サンロケ多目的ダムプロジェクト
サンロケダムに関する多者間会合(オープン・フォーラム)
報告 (2002.06.22)


  ※6月22日に開催された多者間会合について
→→プレスリリース(2002.06.17)
→→国際協力銀行へ融資凍結を求める要望書(2002.06.25)
→→国際協力銀行への要望書・賛同依頼(2002.07.10)

1.日時・場所・主催

 日時:2002年6月22日(土) 9:0013:00

 場所:サンロケダム建設現場内サンロケパワー社オフィス
    (ルソン島北部、パンガシナン州)

 主催:フィリピン政府

 

2.会合で明らかになった問題点

 (1)フォーラム全体として

  1. これまでの話し合いと何ら変わらず、問題への具体的な対応策は提示されなかった。反対住民にとっても非常に不満の残るフォーラムとなった。また、このフォーラムは当初サンロケダムに伴う社会環境問題について話し合うことを目的としていたにもかかわらず、その半分以上が灌漑事業について議論する場となってしまった。

  2. フォーラムの開催形態に疑問が残る結果となった。フォーラムには、事前登録により賛成派住民(灌漑部門事業の受益者)が50人程出席し、事業の利益を主張。それに対し、反対派住民は12人の代表団のみが出席。この出席者の偏りは明らかに意図的に生み出されたものであり、話し合いはフェアに進められるような状況ではなかった。
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 (2)個別の問題点

  1. フォーラム開催時、サンロケダムの建設により土地や砂金採取などの生計手段を失い、現在、生活の困窮を訴えている下流の人々は、フォーラムの会場内に入れず、ダムの建設現場入口のゲート前で約500人規模のデモを行っていた。彼らの代表団はフォーラムで、「過去3年間に被ってきた損害に対し適切な補償を求める正当な権利があること」、また、「この4年間、生活支援プロジェクトはどれもうまくいっておらず、どの代替の生計手段も以前の生活を補償するものにはなり得ないこと」を訴えた。彼らにとっての唯一の問題解決策が、砂金採取の地域として現在残っている貯水予定地域の確保、つまり、事業の中止しかないことも重ねて主張した。

  2. フォーラムでは灌漑部門の利益が強調されていたが、下流の人々が必要とする灌漑設備について、サンロケダムが唯一の解決手段なのか、その代替案の検討は行われてこなかった。また、「サンロケ多目的ダム」は4つの目的を持っているが、その事業全体を考えたとき、当然終えられているべき説明や話し合いが、灌漑用水路などによって悪影響を受ける人々に十分なされてこなかったことが明らかになった。

  3. 上流のイトゴン町の先住民族も事業開始当初から反対運動を続けてきたことを訴えた。イトゴン町が19991月に提示した17条件については、今年1月10日、町の評議会がその条件の履行状況について評価を行っており、17条の1項目「多様なコンサルテーションが開かれたことは、問題の解決が効果的に行われたということにはならない。」1項目、5項目c)、17項目「環境社会に関する補足調査は、フィリピン環境天然資源省の環境応諾証明書などに反映されることもなく実質的な問題解決の方向へと結びついていない。」など、17条件が依然として満たされていない状況が明らかにされた。

  4. 上流の自治体が事業を快諾していないことから、依然として(1)地方自治体に抵触する可能性があること、また、先住民族の事前合意が欠如していたことから、(2)先住民族権利法に対しても抵触している可能性があることから、住民側は裁判に訴える可能性を示唆した。また、先住民族の人権侵害に関しては、国連の人権委員会に調査を提出することも検討していることを明らかにしている。

  5. 現在、電力供給過剰(40%)の状態にあるフィリピンにおいて、民間セクターによる発電は必要とされていない。また、民間セクターとフィリピン政府との間で結ばれてきた電力購買契約(PPA)は、電力売買調整費用としてフィリピン消費者一人一人の負担となってきた。効率化を促進するはずの発電の民営化は、市民の電力料金を2倍にまで引き上げる結果となっており、フィリピン国民の不満も高まっている。このような背景からも、サンロケダム事業自体の必要性が問われるものであることが明らかにされた。
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3.FoE Japanの見解

 今回のフォーラムでは、現地でこれまでに指摘されてきた問題が依然未解決のままであることが浮き彫りとなったが、事業者は今後、7月末から8月初めに貯水を開始する予定となっている。この4年間、問題の解決がうまく図られてこなかった状況を考えても、このまま貯水が始まり事業が進んでしまえば、現在の状況が改善されない恐れは十分にありえる。このような杜撰な事業に日本政府が融資を出し続けていることに非常に危機感を強めた。日本政府は公的機関である国際協力銀行のサンロケダムへの融資を中止すべきであると再認識させられたフォーラムとなった。

 

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