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ケラウダム円借款融資に関する再質問主意書と政府答弁
 

2007年6月15日民主党の前田雄吉議員が質問主意書を提出しました。以下は、その質問主意書と6月26日発表の政府答弁です。

国際協力銀行が2005年3月31日、マレーシアのケラウダムに対し行った円借款融資に関する再質問主意書と政府答弁の内容を合わせた内容です。(各項目、枠の中が質問、その下が答弁です)

項目
一、 事業の全般と国際協力銀行の融資の開始について
二、 入札に関して
三、 事業の規模縮小に伴う影響に関して
四、 モニタリング会合
五、 先住民族
六、 報道の自由について

 

 


一  事業の全般と国際協力銀行の融資の開始について

イ) 現在、同計画の総事業費は約千百七十一億円であるようだが、そのうち、ダム本体、パイプライン、導水トンネル、取水ポンプにかかる費用の内訳を示されたい。

ロ) 既に、本計画のコンサルティング・サービスに係るコンサルタントの選定作業は終了したと理解しているが、その理解でよいか。

ハ) コンサルティング・サービスの内容は、「本計画の詳細設計及び施工管理」であることが平成十九年五月十八日付け、内閣衆質一六六第二一八号の日本政府による質問主意書の答弁書で述べられているが、本計画のどの部分に関する詳細設計及び施工管理か。

ニ) コンサルティング・サービスが開始されたことが事実だとすれば、国際協力銀行は近々融資を実施するのか。もしくは、既に融資を開始したのか。融資をこれらから開始するとすれば、それはいつか >

 

 

一のイ)、ロ)及びニ)について   「パハン・スランゴール導水計画」(以下「本計画」という。)の総事業費の内訳に関しては、公正な入札の実施に影響を及ぼすおそれがあること等から、お答えすることは差し控えたい。また、現在、マレーシア政府がコンサルティング・サービスに係るコンサルタントの選定作業を行っているところであり、融資の開始時期は確定していない。

一のハ)について   衆議院議員前田雄吉君提出国際協力銀行が二〇〇五年三月三十一日にマレーシアのパハン・セランゴール導水事業に対し行った円借款融資に関する質問に対する答弁書(平成十九年度五月十八日内閣衆質一六六第二一八号)の一の(イ)から(エ)までについて述べた詳細設計についてダム及び取水堰関連工事を、施行管理についてはトンネル、ダム及び取水堰関連工事をそれぞれ対象としている。

 


ニ  入札に関して

イ) 融資決定及び条件に係る二〇〇六年の外務省発表によると、本計画に関しては、融資契約の借款条件として、第三者委員会が設置され調達にかかわる審査をすることが明記されていると聞いているが、これは事実か。

ロ) 本計画のコンサルティング・サービスに係るコンサルタントの選定も調達にあたるので、イ)が事実であるならば、本計画のコンサルティング・サービスに係るコンサルタントの選定にあたっても第三者委員会が設置されるべきではなかったのか。

ハ) イ)が事実であるにもかかわらず、第三者委員会が設置されなかった場合、設置しなかった理由は何か。

ニ) 二〇〇七年現在、コンサルタントが選定されたとのことである。現地マレーシアからの情報によると、東電設計グループと、モット・マクドナルド社グループの二つのグループの応札があったが、モット・マクドナルド社グループは入札条件が満たされず失格になり、最終的には東電設計グループが落札したようであるが、この経緯は事実か。

ホ) ニ)で述べた落札経緯が事実であるならば、このモット・マクドナルド社グループの失格理由にある「入札条件が満たされなかった」ということに関し、具体的にどのような条件が満たされなかったと日本政府は承知しているのか。

ヘ) 国際協力銀行のコンサルタント雇用ガイドラインに則って、国際協力銀行は本事業のコンサルタント選考の妥当性について日本政府及び国際協力銀行は具体的にどのように確認したのか。具体的な確認の方法を示されたい。

ト) 日本政府は、東電設計の水道事業に関する事業実績をどのように考えているのか。豊富な事業実績であると考えているのか。東電設計に水道事業の実績があるとすれば、日本政府が把握している東電設計の事業実績を挙げられたい。

 

二のイ)からハ)までについて   ご指摘の「外務省発表」とは、外務省ホームページに掲載された「マレーシアに対する特別円借款「パハン・スランゴール導水計画」の供与について」と題する記事資料を指すものと思われるところ、同記事資料においては、「調達手続きについては第三者機関等による定期的・事後的監査を実施すること」とされているが、これは調達手続が終了した段階で第三者機関である監査人等による監査を行うことを述べたものであり、御指摘のように、コンサルティング・サービスに係るコンサルタントの選定前に第三者機関を設置することとはされていない。

二のニ)及びホ)について   現在、マレーシア政府がコンサルタントの選定作業を行っていること等から、その過程についえお答えすることは差し控えたい。

二のヘ)について   国際協力銀行において、マレーシア政府の行うコンサルタント選定のための招請状、プロポーザル評価結果等と国際協力銀行のコンサルタント雇用ガイドラインとの整合性を確認しているものと承知している。

二のト)について   特別企業の事業実績に係る評価等について、日本政府の考えを示すことは適切ではないため、お答えすることは差し控えたい。

 


三  事業の規模縮小に伴う影響に関して

イ) ダム堤の高度が海抜九十メートルから八十五メートルと、規模が縮小したことに伴い、本計画による水供給量は減少すると理解しているが、この理解で正しいか。

ロ) イ)の理解が正しければ、事業規模縮小により水供給量は何リットル減少し、現在同計画によるセランゴール州及びクアラルンプールへの水供給量は何リットルになったのか。

ハ) そもそも同計画はセランゴール州の水不足に対応することを目的とした事業であったはずだが、供給量が減少しても水不足に対応できるということか。

ニ) ハ)で、水供給量が減少しても水不足に対応できるとすれば、それはなぜか。

ホ) セランゴール州及びクアラルンプールにおける、最新の水需要の予測の数値を示されたい。特に、二〇〇八年、二〇一〇年、二〇一五年、二〇二〇年について示されたい。

ヘ) ダム堤の高度が海抜九十メートルから八十五メートルと、規模が縮小したことに伴い、ケラウダムによる湛水面積は何ヘクタールになったのか。

ト) 事業規模の縮小により、以下の土地の湛水面積は当初よりも何ヘクタール減少し、現在何ヘクタールが水没することになっているのか。また、その湛水面積は、それぞれの全体の土地の面積の何パーセントに値するのか。

・ ラクム森林保護地域

・ オランアスリ居住地(耕作地等も含む) (テムアン)

・ オランアスリ居住地(耕作地等も含む) (チェウォン)

 

三のイ)及びロ)について   ケラウダムの導水量のすべてがクアラルンプールを含むスランゴール州に向けたものであるが、ダム堤の高度が海抜九十メートルから海抜八十五メートルに引き下げられたことにより、当該導水量は、一日当たり二十二億六千万リットルから十八億九千万リットルに減少することになるものと承知している。

三のハ)及びニ)について   現在想定されている導水量は、当初想定されていた導水量より減少するものの、相応の水需要には対応できる見通しであると承知している。

三のホ)について   水需要に係る数値は、マレーシア政府から公表しないことを条件に提供された情報であるため、お答えすることは差し控えたい。

三のヘ)について   ケラウダムによるたん湛水面積は、二千三百五十四ヘクタールとなる予定であると承知している。

三のト)について   ラクム森林保護地域の湛水面積は、千六百十ヘクタールから千五十七ヘクタールに減少し、減少後の面積は同保護地域全体の約六パーセントとなるものと承知している。テムアンのオランアスリ居住地(耕作地等を含む。)の湛水面積は、七十八ヘクタールから三十五ヘクタールに減少し、減少後の面積は当該地域全体の約三十五パーセントとなるものと承知している。また、チェウォンのオランアスリ居住地(耕作地等を含む。)の湛水面積は、当初も現在も零ヘクタールであると承知している。

 


四  モニタリング会合

イ) 平成十九年五月十八日付け、内閣衆質一六六第二一八号の日本政府による質問主意書の答弁書において、同計画に関しては、マレーシア政府及び国際協力銀行職員の出席を得た形でのモニタリング会合を持って説明責任が果たされたと述べているが、そのような形では説明責任が果たされたことにはならない。再度質問するが、二〇〇七年三月に日本国大使館に提出された書簡に対し、日本政府として真摯に返答すべきではないのか。

ロ) モニタリング会合の目的及び役割は何か。また、主催はマレーシア政府か。

ハ) モニタリング会合へは、市民やNGO等が自由に参加できるのか。また、どのようにモニタリング会合の参加者を募っているのか。署名を出した五〇〇〇名もの住民や反対セミナーに参加したベントン付近の住民には、モニタリング会合の開催の案内を出しているのか。

ニ) 過去三回、モニタリング会合の開催と参加の募集をどのようにかけたのか。

ホ) 同計画に関して現地で開かれているモニタリング会合では、過去三回、何が話し合われたのか。また、モニタリング会合では、現地NGOまたは影響住民からどのような懸念が挙げられたのか。 ヘ) ホ)で質問した、現地NGOまたは影響住民から挙げられた懸念は、モニタリング会合を通じて全て払拭もしくは解決されたのか。

ト) モニタリング会合において国際協力銀行が果たしている役割は何か。

チ) 過去三回開かれたモニタリング会合において、住民およびNGOなど市民からの参加者はそれぞれ何人だったか。

リ) 過去三回開かれたモニタリング会合において、先住民族からの参加者はそれぞれ何人だったか。


四のイ)について   御指摘の書簡において示されている環境面等の影響に関しては、マレーシア政府が環境影響評価を適切に実施し、我が国政府及び国際協力銀行の職員の出席を得たモニタリング会合を通じて住民に対して説明しており、マレーシア国民に対する説明責任は適切に果たされていると考えている。

四のロ)について   モニタリング会合は、マレーシア政府の主催により、本計画について、住民、NGO等と協議することを目的として開催されているものであると承知している。

四のハ)及びニ)について   モニタリング会合の開催に際しては、マレーシア政府が、本計画によって影響を受ける地域の住民代表、本計画に関心を有するNGO、日本政府及び国際協力銀行に案内を送付しており、過去三回のモニタリング会合も同様の方法で関係者の参加を募ったものと承知している。

四のホ)及びヘ)について   過去三回のモニタリング会合では、本計画の現状、住民の移転計画、本計画に関する環境配慮等について議論が行われ、住民及びNGOからは、環境管理計画の実施見込み、補償金の水準等に関心が示された。これらの関心事項については、マレーシア政府より適切に説明がなされたものと承知している。

四のト)について   国際協力銀行は、オブザーバーとして参加しているものと承知している。

四のチ)について   過去三回のモニタリング会合においては、それぞれ住民及びNGOからは約十名程度が参加したものと承知している。 四のリ)について   過去三回のモニタリング会合のうち、最初の会合にオランアスリの代表者一名が参加したものと承知している。

 


五  先住民族

イ) 平成十九年五月十八日付け、内閣衆質一六六第二一八号の日本政府による質問主意書の答弁書において、「オランアスリは居住区の水没いかんにかかわらず、生活基盤となる耕作地の一部が水没するため、移転を希望する住民が存在するものと承知している」とある。移転を希望する住民が存在することも否定はしないが、問題は、「移転したくないのに、移転の有無に関する選択を知らされず、移転させられようとしている先住民族がいる」ことである。この問題に関し、国際協力銀行は現地で直接先住民族に確認したのか。

ロ) 平成十九年五月十八日付け、内閣衆質一六六第二一八号の日本政府による質問主意書の答弁書において、「同銀行は、マレーシア政府がオランアスリに対し、冠水面積、ダム堤の高度の変更及び移転計画の概要を説明したほか、署名前には移転の有無を選択できる権利があることを説明したと承知している。」とあるが、イ)でも記したように、先住民族は移転の有無を選択できる権利があることを現在知らない。過去のマレーシア政府による説明の有無にかかわらず、現在オランアスリが移転の有無を選択できる権利があることを知らない以上、マレーシア政府は再度オランアスリと会合を持ち、その権利について適切に説明するべきであると考えるが、日本政府はどのような見解か。

ハ) 平成十九年五月十八日付け、内閣衆質一六六第二一八号の日本政府による質問主意書の答弁書において、移転世帯数が増加した理由について、チェウォンの居住区が含まれていなかったことが述べられているか、チェウォンの居住区が移転世帯に含まれることになったのはいつか。

ニ) チェウォンの居住区が当初同事業の環境影響評価に含まれなかった理由は何であると、日本政府は承知しているのか。

ホ) チェウォンの生計手段や生活水準等、チェウォンに関する社会調査は実施されてしかるべきであると考えるが、実施されたのか。されたとすればそれはいつ実施され、それはマレーシア国内で公開されているのか。公開されている(た)場所と期間を示されたい。


五のイ)及びロ)について   国際協力銀行においては、関係者間の会合において、オランアスリの代表者から移転の意向があることを直接確認し、また、テムアンにおける国際協力銀行と同代表者との面会においても移転は村民の意向に従い行われることを直接確認しているものと承知している。また、マレーシア政府がオランアスリに対し、冠水面積、ダム堤の高度の変更及び移転計画の概要を説明し、署名前には移転するか否かを選択できる権利があることを適切に説明したものと承知している。

五のハ)について   チェウォンのオランアスリが移転対象候補になったのは、二千三年三月のことと承知している。

五のニ)について   チェウォンのオランアスリの居住区は、本計画の水没地域ではないため、当初は移転対象候補に含まれていなかったものと承知している。

五のホ)について   チェウォンに関する社会調査は、マレーシア政府より依頼されたマレーシア国民大学が二千三年九月までに実施したものと承知しているが、同調査報告書が公開されているか否かについては、承知していない。

 


六  報道の自由について

平成十九年五月十八日付け、内閣衆質一六六第二一八号の日本政府による質問主意書の答弁書において、「マレーシアにおいて、我が国が供与する円借款を理由として報道の自由が規制されているとは承知していない」としているが、これについて日本政府としてどのように規制がないという事実を確認したのか。マレーシア政府からの情報によってのみ確認したのか。

 

六について   日本政府は、日頃からマレーシアに関して幅広く情報収集を行っているが、マレーシアにおいて我が国が供与する円借款を理由として報道の自由が規制されていることを示す情報はない。


 

 
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