→→国際協力銀行9月会合用 問題点・要望に戻る
サンロケダム調査報告書
2001.9.17
愛媛大学 栗田
英幸
【スケジュール】
滞在期間:8月22日から9月11日
8月23〜26日 |
バギオ |
打ち合せ/最近の活動動向/CPA会議への参加 |
9月 3 日 |
バギオ |
打ち合せ |
9月 4〜 6日 |
ダルピリップ |
バロコックとタブへ |
9月 7〜 9日 |
パンガシナン下流部 |
カブロアン(SN):ティマワ本拠地/ |
|
|
ラグパン・サイト/サンフェリペ・イースト |
【調査結果】
上流部での調査について
1.上流部ダルピリップでの最近の変化について
○台風フェリア(7月上旬の大規模な台風で上流ダムの放水により記録的な被害を下流部に引き起こした)の被害について
- ダルピリップでは、数人の砂金採取道具が流され、タブの数件の庭と畑が浸水
当初のプロジェクト被害領域決定要素として、アグノ川最大水位とすることが記載されていたが、そうすると、浸水領域を所有するタブの数世帯も交渉対象となるのではないか?
- いくつもの砂防のためのミニダムが、既に何度かの台風によって土砂に埋もれている。また、砂防のための斜面のコンクリート壁も同様
→ ミニダムや壁の崩壊によって一気に土砂が流出すると、その下部の土地が非常に危険
→ NPCやJBICは上流やダム内での土砂堆積を十分に軽減する手段として、砂防システムを大きく評価していたが、そのシステムの信頼性に疑問
- ダムの放水に伴う警報システムは上流部に存在せず、ラジオのみが頼り。非常に危険
2.上流部住民(イトゴンサイド)の合意について
ノルマさんへのインタビュー
補償・・・確かに貰った
理由・・・彼女の家(タユム)がダムで破壊されるから、そのために補償金をくれると
NPCが言ってきたから
ダム合意ととって良いのか?
・・・心外だ。合意ではないし、契約文書にもそのようなことは一言も書いていない
ダムにはどんな補償をもらっても合意しない!
値段・・・90,000ペソ(*2.5円:22万円くらい)
不足だし、砂金採取ができなくなるための補償はなし
他の合意者について
・・・ 既にノルマさんが13人の補償合意者にインタビューしている。
:全ての人がダムに反対
・理由:砂金採取は補償で賄えるものではない重要な生計手段 / 砂金採取への
補償もなし
← NCIP(国家先住民族委員会)の調査によって、インフォームド・コン
セントが無視されているとの報告
ノルマさんからJBICへのメッセージ
私は確かに補償を受け取りましたが、それはダムに合意したことを意味するものではありません。私は補償金をいくら積まれてもダムに賛成するつもりはありません。なぜなら、NPCは私たちに十分な補償を与える能力を持っていませんし、ダムは私たちの生活を破壊することになるからです。ダルピリップに作られたミニダムは作られたばかりだというのに、既に土砂で一杯です。おそらくあと何回かの台風でそれらは破壊され、大量の土砂が下流の家や田畑を覆うでしょう。また、私たちは1990年に大地震を経験しました。山の斜面は崩れ、大量の土砂が川や川原に流れ込みました。そして台風の際のアンブクラオダムの放水とあいまって広大な田畑や樹木が土砂の下に沈み、2度とそれらの土地は利用できなくなったのです。ダムが完成してアグノ川の水位が上がった後に再び大きな地震が来るならば、どんなにか大きな被害となることでしょう。そして、その被害はダムをも破壊し、甚大な被害を下流部にも及ぼすかもしれません。そのようなダムに対して、私たちは合意することができるはずがありません。JBICが、こうした危険なダムに対する融資を中止することを望んでいます。
|
下流部での調査について
3.台風被害とダムとの関連性について
・灌漑用ミニダム(サンバスチャン・ミニダム)の破壊:アンバイオアン川
被害:15haが灌漑できないため収穫できない(10月が収穫シーズン)
対処:NPCは早急に修繕と言っていたが・・・
9月4日にリンガエンから技術者がサンニコラスに来た
・50,000Pのポンプ3台が必要:住民が設置のための作業を行うことが条件
←住民は不満
・つり橋(アンバイオアン川)が破壊
市場と農地とのアクセスが不便
ダムとの関連:ダム建設のため、ミニダムのあるアンバイオアン川へアグノ川からパスを
作っており、水量の多い場合に水を放流している。このため、水位と水流が
これまでにない程のレベルになった。
4.流域住民の問題(バランガイ・カブロアン:サンニコラスにてインタビュー)
★生活手段: 農業(主に稲作)、砂金採取、庭には数本の果樹、漁。
要するにアグノ川に完全に依存した生活スタイル
- 最大の問題は砂金採取の禁止とその補償のないこと
雨季には平均で1000〜2500P/日程度の砂金採取が可能(乾季には300Pくらい)
一部の人は、見つからないように砂金採取
- アグノ川の採石作業により、所によっては15mも深く掘り下げている。このため、水を田畑にくみ上げることが不可能な状況になっている
:以前は2もしくは3度の稲の収穫が可能であったが、現在では1度のみ
- 以上に対する補償は全くなし: 住民は現在および将来の生活に強い不安を持つ
- 当初のNPCとの約束が守られていない
建設のための仕事: 優先権が無視:また、高卒以上のみという基準も大きな阻害要因
植林の仕事 : 全くなし
住民のための灌漑: 未だ用水路を作る気配はない:本当に灌漑が目的なのか疑問
- 将来のダムが、生活のリスクを高め(技術への不信)、砂金採取という生活手段を喪失させる
- 不平を言うオフィスもなし
5.合意形成について(ラグパン)
○ラグパンの状況
- 42世帯:内、3世帯が移転サイトに元々住んでいた人。その他はダム上流部(パンガシナン内)のブランギット集落からの移転者(半数は未だにブランギットに住み、移転拒否)
7/30までに移転するようにNPCが通告
★ 組織化はまだ。これから。しかし、ダムの議論の中でひとつの焦点となっていくことは
間違いないと思う。
ブランギット
- 主用な生活手段は砂金採取:おそらく被害地域の中でも最大の採取可能地域
- 台風フェリアの時期に20g(1g330P・・・6,600P)以上採取
最高採取者は50g:16,500P
- その他の生活手段は、山の果樹や鳥、川の魚、水田
- 低地からのアクセスは困難(1日の険しい山歩きが必要)
○合意形成についてのインタビュー(アンケート10世帯 + 5世帯へのインタビュー)
- 一部の人は補償内容に引かれて合意
- 多くは補償に対してサインしているが合意と受け取っていない:未だに移転およびダムには反対(多くの場合、台風時に家が破壊されたためにしょうがなく移転地域に来た)
- 十分な情報を得ていない/特に砂金採取ができなくなる点について
- サインした人の半分は、契約書が英語であったため、内容を理解できていない
- 合意サインもしくは補償のためのサインについては彼らの意志に反している(1世帯を除いて全ての世帯が反対)
※NPCの人「あなたたちが反対しても、ダム建設は行われる。補償を獲得するために合意する方が得だ」
自分たちの無力感が合意の理由であり、ほとんどの人(一人を抜かして)はダムに反対するとのアンケート結果
6.補償についてのインタビュー
- 補償で支払われているのは移転家屋とキャッシュプロダクトに対してのみ(一部はプロダクトに対して未だなし)
- 水と電気は無料という約束が守られていない(毎月の最低料金:電気140P、水135P)
2ヶ月前(7月)に1ケ月間、水の供給が全くなし
多くの人が、洗濯や水浴びを200m程離れた川で行っている
- 住居:当初の約束では20*24フィート しかし実際には18*14フィート
- 移転補償金15,000Pの内、多くの人が5,000Pのみ受け取る
- 建設作業:ほとんどの世帯が望んでいるが、建設の仕事に従事しているのは2世帯
残りの世帯の男性は、高校を卒業していないため労働者条件にならず
数人は、条件を満たしていても仕事にありつけず
- 仕事は3ヶ月単位での契約労働者 205P+時間外労働80P
- 生活手段創出プロジェクトが未だになし(9/7にNPC職員が来て、豚や鳥の飼育やきのこ栽培のプロジェクトについて簡単な説明:実施はこれから)
? 市場へのアクセスが悪すぎる ? 生活衛生上での問題(得に家の質と虫との関係)
- 2haの土地については、誰も知らない
- 本当に移転地域は5haもあるのか? 加えて、一部は谷になっていて利用不可能
○移転地域での生活の問題点
- 砂金採取が禁止になること
- 補償約束の反故
- 交通の便が悪い
- 生活手段がない(得に、現金収入手段がないと、水や電気も止められるかも)
→→国際協力銀行9月会合用 問題点・要望に戻る