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ケラウダム建設計画に関する国会質問 ―参議院 行政監視委員会(2004.04.12)
2004.04.12(月)   第159回国会 参議院 行政監視委員会 3号

質問者 岡崎トミ子 参議院議員
回答者 古田肇 外務省経済協力局長
      丹呉圭一 国際協力銀行理事

*この記録は、FoE Japanがインターネット審議中継の該当部を書き起こしたも のです。

質問の主な内容は以下の4点です。
1 円借款の必要性
2 水需要予測の根拠となるデータの公開
3 代替案の検討について
4 移転住民の問題、生態系への「適切な」配慮について


【円借款の必要性】
○岡崎トミ子議員
 民主党・新緑風会の岡崎トミ子でございます。今日はODA関係について質問をさせていただきます。

 マレーシアのパハン・セランゴール導水事業について聞きたいと思いますが、今年に入りまして、二十四団体、百二十四人の個人が賛同しまして円借款供与決定の再考を求める要望書が出されました。この要望書を見たところ、見過ごしにできない内容でありますので、この行政監視委員会で取り上げることといたしました。

 この事業は、マレーシアのパハン州というところのケラウ川流域にダムを建設して、八キロメートルのパイプラインと四十五キロメートルの導水トンネルで首都クアラルンプールのあるセランゴール州に一日約二百三十万立方メートルの水を引くという巨大事業でありまして、総事業費は十億ドルと見込まれております。

 二〇〇三年三月三十一日、日本政府からマレーシア政府に対して、この事業のために八百二十億四千万円という巨額の特別円借款を供与するとの交換公文が締結されまして、現在、国際協力銀行、JBICとマレーシア政府実施機関との間で借款契約に関する交渉が行われていると聞いております。この供与額は、日本が政府開発援助、ODAを開始しましてからこれまでの五十年間に行ったプロジェクト借款の中で最大級のものでありまして、他の事業と比べますとこの事業の巨大さが分かります。

 どのぐらいかというので、ちょっと私も、東京、日本の中でも見てみました。東京都の水ですね、利根川導水路事業でありまして、この首都圏の水需要の大変に急激な増加にこたえるためにできたものでありますけれども、この一日取水量は五十一億二千三百二十八・七リットルであります。このパハン・セランゴール導水事業は毎日二十三億リットルの水を導水するということですから、この利根大堰で毎日取水している量の四五%ほど毎日流す計算になります。東京の水というのは大変な量を私は使っているというふうに思いますけれども、その四五%、それを見ただけでも大変大きなものだというふうに思われるだろうと思います。

 そして、過去十年間の個別の事業をずっと見ましても、十一年度から見ても、やはりこのパハン・セランゴール、この導水事業、断トツでございます。特別円借款のところも見ましても、これまた断トツだということが分かりまして、この要望書はこの巨額の融資に疑問を投げ掛けておりまして、円借款供与決定の再考を求めております。いわく、必要性が疑われる、社会、環境への悪影響が重大である、意思決定について情報公開、参加といった観点から問題があるといった指摘でございました。

 まず、この事業の必要性について問いたいと思います。この巨額の円借款の必要性について、どのように認識しておられるでしょうか。


○政府参考人(古田肇局長)
 御答弁申し上げます。

 本事業につきましては、二〇〇〇年五月にマレーシア政府から特別円借款ということで要請がございまして、以来、様々な検討、あるいはいわゆるモニタリング会合といいますか、環境社会問題に関する住民等との意見交換等々、手続を経まして二〇〇三年三月に交換公文の署名に至ったものでございますが、本件につきましては、マレーシア側において、今申し上げましたような過程の中で、代替案あるいは環境社会配慮を含めまして様々な検討が行われてまいりました結果、今後の水需要に対応するためにはこの事業の実施が必要であるという結論に至ったものでございます。

 政府といたしましては、クアラルンプールを擁しますスランゴール州における水需要は今後とも増加が認められていること、さらには、近年、実際に水不足が発生しているにもかかわらず同州における新たな水源開発が困難であることといった観点から、この導水事業の実施が必要であるというふうに判断をし、円借款の供与を決定したものでございます。


【水需要予測の根拠となるデータの公開】
○岡崎トミ子議員
 大変に、この近辺のずっと、マレーシアについての援助がODA関係ではずっとなかったんですね、しかも中進国であるということで唐突だという感じがあるわけなんですけれども、今御説明のように、日本政府はODAとして融資すべき事業と判断したということだろうというふうに思っておりますが、その必要性を判断した根拠となるデータ、これが公開されておりません。

 この事業の必要性については水需要予測の観点から判断したと、今も人口増加、水不足というようなことでおっしゃっておりますけれども、この根拠というものはどのようなものなんでしょうか。根拠となった文書を公開すべきだと思っております。


○参考人(丹呉圭一理事)
 水需要の予測につきましては、マレーシア政府が、対象地域におります居住者の世帯数、それからその地域におきます経済活動、商業、工業、サービス、それから産業等におきましてそれぞれどの程度の水が必要かという需要量、それから漏水等によりますロス、それから水道サービスがカバーする地域、さらにその地域での人口増加率、こういったものを考慮して積算いたしましたものを当行にて確認、検討しております。

 マレーシア側の予測の根拠となりますマレーシア国家水資源調査につきましては、マレーシア政府実施機関の事務所におきまして、その機関の職員立会いの下で閲覧が可能となっております。

 当行では、その調査結果をマレーシア政府より、当行が公にしないということを条件として受け取っておりまして、検討したものであります。当行がこれをマレーシア側の意に反して公にできないことについては御理解を賜りたいと思います。


○岡崎トミ子議員
 疑わしいのに公開されない。じゃ、分からないと私たちの方は言わざるを得ないわけなんですね。

 つまり、マレーシア政府の方は、今後の水需要予測を理論的根拠に挙げて今のようにおっしゃるわけですね。新たな水資源開発の必要性からこの実施が必要だというふうなことを言っているわけなんですけれども、マレーシア政府の方は、水需要予測の元データとして挙げておりますマレーシア国家水資源調査、今、見ることができるということでありましたけれども、政府関連オフィスの中で担当官同席の上で複写を禁止して閲覧可能であると、非常に限定された公開になっているわけなんですね。また、日本政府も事業の妥当性を確認したと思われますこのパハン・セランゴール導水事業のエンジニアリング・サービスに係る案件形成促進調査、この最終報告書は全く公開されていないという状況であります。つまり、水需要予測の方法論及び算出の基となっている詳細なデータがこれまで明示されていない、水需要予測、ひいては事業が正当なものであるかどうかということを検討することができない、こう言わざるを得ないというふうに思うんです。

 日本政府はJBICが事業の妥当性を判断した材料を公開せずにということを今条件にということもおっしゃっておりましたけれども、これ、日本の納税者に対してどのような説明責任を取るおつもりなんでしょうか。


○参考人(丹呉圭一理事)
 こういった書類の入手につきましては、マレーシア政府との間で、先ほど申し上げましたように、公にしないということを条件にして得たものでございます。これは言わばマレーシア政府との間の信頼関係に基づいて行われている行為でございまして、当行が円借款事業の検討、調査を行うに当たりまして、今後、当行に対して十分な情報が提供されないおそれがある、あるいは円借款事業の適切な事業に支障を来すおそれがあるということから公開をしておりません。この点については重ねて御理解を賜りたく存じます。


○岡崎トミ子議員
 こんな手法だったら、どの国に対しても、相手の政府がこれを公開しないことを条件に言っているといって、幾らでもお金を出せるんですよ。しかも、これ、八百二十億四千万、大変な額なんです。ですから、そのような説明ではなりません。

 更に続けたいと思いますけれども、この事業のステークホルダーとしてフィリピンの法律で定められております地元の自治体、この事業への反対決議を採択しております。日本政府はこの相手国政府の法律に違反する事業を支援しているのではないかということで、私は事前に質問をさせていただくときに申し上げているところでございますけれども、いかがでしょうか。その後、このクラベリア町のことについての反対決議についてはいかがでしょうか。


○参考人(丹呉圭一理事)
 ただいまの御質問は、フィリピンについての案件に関することでございますか。


○岡崎トミ子議員
 いえ、間違えました、間違えました。大変失礼をいたしました。こっちが飛んじゃいました。ごめんなさい。失礼いたしました。


【代替案の検討について】
 この巨大ダムの建設という選択肢に対しましては、水管理政策の包括的見直しが必要だという議論がマレーシア国内でも出されているところでありまして、老朽化いたしました給水パイプの修復あるいは水道料金の改定を通して水の有効利用を図るなど、代替案が検討されてしかるべきだというふうに思っておりまして、ODAはまずこの代替案の検討に向けられるべきだというふうに考えております。

 先ほども漏水の問題について触れておりました。私は盗水の問題もあるだろうというふうに思っておりますし、日本の中ではこの水の問題では、かつては本当に蛇口をひねれば水がどんどん出てくる、もしかしたらマレーシアの方々の中にも水はただだということでどんどん使っているという面があるかもしれない、ですから節水の啓蒙ということもしなければいけない。この代替案の検討結果を示す文書を公開すべきだというふうに思っているんですけれども、まずその検討があったかどうか、そしてその公開についていかがでしょうか。失礼しました。よろしくお願いします。


○参考人(丹呉圭一理事)
 ただいま御質問の本事業の代替案の検討結果でございますが、これはマレーシア政府が行いました環境影響評価報告書において記載されております。この報告書を取りまとめる際に、事前にパブリックコメントのプロセスを通すとか、代替案の検討結果はマレーシア政府により一般に公開されていると承知しております。


○岡崎トミ子議員
 代替案といいますのは、A、B、C、Dまで例えばあるとすれば、その一つ一つについて環境に影響がないかどうか、あるいは金額的なものでもなるべく比較的安い方の方法がないか、様々な住民の要求なども含めて住民が分かるような代替案を示し、それら一つ一つにチェックして、それらが公開されて、そしてこれが選ばれたということに関して本当に分かるようにしなければいけないわけですけれども、その代替案ということに関しては十分な公開ということがなされていないというか、チェックしてまた意見を出したところに対してその意見がもう一度返されていないという状況なんですけれども、その辺のことに関してはいかがでしょうか。


○参考人(丹呉圭一理事)
 マレーシア政府が行いました代替案でございますが、環境影響評価、これはマレーシア政府が行っておりますが、それによりますと、事業そのものを実施しない代替案、それからさらに河川からの取水、それから地下水のくみ上げといったダム建設以外の代替案が検討されております。当行におきましても、審査等を通じまして本事業の実施の妥当性について確認を行っているところでございます。

 検討した代替案のメリット、デメリットでございますが、この環境影響評価では、ダム建設を実施しない代替案、それから河川からの取水、地下水のくみ上げといった代替案ですが、まず第一に事業そのものを実施しない代替案につきましては、クアラルンプールの首都圏を含みますクランバレーにおいて深刻な水不足が発生いたします。これによりまして社会経済への悪影響、それから住民の健康、福祉にとっての重大な問題が生ずるというデメリットがございます。

 それから、ダムを建設しない代替案におきましては、河川から取水するあるいは地下水のくみ上げを行うということが検討されておりますが、乾季あるいは流量が少ない場合には必要な取水ができないということで、水の安定的な供給が損なわれるという問題がございます。


○岡崎トミ子議員
 つまり、代替案が納得のレベルに達していない現状だということについてまず指摘をしておきたいというふうに思います。


【移転住民の問題、生態系への「適切な」配慮について】
 この外務省のホームページで公表されておりますプレスリリースを見ますと、案件概要の説明の終わりに、なお、本件計画の環境面、社会面への影響については、移転住民への適切な対応、生態系への配慮、この対策が十分に講じられることとなっていると。何となくこの「なっている」という表現が人ごとみたいに感じられるんですけれども、実際にこれはどういう意味なんでしょうか。融資の条件となっておりますでしょうか。それからもう一つ、「適切に講じられること」といった、そのことをどのように担保されますでしょうか。


○参考人(丹呉圭一理事)
 当行としましては、移転住民の問題、それから生態系への配慮等につきましては非常に重要な問題だと認識しております。

 この移転住民、それから生態系への対応につきましては、マレーシア政府の一義的な責任でございます環境影響評価報告書、それから今後作成されます環境管理計画の確認を通じまして適切な対応をマレーシア政府に求めていきたいというふうに考えております。また、マレーシア政府が現地NGOや住民代表を招いて開催しておりますモニタリング会合へ当行職員が出席したり、現状把握のためのミッションを随時派遣しているところでございます。

 今後とも、移転住民、生態系への配慮のための対策が適切に講じられるよう必要に応じ第三者の意見を伺うなど、マレーシア政府の取組を確認してまいりたいと思っております。


○岡崎トミ子議員
 是非丁寧に確認していただきたいなというふうに思いますのは、この移転住民のことに関しましては、例えば水没はしないけれども八十世帯が移転するということになって、どのようにマレーシアの状況なっているかといえば、大体一人一人に対して丁寧にやらなければいけないというのがODAの考え方だというふうに思っておりますけれども、一つの先住民族に対して、リーダーが返事をしてしまったら物も言えない、しかも、もしかしたら移転しなくてもいい条件があるということについては住民の一人一人に知らされていないから、もう承諾をしていかざるを得ない。しかし、その移転先はどのようになっているのか、このこともきちんと相手には伝えられていないから将来についての大変な不安な状況になっているということですから、このことについてはきちんと再確認をしてくださるということについてお約束いただきたいと思います。


○参考人(丹呉圭一理事)
 ただいま先生の御指摘の趣旨に沿いまして対処させていただきます。


○岡崎トミ子議員
 外務省にもお伺いしたいと思いますけれども、相手国に任せきりにせず、JBIC自身が適切な対策が講じられるように積極的に動くべきではないかというふうに思っておりますけれども、外務省、いかがでしょうか。


○政府参考人(古田肇局長)
 この件につきまして、最初に御質問のございましたその資料の公開につきまして私どもも外交ルートでマレーシア政府と話をしたわけでございますが、先ほど御答弁のあったような結果でございまして、私どもとしてもあの資料についてはマレーシア政府の考えを尊重せざるを得ないという考えでございます。

 ただ、これまでのこのプロジェクトを検討するプロセスにおきまして、マレーシア政府もかなり丹念に手続を取ってきておると思いますし、また日本国政府の求めに応じて説明会を開催するなど、慎重に対応してきておるというふうに理解しております。

 また、昨年三月に交換公文に署名したところであるわけでございますが、それ以来、マレーシア政府として、この事業の実施に当たってできる限り関係者の意見を聞いて、計画実施に伴う影響にも配慮しつつ進めるということで入念な準備をしておるということから、借款契約締結にかなり時間を掛けておるというふうに理解しております。

 先ほどJBICの理事からも御答弁ございましたが、こういった環境面への配慮について、私どもとしても引き続き適切な配慮が払われるよう大いに関心を持って見守ってまいりたいというふうに考えております。

○岡崎トミ子議員
 よろしくお願いいたします。
 (後略)

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