるオオワシのつがい数は、チャイボ湾では三十つがい、エナジー社のアセス記載ではその六分の一の五つがい、ピルトゥン湾では十五つがいいるのに三分の一の五つがいとなっております。アセスの数字は余りにも少な過ぎるんです。
しかも、エナジー社の調査にかかわったロシア人研究者は論文で、これらの湾のオオワシの調査について日ロ共同調査団とほぼ同じ数字を発表しています。そのため、エナジー社の環境調査はデータが改ざんされたのではないか、そういう疑いが持たれています。もしこれが事実だということになりますと、このようなずさんな環境影響評価の下で事業が進められる、そしてオオワシの繁殖に多大な影響が出るということを放置をすることになってしまうんですね。
小池大臣は、昨年十一月、知床半島を視察された際に、このような事実の指摘に対して、いろいろな開発主体があり、現在持っている情報を調査する必要があると述べたと伺っています。オオワシを国内絶滅危惧U類に指定をしている環境省として、オオワシの繁殖実態やエナジー社のアセスについてチェックをする、そしてサハリンの石油ガス開発でオオワシの生息地、生息、繁殖、これらを保全するように対応すべきだと思いますが、その点、いかがでしょうか。
○加藤修一副大臣 サハリン部の石油ガス開発の関係につきましては、環境保全の視点から、私も個人的には数年来注視している話でございます。
御指摘の点でございますけれども、サハリン地域のオオワシの生息状況については、先ほど話が出てまいりましたけれども、北東部のビルトゥン湾及びチャイボ湾において、サハリン2プロジェクトの環境影響評価のための調査ということで社団法人の北海道野生生物保護公社とモスクワ大学の共同調査が行われているわけでございます。それと実施主体も当然やっているわけでありますけれども、その調査結果を見てまいりますと、プロジェクトの実施主体によるサハリン2の環境影響評価のための調査では十つがいになっていると。それから、北海道野生生物保護公社及びモスクワ大学の共同調査では三十九から四十四つがいというふうに報告されているというふうに我々も伺っているところでございます。そこで、ロシアのプロジェクト実施主体によりますオオワシ等野生生物に対する環境保全措置が我々としては適切に講じられることが基本ということで認識してございます。
なお、環境省では、先ほど委員が御指摘になりましたように、日ロ渡り鳥等保護条約がございますので、その枠組みの中で、サハリン地域でオオワシ等の生息状況を把握するための共同研究及びその準備会合の開催をロシア側に提案をしておりまして、現在、ロシア側がこれについて検討中ということで推移している段階でございます。
○岩佐恵美議員 しっかりやっていただきたいと思います。
サハリン2によるオオワシ等への影響についてはもう北海道庁も心配をしています。今年二月にエナジー社に対して、生息状況を十分に調査し、事業区域の見直しを含めて生息環境保全の十分な措置を講じること、道民に対する説明や意見聴取の機会を継続的に設けることなどの要望書を提出をしています。NGOも、専門家を交えた十分な議論の場を設置すること、十分透明性を確保した場で継続的な議論を行うこと、専門家やNGOなどとともに万全の対策を確認すること、日本国民に十分説明することなどを求めています。
また、四月二十三日付けの北海道新聞によりますと、サハリン2関連工事のプラント建設工事によって行われた百五十万立米にも上る大量のしゅんせつ土砂がサハリン南端のアニワ湾に投棄をされ、そのことによって周辺の生態系に影響が出るおそれがあるとして北海道や北海道漁連が大変心配をしているとのことであります。
JBICとして、サハリン2に対する道やNGOの指摘をきちんと受け止めて積極的に対応すべきだと思いますが、いかがですか。
○森田嘉彦理事 サハリン2の環境配慮につきましては、実施主体でございますサハリンエナジー、こちらはロシアの法令に基づきまして、サハリン島の中ではもちろん公聴会を実施してきているわけでございます。また、先生御指摘のように、あわせまして自主的にこれまでも北海道庁、漁業組合、北海道大学、あるいはNGOの方々との会合を開催してきているというふうに承知いたしております。
JBICといたしましても、御指摘の御心配あるいは御要望があることは十分承知いたしておりますので、そういった要望等について、折に触れまして実施機関の方にも私どもの方からも適切な対応を要請しているところでございます。
○岩佐恵美議員 二十一世紀は環境の世紀です。人間の都合だけで、自らの利益のみを追求して他を顧みない、地球の未来を考えない、そして自然を破壊をしてしまうということは、これは国内でも国際的にももはや通用しません。とりわけ、データを捏造したり、住民の意見を聞かないで自然環境を破壊する、そういう企業の事業というのは成功するはずがない、そう言われています。
JBICは、環境社会配慮のためのガイドラインで、適切な環境社会配慮がなされない場合には融資等を実施しないこともあり得るとしています。このことを私はしっかり踏まえて、融資についてJBICは厳しく対応すべきだと思いますし、それから経済産業省としてもきちんとした大所高所の指導をしていくべきだと思います。それぞれお答えいただきたいと思います。
○松あきら委員長 時間が来ておりますので、短めにそれぞれ御答弁よろしくお願い申し上げます。
○中川昭一大臣 石油、ガスの開発事業では、環境に十分配慮する、こういうことはもう当然でありますし、これはサハリン、ロシア連邦でございますから、ロシアの法令にのっとってきちっとやっていかなければいけないというふうに考えております。
開発の責任者はいわゆる国際石油メジャーでございますから、環境に対して十分な配慮をしながらロシアの環境、サハリンの環境を汚さないように、日本も参加しておりますけれども、十分注意をしてやっていかなければいけないことだと思っております。
○森田嘉彦理事 私どもといたしましても、このサハリンのプロジェクトにつきまして、環境社会配慮というのは極めて重要であるということは承知いたしております。そういった環境社会配慮と両立する形で進みますように、私どもの銀行の立場からも対応していきたいというふうに考えております。
○岩佐恵美議員 終わります。
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