サンロケ多目的ダムプロジェクト プレス・ステイトメント 2001年9月20日
IIB-A 事務局長
Gloria Macapagal-Arroyo大統領は、直接的にしろ、間接的にしろ、悪名高いサンロケ多目的ダム事業による影響を受ける人々の声に耳を傾けなければならない。イトゴン町のさまざまな分野にわたる町内組織の集まりであるItogon Inter-barangay Alliance(IIB-A)は、同プロジェクトに対する反対の意を再度表明したい。
先住民族問題に関する大統領の諮問機関(OPA-IPA)および国家先住民族委員会(NCIP)の代表がEvelyn Dulnuan弁護士をチームリーダーとして行った協議の結果が今年6月に出されたが、その報告は住民の意見をよく表したものである。OPA-IPAとNCIPの報告は、住民の立場を以下のように要約している。 「イトゴン町には、サンロケ多目的ダム事業による直接的あるいは間接的な影響を受け、かつ、同プロジェクトに反対しつづけている先住民族および土着の文化をもつ共同体がある。彼らの反対理由は次のようなものだ。
同報告では、「イトゴン町の住民は、もし、ダムの建設が始まる前に(事業の是非を)問われていたならば、決してこのダム事業を支持しなかっただろうと述べている人々の中に含まれる。」と述べている。
また、同報告書は、「イトゴン町の先住民族および土着の文化をもつ共同体に対する協議は、事業が始まる前には行われていなかった。すでに事業が開始されてから初めて協議が行われ、またその内容は主に、17つの条件や土地の調査・所有権・価格評価・補償に関する問題や懸念についてであった。」と報告している。
さらに、「現在、同事業に賛同していると報告されている人々は、彼らが政府に対して無力であるために、あきらめから、イトゴンの自治体とNPC、その他の政府機関との間で合意した17つの条件のもと、同事業を認めざるをえないと考えたと主張している。」とも報告している。
しかしながら、IIB-Aの同プロジェクトへの反対は、その主張をはるかに超越したものである。つまり、イトゴン議会の主張している17つの条件が遵守されていないという問題に限られたものではないのだ。
2001年9月8日および9日、イトゴン町Fianza Memorial Hallにて開催されたIIB-Aの第4回大会では、サンロケ多目的ダム事業およびアグノ川下流域の集水域管理計画にイトゴン町が含まれることに対し、同組織の反対を再度表明する決議文を採択した。同決議では、IIB-Aが過去6年間、一貫して、サンロケ多目的ダム事業に抗議してきたことに言及。「IIB-Aがダムの完成間近であるにも関わらず、ダム建設に反対しつづけることは適切でない」とする見解を妥当でないとしている。
IIB-Aの反対は以下のような論拠に基づいている。
現在、移転世帯は貯水池内の61世帯のみとされているが、貯水池上流の約2000世帯も移転することになるだろう。アグノ川上流にある別のダムから流出してくる土砂はもはやこの貯水池内での堆積にはとどまらず、アグノ川沿いで起こる自然浸食とともに確実にその上流部にも堆積していくからだ。この土砂はアグノ川とその支流にさらに堆積していき、半永久的に洪水を引き起こすため、イトゴン町のダルピリップ、ティノンダン、ポブレイシオンよりもさらに上流の村々にまで移転世帯がおよぶことになる。こうして、アグノ川は事実上、死の川と化していくのだ。
(この懸念を受けて、)フィリピン電力公社(NPC)は、IIB-Aだけでなく、地元の議会も予測していたとおり、土砂堆積の解決策として、アグノ川下流域における統合集水域管理計画(LAIWMP)を提示してきた。この計画は、NPCおよび町の事業推進派の役人が、土砂堆積の原因と理解されているイトゴンの山々の土壌浸食を防止するために作成したものだ。しかし、アグノ川を河川系として見た場合、土砂堆積はイトゴン内の浸食にのみ起因するものではない。アグノ川のさらに上流域のさまざまなところ、例えば、アンブクラオおよびビンガダム、また、ベンゲット州のProvince山、Buguias山に位置するBaukoの野菜生産地ベルトなどから土砂が流出していると断言できるのだ。したがって、IIB-Aは同計画が土砂堆積の問題を解決するという主張に賛同しない。
また、現在、イトゴン住民に対して、LAIWMPが新しい代替生計手段として宣伝されている点からも同計画を非難したい。実際、LAIWMPのため、イトゴン町は現在、国家統合保護地域システム(NIPAS)の保護地域とされている。これによって、さらに多くの人々が土着の生活形態を失うことになるだろう。NIPAS地域にイトゴン町が含まれるということは、例えば、砂金採取、鉱山採掘、農業、狩猟、森林での採集など、多くの生計手段が禁止される可能性があるということだ。他方で、1995年に制定されたフィリピン鉱山法はIPRA(先住民族権利法)やNIPAS法による制限を受けないため、PhilexやBenguit Corporation、Atok Big Wedge Companyなどのような鉱山関連の大企業は、イトゴンで事業収益をあげ続けることができるかもしれない。
IIB-Aは、アロヨ大統領およびその前任者らが意図してきた開発なるもののツケをフィリピンの国民が払わされるのではないかと懸念している。
フィリピンの全国民がNPCとサンロケパワー社(SRPC)とで取り結んだ電力購買契約(PPA)により、間接的な影響を受けることになるだろう。同契約によれば、たとえSRPCが発電を行わない場合でも、フィリピン政府はNPCを通じ、25年間、少なくとも毎月4億1000万ペソをSRPCに支払うことになっている。仮にダム事業が中止になった場合でも、SRPCは事業経費の返済を受けることになるだろう。NPCが末端利用者にPPAの負債を投げてしまえば、一体誰がその支払いに責任を負うのか?IIB-Aは、ダム建設がこのまま進んだ場合にフィリピン国民にかかってくる社会的・経済的な負担よりも、今、SRPCに返済するだけの方がまだ負担が軽いのではないかと考える。
フィリピン政府の役人、アメリカ合衆国のダム建設請負業者、サンロケパワー社、融資をしている日本の(民間)銀行、国際協力銀行、そして、相変わらず無力である多数派の農民とはうってかわり、金に容易に手が届く地元のエリート権力者らの耳に住民の声がちゃんと届いているのか、今後、さまざまな政府機関との協議を行い、証明していくことが必要とされている。
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