JBICは、環境社会配慮ガイドライン(以下、ガイドライン)の改訂に先立ち、どのようにガイドラインが実施されてきたのかを確認する調査(実施状況確認調査、以下調査)を実施し、その報告書を11月29日のコンサルテーション会合で配布しました。39ページに及ぶ報告書でしたが、その内容は、全体的に以下の点から質量共に十分なものとはいえませんでした。
<調査の方法>
世界銀行の民間支援部門であるIFC(国際金融公社)やアジア開発銀行(ADB)でも、やはり政策改訂の際には、それに先立ち実施を検証していますが、その過程において、プロジェクト現地での調査も行い、現地NGO、影響住民、実施機関、担当スタッフへのインタビューなども行っていました。IFCやADBでは、このように質的な調査も実施されていましたが、JBICの今回の報告書からは、このような調査方法がとられていることは確認できませんでした。特に、現場でのインタビューを実施することによって、政策による、実際のプロジェクト現場での影響回避・緩和への貢献の有無や程度を測ることが可能になりますが、今回のJBICの調査には現場での調査が全く含まれておらず、調査方法が不十分であるといわざるを得ません。
<調査の範囲>
報告書は、ガイドラインの一部を選択して検証したもので、ガイドラインの実施状況を包括的に調査したものではありませんでした。例えば、現在のガイドラインでは、「対象プロジェクトに求められる環境社会配慮」として、全部で8テーマ、20項目がありますが、報告書でカバーされたのは、そのうち5テーマ、6項目に留まっています。例えば、「社会的合意及び社会影響」「検討する影響のスコープ」といったテーマは除外されています。 また、調査範囲を選択した基準も、報告書では触れていません。
<調査の内容>
報告書は、JBICがガイドラインに定められた融資審査プロセスを踏んできたか否かについて主に示したものであり、そもそものガイドラインの目的である「プロジェクトによる影響の回避・最小化」がどの程度実現できたのか/できなかったのか、という質的な観点からの検証は不十分と言わざるを得ません。例えば、環境レビューの実施状況について、報告書では環境アセスメント報告書(EIA)の作成状況についての確認をしています。しかし、そこで確認しているのは、「EIA作成の有無」であって、「EIAにおいて適切にプロジェクトの影響が調査され、その適切な回避・緩和策がとられていたのか」、そして「それに対するJBICの環境レビューは適切だったのか」といった内容ではないのです。
このような調査では、ガイドラインがどの程度環境社会影響の回避、緩和に貢献しているのか(いないのか)、貢献していない部分があればそれはどこで、どのような理由なのかもわからず、JBICとして何を課題とし、どの部分をどのように改訂するべきだと考えているのか、わかりません。
私たちは、今までJBICに対し、ガイドラインの実施状況の確認は、世界銀行グループやADB等国際金融機関の政策レビューの内容や水準を十分に踏まえたものにすることについて、要望書もだしてきましたが、今回のJBICの調査報告書は、残念なことに内容・水準共に低いものになってしまいました。
この報告書は、JBICのホームページ
(https://www.jbic.go.jp/japanese/environ/establishment/index.php)よりご覧頂くことができます。