サンロケ多目的ダムプロジェクト →→調査チームの報告書(06.27.2001)をみる フィリピン先住民族委員会の調査チーム 先住民族の事前合意なしと報告
2001年10月10日 今年6月、フィリピン国家先住民族委員会(NCIP)および先住民族に関する大統領の諮問機関(OPAIPA)が共同調査を実施。サンロケ多目的ダムプロジェクトにより土地収用などの影響を受ける先住イバロイ民族の合意が、事前に得られていなかったことを指摘した。これを受け、先住民族権利法(IPRA)に対する同プロジェクトの違法性が改めて問われることになる。
フィリピンの国内法であるIPRAでは、先住民族の地域社会に悪影響を及ぼすプロジェクトに関して、「プロジェクトの影響を受ける先住民族のFree and Prior Informed Consent(FPIC)(自由な選択権をもち、十分な情報を与えられた上での事前の合意)」を得るよう要請している。今回のNCIPとOPAIPAの共同調査では、このFPICの有無が焦点とされ、自治体関係者(先住イバロイ民族の土地があるベンゲット州および同州イトゴン町)や議員、団体など、さまざまな関係者との間で、4日間にわたる断続的な会合がもたれた。
共同調査チームはその調査報告書のなかで、以下のように結論を述べている。
@サンロケ多目的ダムプロジェクトが開始される前、NCIP、また他の政府機関によって、ベンゲット州イトゴン町の影響を受ける先住民族の合意形成がなされていなかった。
A直接の影響を受けるか、あるいは、間接の影響を受けるかにかかわらず、依然として、プロジェクトに反対しつづけている先住民族の人々が影響を被る地域にいる。
Bイトゴン町にある全ての先住民族の地域社会からプロジェクトの継続に対する支持を取りつけることは非常に困難である。
Cダム建設を継続してきた結果、同プロジェクトはイトゴン町の先住民族の間に、さらに多くの問題を生み出し、地域社会の分断を招いてきた。
このように、調査チームの提出した報告書では、FPICが得られていなかったことが明確に指摘されており、プロジェクトがIPRAに違反していることは明らかだ。今後、この報告書を受けて、IPRAへの違法性が問われることになった同プロジェクトが中止に追い込まれる可能性も出てきた。
フィリピン・ルソン島北部で建設が進むサンロケ多目的ダムプロジェクトには、日本の国際協力銀行から約7億ドルの融資が行われている。ダム建設地上流のイトゴン町ダルピリップ村で生活する先住イバロイ民族は、計画が明らかになった当初からダム建設による土砂堆積を懸念し、プロジェクトへの反対を表明してきた。
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