820億円・過去最高額の巨大ODA
マレーシア、パハン・スランゴール導水事業
その必要性に疑問!!
2005年3月31日、国際協力銀行は、マレーシアのパハン・スランゴール導水事業に関し、マレーシア政府との間で、政府開発援助(ODA)として、820億4,000万円を限度とする円借款貸付契約に調印した。これは、一つの案件に対する円借款としては過去最高額。本来、マレーシアは中進国でありODA卒業国で円借款の供与対象国ではないが、アジア経済危機後の新宮澤構想を契機に、「特別円借款」として同国への円借款が再開された。
同事業には、需要性や代替案への疑問が出されていた。しかし事業の理論的根拠や、妥当性の確認と提言に関する文書は、マレーシアでも日本でも、適切に公開されておらず、巨額なODAを融資する国際協力銀行は、十分かつ適切な説明責任を果たしさないまま調印に至った。
また、今回の国際協力銀行による貸付契約の調印は、先住民族の移転問題に関して、現地専門家と国際協力銀行で意見交換が行われている最中での出来事であり、契約調印後に、現地NGOや専門家が、契約調印に強い懸念を示す文書を同行に送った。国際環境NGO
FoE Japanもまた、同行に対し、円借款を拠出するにあたり、これらの問題に対する説明責任と真摯な対応を要請した。
●パハン・セランゴール導水事業の疑問点――
1. 事業の妥当性
水需要予測が、非常に楽観的な経済成長や高い人口増加予測に基づいて、不当に見積もられている可能性が高く、この問題に関しては、現地でも、また日本の国会でも指摘されていた。さらに、事業による環境社会影響を考えた場合、新たなダム建設による水需要の確保よりも、税率を利用した水道料金の改定や、40%というマレーシアの高い無収水率への対策等を検討すべきだが、これらの代替案について具体的かつ十分な議論がなされていない。
2. 先住民族
先住民族オラン・アスリのテムアン一族325名が住んでいる地域は、貯水池の近くに位置するものの、ダムによって水没しないにも関わらず、これまでマレーシア政府より「移転しないでもいい」という選択肢を与えられていなかった。
■本件お問い合わせ:国際環境NGO FoE Japan (担当:清水規子)
東京都豊島区目3-17-24 2F
Tel: 03-3951-1081, Fax: 03-3951-1084
※パハン・セランゴール導水事業に関する情報はこちら
https://www.foejapan.org/aid/jbic02/kelau/index.html
|