予備スタディー:他機関の環境ガイドライン分析
海外民間投資公社 (OPIC) 1.特徴
OPICは独自の環境ハンドブック(1999年4月)に加えて、世界銀行などの国際機関の環境基準を導入している。また、その目的の中でプロジェクトにおける人権への配慮を盛り込んでいる。特に参加や情報公開においては、スクリーニングでカテゴリーAに分類されるプロジェクトに関しては支援決定の60日前までにプロジェクトの概要をホームページで公開し、EIAを公開してパブリックコメントを受け付けること、としている。 また、カテゴリーAに分類されるプロジェクトに関しては、最初の3年間に一度は実地調査を伴うモニタリングを奨励し、ガイドラインの遵守に関する独立第三者機関による監査を義務づけている。さらに、ガイドラインが遵守されていないことが明らかになった場合、改善のために事業者と主に作業を行うが、改善不可能な問題に関しては、OPICは保険については契約終結、融資については早期の支払やその他の可能な融資者による賠償を要求するなど、ECAの中では際立って高い水準の社会環境配慮を行っている。 OPICが支援を行わない禁止カテゴリーも明らかにしている。また、ハンドブックに記載されてはいないが、OPICは原子力関連プロジェクトへの融資は行っていない。気候変動への取り組みとしては、CO2排出を減らす小規模プロジェクトへの補助や再生可能エネルギーへの補助を増加させていくこととし、毎年、支援を提供した電力セクタープロジェクトからの温室効果ガス排出に関するレポートを提出している。また、毎年次報告書とあわせて環境報告書を作成し議会や市民に報告を行っている。環境報告書はホームページ上でも公開している。
2.環境政策の目的
OPICは「不適切なあるいは環境や健康、安全性に危険を及ぼす」ようなプロジェクトへのサポートを行わない。OPICの環境ハンドブックは、OPICの環境ガイドラインやアセスメント、モニタリングの手続きを、取引先や感心のある市民に知らせるためのものである。OPICは、今後のOPICのプロジェクトだけでなく、現在進められているプロジェクトもこのガイドラインを適用する。 OPICはその目的の中で、支援するプロジェクトが環境や労働者の権利に関する基準と矛盾のないことを確保することとし、プログラムを実施する上で各国の人権法や人権の尊重に関する政府や議会の指示を考慮する、と謳っている。
3.現在定められている環境政策 1)環境ハンドブックEnvironmental Handbook(99年4月) ハンドブックにはOPICの使命、ハンドブックの目的のほか、環境スクリーニング、アセスメント、パブリック・コンサルテーション及び情報公開、環境基準、諸条件、モニタリングと遵守など適応される政策やガイドライン、環境配慮手続きが金融商品などにあわせて事細かに記載されている。
2)プロジェクトの環境影響を判断するために、世界銀行のような国際機関が定めるガイドラインや基準を適用
3)相手国の基準 世界銀行や上記のガイドラインに加えて、すべてのプロジェクトは相手国の環境規定を満たしていなければならない。
4)国際条約との関連 気候変動政策に関して「気候変動枠組み条約」、保護すべき湿地帯に関連して「ラムサール条約」、オゾン層破壊物質の取り扱いに関して「モントリオール議定書」を参照することとしている。
4.環境アセスメント
環境アセスメント(EA)は、OPICがプロジェクトへの支援をしないという判断やプロジェクトへの環境や環境に関わる社会的影響を評価し、OPIC支援の条件としてプロジェクトの負の影響の防止、最小化、緩和、修正、補償を行うことによってプロジェクト改善の方法を明らかにしていくための手続きである。
世界銀行グループによって定義されているように、環境アセスメントはなるべく早くプロジェクトの完成と評価にむけて取りうる対策を明らかにし、政策、戦略、プログラム、プロジェクトの環境側面における管理を行うプロセスである。このプロセスには起こりうる環境への負の影響を把握し、その影響と代替案の影響との比較、負の影響を回避、最少化、緩和、補償するための計画や実施の方法や計画、共同の管理・モニタリング手法の計画と実施が含まれる。OPICは望ましい環境影響評価書(EIA)の項目を示している(表―1)。環境アセスメントでは、自然環境と社会環境の両方の側面を統合して考慮する。
規定により、OPICはプロジェクトへの保険や融資の提供を行うかどうかを判断する上で、すべてのプロジェクトにある程度のEAを要求する。この要求はOPICの支援による投資金融や融資案件によるサブプロジェクトにも適用される。OPICは環境アセスメントが完了し、環境や健康、安全性への影響が受け入れられる範囲のものであることを判断するまで、最終的なプロジェクトへのコミットメントを提供することはできない。
OPICは申請者にEAの準備過程においてアドバイスを行うことができる。また、OPICは中小企業や初めての申請者に対してアセスメントを準備する上での技術的指導を行うことができる。
EAやその他の環境報告書は、申請プロセスのできるだけ早い時点でOPICに提出されなければならない。これによってOPICはEAが完了するまでに追加的に必要な環境情報を把握することができる。環境情報の評価の過程において、OPICは申請者との合意の下、他の政府機関や民間支援機関、保険機関と協力する。こうした協力は、申請者にとっても評価プロセスの促進し、遅れや他の融資機関や保健機関の要望との必要のない重複をさけるという意味で有効である。
カテゴリーAプロジェクトに関してはパブリックコメントの期間を設け、綿密に効果的に資料の審査を行う(「住民参加」「情報公開」参照)。OPICが審査中のプロジェクトでいっぱいの場合、外部の専門家に時宜な評価プロセスの完了を委託する。この時、評価の補助をするコンサルタントは企業機密を遵守する旨の署名を求められる。
すべてのプロジェクトにおいて、元のEAの準備費用は申請者、スポンサーあるいは海外の企業が賄う。OPICが元のプロジェクトの評価や環境評価の一環としての現地調査を行うために、独立したコンサルタントに投資者によって提出されたEA資料の評価のすべてや一部を依頼する場合、申請者は協力費を支払わなければならない。こうした支払対象の除外となるのは、OPICの定義において中小企業とみなされる申請者である。
OPICはプロジェクトのEAの要求を満たすために、表―2の1つまたはそれ以上の資料を要求されることになる。
4-1. スクリーニング 環境影響の度合いやプロジェクトの性質により、カテゴリーAからFに区分する。 スクリーニングは、有害な環境影響を及ぼす可能性のあるプロジェクトにOPICからの支援を行わないように、なるべく早い段階で判断するためのプロセス。プロジェクトが自然生息地を破壊するような大型ダムや、熱帯の原生林やその他保護すべき環境的に脆弱な地域でのインフラ整備や天然資源の採取などの禁止カテゴリーに属するものであれば、OPICは申請者にこれ以上申請書の環境審査を行なう必要がないことを伝える。
カテゴリーA: 環境面に重大な悪影響を及ぼす可能性のあるプロジェクト(不可逆的なもの。生態システムへの影響が重大なもの。非自発的な再定住を強いるものなど)。産業や立地などによって、カテゴリーAに含まれるべき包括的なリスト(表―3)が作成されている。
カテゴリーB: 環境面における潜在的な影響がカテゴリーAのプロジェクトよりも小さいと考えられるプロジェクト。不可逆的な影響があった場合、より立地特定的で、カテゴリーAのプロジェクトよりも緩和策が考案しやすいものを指す。カテゴリーA, B, D, Eのいずれにも属さないものがカテゴリーBと認識される。農業、電力供給、エレクトロニクス、食品加工、軽工業、通信(通信塔の建設等を含む新設の電話線設置などのインフラ整備や通信設備の製造など)、医療、観光など。
カテゴリーC: 環境面における潜在的な影響が微小かもしくは重大な環境影響がないと考えられるプロジェクト。銀行の支店開設やソフトウエアの開発、通信(サービスの民営化などインフラ整備を必要としないもの)など。
カテゴリーD: カテゴリーAおよびBのプロジェクトや事業(サブプロジェクト)を策定するために投資や金融サービスを提供するための金融仲介(financial intermediaries, FIs)。
カテゴリーE: 小規模のビジネスベンチャーで、環境面で恩恵を与えるようなプロジェクト。環境NGOによるプロジェクトやエコツーリズムプロジェクトなど。
カテゴリーF(表―4): 融資禁止プロジェクト。環境や健康、安全性に「(特に)主要な、あるいは非合理的な」悪影響を与えると考えられるプロジェクト。自然生息地を破壊するような大型ダムや、熱帯の原生林、国立公園、世界遺産などの保護指定地域やその他国際的に保護すべき地域でのインフラ整備や天然資源の採取など。
4−2.カテゴリー毎に必要とされるアセスメント手続き カテゴリーA: すべてのカテゴリーAプロジェクトは完全な環境影響評価準備書(EIA)か初期環境監査書(IEAU)、及び環境管理・モニタリング計画書(EMMP)か環境改善計画書(ENR)が必要。申請者は、環境関連資料とあわせて適応する相手国の基準の概要か写しを提出しなければならない。また、相手国政府の承認や確認証書が必要となる。 OPICは法令の定めるところにより、適切な相手国政府の担当者に、世界銀行や米国でプロジェクトに適応されているすべてのガイドラインについて通知する。
カテゴリーB:
カテゴリーC: カテゴリーCに区分されたプロジェクトについては、通常ほとんど環境アセスメントを行なう必要はない。
カテゴリーD: OPICはサブプロジェクトにおける金融仲介の関与の性質と大きさに応じて、どの程度の環境レビューを行うかを判断する。カテゴリーBのサブプロジェクトのうち、投資額が500万USドル以下のものに関しては、簡易レビューをすることで、アセスメントのかわりとすることができる。サブプロジェクトに追加的な投資を行なう場合は追加的な審査を行なう。(カテゴリーDに関するアセスメント手続きは、「投資ファンドポリシー」に別途定められている。)
カテゴリーE: 環境面での改善を促進するプロジェクトのため、アセスメントは必要とされないが、ある一定のプロジェクトに関しては、立地の重要性から住民との協議および公開のプロセスを必要とする場合もある。このカテゴリーのプロジェクトでは、自然生態系の保護や生物多様性の保護、管理プロセスにおける地元先住民族やNGOの参加を促進することが求められている。
カテゴリーF: カテゴリーFに区分されるプロジェクトについては、OPICは融資を行わない(したがって、アセスメントは必要とされない)。
*OPICは申請者による環境管理及びモニタリング計画(EMMP)や環境改善計画(ENR)の提出に加えて、プロジェクトが不当で重大な環境や健康への危険をもたらさないようにするために、追加的な緩和策の提出を求めることがある。
4-3. 環境アセスメントレビュー
OPICの環境レビューの基本的な目的は、「不適切なあるいは環境や健康、安全性に危険を及ぼす」ようなプロジェクトへのサポートを行わないというOPICの法的な責任において、プロジェクトの適性を判断するためのもの。ここでいう「健康と安全」は、プロジェクトにおける雇用者とプロジェクトの近隣で生活や仕事に影響を受ける市民の双方の「健康と安全」を意味する。
OPICのプログラムの運営は、環境アセスメント調査や熱帯林、生物多様性、絶滅の危機に瀕する種に関する海外支援法(the Foreign Assistance Act, FAA)の117,118と119項と矛盾のないこととする、とある。
1)プロジェクト支援をしない場合 禁止カテゴリーにあるプロジェクトに加えて、プロジェクトの環境的側面においてOPICが支援を行わない場合がある。
● 申請者がOPICに、プロジェクトの環境面における適正を判断するための適切な審査を行うために必要な、カテゴリーAプロジェクトの環境影響調査書(EIA)や初期環境監査書(IEAU)やカテゴリーBに関する適切な情報の提供を怠った場合
● プロジェクトがOPICの事前あるいは事後の判断によって、以下の禁止事項に触れるような影響をもたらす場合
- 国立公園や同様の保護地区あるいは熱帯林の重大な破壊 - 絶滅の危機に瀕する種の居住地区の破壊や大幅な荒廃 - その他の「不適切なあるいは多大な環境や健康、安全性への危険性」を伴うもの
2)累積的な、関連した影響のアセスメント OPICはプロジェクトの申請を考慮する上で、部分的に関与しているプロジェクトであってもその全体的な環境影響も考慮に入れる。OPICの基準を満たさない累積的な関連した影響を引き起こすようなプロジェクトへの支援も行わない。
3)最適なガイドラインの適用 OPICは潜在的な顧客が、適切なガイドラインに沿った技術やプロセスを選択するように規定してはいない。しかし、政府や産業、NGOによって採択された最適な基準は、代替案や実現可能性について評価する上で、OPICや顧客に適切な示唆を与える。OPICは、特にOPICの環境指針において重要な、国際的に最適なセクターごとのガイドラインを適用している。
こうした試みにおいて、OPICは環境アセスメントプロセスとして、申請者が米国の国内外の環境や職業上の健康や安全についての法律や基準を遵守しているかどうかの記録を考慮する。申請者が基準を遵守していないことがわかっても、支援をしない理由にはならないが、こうした情報はEAプロセスや契約条件、モニタリングにおいて、特に環境や職業上の健康や安全について理解するのに役立つ。
5.住民参加
OPICは関心のある、十分な情報を持った市民、特に直接的な影響を受ける相手国の市民の環境アセスメントプロセスへの参加は、大変意味のあるものだと認識している。OPICはIFCの「プロセスの早期における、環境や関連する社会問題への注意の喚起や意味のあるステイホルダーとの協議は、プロジェクト実施における追加的費用の削減と遅滞の回避や、プロジェクトデザインに合わない手法でのプロジェクトへの条件付けを減らすことを促す」との認識に合意する。
OPICはプロジェクトへの最終的なコミットメントを行う前に、一般市民がすべてのカテゴリーAプロジェクトへの意見を求める機会を提供する。最終的なコミットメントは、それぞれプロジェクトへの保険や融資の契約書や融資契約の形で行われる。また、OPICはすべての申請者(投資ファンドのマネージャーを含む)、特にカテゴリーAの申請者に、EIAのスコーピング、準備、完成及びその他の環境調査において、すべての地域のステイクホルダーと意味のある協議を行うことを強く奨励している。これは、必然的に地域で影響を受ける人々の言語、形式、媒体で環境情報を提供することを意味する。
OPICは参加と情報公開に関する総合的な政策方針について、IFCが掲げる「パブリックコンサルテーション及び情報公開」政策を模範としている。
6.情報公開
カテゴリーAプロジェクトの環境影響評価書もしくは初期環境監査書は、一般に公開される。コピーの時間と費用を節約するために、申請者はEIAを読み込み専用のディスクで提供することが奨励されている。
EIA 及びIEAUは申請者の合意の下、一般に公開される。申請者がEIA 及びIEAUの公開に合意しなければ、OPICは申請書の審査を進めることができない。
監査や管理、改善計画、モニタリング報告書を含むプロジェクトに関する特定の情報を提供する際、申請者はどの情報がどれなのかを特定し、特に相手国内で、どのような形式ででも公開しなければならない。公開資料として認識される、あるいは情報公開法の元で間違いなく公開される追加的な情報については、特定の要望に応じてOPICの責任で対応する。企業機密に関する情報は法の下で機密扱いとされる。
民間投資家による計画や提案は微妙な企業情報を含んでいることがある。OPICが「情報公開法(Freedom of Information Act, FOIA)に基づいた情報公開を求めるとき、この要求は国内法における情報公開の対象とならない企業機密に係る情報を除いたものとなる。
● ホームページ上での住民参加と情報公開: OPICは、カテゴリーAプロジェクトの内容や場所のリスト(例えば「ガス発電所、トルコ」というように。ただし、申請者の名前やスポンサーは公開しない。)をホームページ上で公開する。企業機密に関する情報は公開されない。リストは新規の申請書を受理した時に更新され、プロジェクトへのコメントは申請の過程で考慮される。追加的なプロジェクト情報は、プロジェクトの期間を通していつでもOPICで受け付ける。
●コメントの受付: 最終的なコミットメントがなされる前に、市民にすべてのカテゴリーAプロジェクトへのコメントの機会を与える。OPICはすべてのパブリックコメントを考慮し、環境アセスメントと意思決定のプロセスに反映する。OPICは可能な限り書面での詳細なパブリックコメントへの返答を試みる。EIAへのパブリックコメントを求める目的は、潜在的なプロジェクトによる住民への影響について明らかにすることである。すべてのステイクホルダー内でコミュニケーションを最大化するために、OPICは申請者とすべてのコメントを共有する。パブリックコメントの要求は、投資者が求めている支援の内容によって異なる:
●プロジェクトファイナンスと政治リスク保険 政治リスク保険におけるカテゴリーAプロジェクトへの最終決定を行う前に、OPICはEIAあるいはIEAUを市民に公開し60日間のコメント期間を設ける。OPICは公開可能なEIA あるいはIEAUを受け取った後、ホームページ及びメーリングリストでプロジェクトについて知らせ、60日のコメント期間を設ける。また、OPICは可能な限り、スポンサーが相手国でEIAあるいはIEAUを公開するように奨励する。60日のコメント期間は、民間セクターのためのプロジェクトファイナンスや政治リスク保険行っている多国間機関が採用しているコメント期間を元に設定している。 OPICのEIAの公開はOPICのプロジェクトへの承認を意味するものではない。EIAへの評価における市民の意見を最大限に生かすために、EIAが批判的な課題を把握し解決するように適切に完成されている限りにおいて、OPICはEIAを外部の要因によって公開しないで保留しておくことはない。追加の調査が必要であっても、コメントの提出があってもなくても、60日のコメント期間の完了はOPIC内部の環境アセスメントの審査を省略することにはならない。
●金融仲介(Financial Intermediaries, FIs) OPICの投資ファンド保証やオンレンディング機関による金融仲介の投資に関して、OPICはカテゴリーAの投資承認の要請があれば、速やかに投資の種類や国についての情報をホームページやメーリングリストで公開する。 競争原理のもとにある投資金融のポートフォリオにおいては、金融仲介のEIAやIEAUは通常のパブリックコメント期間の規定より制限された取り扱いになる。つまり、一部の金融仲介におけるカテゴリーAのサブプロジェクトのEIAやIEAUは、パブリックコメントのために公開されない。
7.モニタリング・監査 OPICは保険や金融の期間を通じて、プロジェクトが環境についての説明や実施を遵守しているかを確認する権利を有する。
1)モニタリング モニタリングは、投資の概要と特定のケースにおけるプロジェクトの環境パフォーマンス(排出、流出、廃棄物の排出)や環境影響(周囲の状況や生物資源等)のモニタリングから明らかにされた生データによる、自己申告の形式を取る。カテゴリーAのプロジェクトに関しては、事業者は毎年、自己申告に基づいたモニタリングレポートを提出しなければならない。これらの年次報告は事業者によって行われた、排出・流出基準、周囲の大気・水質基準の定期検査の結果を含んでいなければならない。モニタリングは、相手国政府や共同出資者、独立監査機関によって集められた基準の遵守に関する情報を含む、第三者機関による評価の形式が取られることもある。
OPICは定期的に、環境や米国経済や相手国での開発効果も含んだ環境に係る社会影響をモニタリングするために、OPICのスタッフやあるいはコンサルタントも係って、プロジェクトの現地調査によるモニタリングを行う。OPICはすべてのカテゴリーAプロジェクトで、少なくとも最初の3年に一度(プロジェクトの環境の微妙さによってはより頻繁に)は、実地調査を含めたモニタリングの実施に努めている。カテゴリーB,D,Eプロジェクトは適宜、必要に応じてモニタリングを行う。
2)ガイドラインの遵守に関する監査 OPICはプロジェクトスポンサーにすべてのカテゴリーAプロジェクトには独立した第三者機関による監査の実施を求めている。こうした監査は、プロジェクトの建設あるいは運営が始まった後に実施される。監査はプロジェクトがOPICのすべての環境・社会条件(や基本的な記述)を遵守しているかどうかを評価するために行なわれる。すべてのカテゴリーAプロジェクトは、通常少なくとも最初の三年に一度は独立した第三者機関による監査が行わなければならない。また、スポンサーはOPICにOPICの契約条件と一致していることを示す証書を提出しなければならない。OPICは、すべての遵守についての監査をレビューする権利を持っている。
カテゴリーAプロジェクトにおいて、事業者が契約上で求められている自己申告による年次報告の期限内の提出を怠った場合や、モニタリングの実地調査やその他の情報が追加の独立監査の必要性を示唆した場合、追加的な独立監査の実施が要求される。
監査における企業機密に係る情報は、法の定めるところにより機密扱いとされる。
3)遵守していない場合 資料が不正確な場合や環境手続きが遵守されていない場合は、OPICの保険・融資契約は不履行であるとみなされることもある。問題点の改善を試み解決する上で、深刻で可逆的な環境影響や事業者の責任性や適切な努力を考慮して、OPICは改善可能な問題と不可能な問題に分ける。改善可能な問題点について、OPICは改善可能な計画を策定するために事業者と一緒に作業する。改善不可能な問題に関しては、OPICは保険については契約終結、融資については早期の支払やその他の可能な融資者による賠償を要求する。 金融仲介の一部として株式投資が含まれている場合、金融仲介の剥奪を要求されることになる。さらに、契約上の報告要請が満たされていない場合は契約不履行にすることができる。すべてのケースにおいて、OPICは他の融資者や保険機関の要望を考慮し、状況の公正な解決に向けて投資者や出資者と協力して作業を行うことを求める。
8.実施責任
9.政策遵守の確保
OPICではプロジェクトが適切な環境政策や手続きを遵守して進められることを確保するために、批判的な抗議や申請者とスポンサーの間の合意事項は、契約実行の前提条件、融資実行の条件、慣用としてプロジェクト関連資料の中に含まれる。これは融資関連契約と統合されており、手続きの遵守が行なわれていない場合は契約不履行という方法が取れるため、政策、手続きの遵守を確保する一つの方法となっている。
●OPICの年次報告 1998年から、OPICは議会や市民に、内部政策や国内、国際の環境政策、法律、条約、合意の実行及び遵守についての年次報告を行っている。企業機密に関する情報はこの報告書の中に含まれない。
10. 特殊形態ローンに関する規定
1)投資ファンドポリシー 投資ファンドはOPICが支援している金融仲介(FI)の一つ。これまで、OPICのカテゴリ−Aプロジェクトのほとんどは、新規プロジェクトではなく、拡張や既存のプロジェクトの取得であった。すべてのカテゴリーAの投資ファンドプロジェクトには、完全な環境影響評価と監査が求められる。さらに、ファンドが特定のプロジェクトではなく企業への投資として行われる場合、既にアセスメントが実施されている特定のプロジェクトの投資のみに使われるよう、その範囲は限定されなければならない。
カテゴリーA以外で500万USドル以上のファンドコミットメントに関するポートフォリオ投資には、このハンドブックに書かれた手続きに合ったスクリーニング、アセスメントが求められる。
●環境に影響が少ないの小規模プロジェクト 数日のうちに投資の決定を行わなければならないような場合(例えば入札の幹事など)、OPICは「環境に影響の少ない小規模プロジェクト(NSSP)」のためのプログラムを策定した。この政策では、カテゴリーA以外で500万US ドル以下のファンドコミットメントに関するポートフォリオ投資は、下記の条件の下で正式な環境許可を受け取る前にファンドの投資が行われる。
・ファンドは歳出のレビューの方法を明らかにしなければならない i. クラス1−
プロジェクトは適切なもので、「環境に影響の少ない小規模プロジェクト」にこれ以上の条件が課されることはない。
上記のようなレビューに続けて、カテゴリーA以外の投資で、最初に世界銀行のガイドラインに適応していない500万USドル以上のファンドコミットメント(及び「環境に影響の少ない小規模プロジェクト」のクラス1と2の継続投資)は、以下の条件の下で認可されなければならない:
・詳細な時期を規定した改善計画を策定し、;
OPICはファンドが強制力をもって実施するように要請し、承認された改善計画が遵守されない場合は撤退する。撤退は流動性と市場の拘束、信用の責任などを考慮して、速やかに行われなければならない。
2)民営化 OPICは、既存の施設の民営化に係るプロジェクトで、継続的に重大な環境影響を及ぼすプロジェクトに関して、スクリーニングと環境アセスメント、環境管理基準を適用する。例えば、大型インフラ整備プロジェクトは、建設中にカテゴリーAに値する環境影響があるが、運営する段になるとそれほど大きな環境影響を与えない。こうした施設の民営化を支援するプロジェクトはカテゴリーBに分類される。しかし、運営において継続的で破壊的な影響が予測される場合は、民営化のプロジェクトであってもカテゴリーAに分類される。
民営化プロジェクトへの環境アセスメントや環境管理にあたって、OPICの支援が行われた後もその目的を達成するために、OPICは世界銀行やその他の適切な基準を採用している。民営化に伴う新しい施設の設置などは、新規事業と同じ適切な指針や基準を満たしていなければならない。既存の施設が世界銀行やその他の適切なガイドラインや新規事業に適応される基準を下回っている場合、約3年以内に施設は適切な基準に見合うように改善されなければならない。例えば、発電所の民営化については、世界銀行の地熱発電所のリハビリテーション・ガイドラインに従う。環境アセスメントのプロセス(IEAUやEIAそして/あるいはその他の資料)は、プロジェクトが時宜を得た適切な基準に適応しているかどうかによって判断されることになる。
3)様々な大型事業への投資 事業者がOPICに通常の環境アセスメントにおいて環境影響のある既存の様々な事業への保険や融資を依頼する場合、OPICは環境影響アセスメントが行われている特定のプロジェクトに限ってその支援が使われるように、投資者に支援の範囲を限定することを要求する。
4)ビッドボンド OPICは競争入札で行われる新規プロジェクトや民営化プロジェクトと関連したビッドボンドの保証を依頼されることがある。ビッドボンドのプロセスは、通常短期取り引きで長くて数週間から数ヶ月であり、普通この間にプロジェクトや現場の環境情報について触れることはない。入札に残った場合にのみ、環境情報の入手が可能となる。入札に残らなければ、OPICのビッドボンドへのコミットメントはプロジェクトへのサポートの確約とはならない。
入札段階で環境情報が欠落している場合、OPICはビッドボンドをカテゴリーCプロジェクトとして扱う。環境情報によってプロジェクトが禁止カテゴリーに入るものであることがわかれば、OPICは入札の支援を行わない。
もし入札に残らなければ、入札結果と共にOPICのプロジェクトへの関与は終了することになる。入札に残った事業者が、続いてプロジェクトの投資への保険や融資についてOPICの支援を求める場合、OPICはその申請書を別のプロジェクトとして扱う。
OPICのビッドボンドの取り扱いは、関連する米輸出入銀行の通常180日以内の取り引きへの支払不履行のリスクに対応する、短期保険の政策と一致するものである。
11. 気候変動と再生可能エネルギー対策 1997年12月の地球温暖化防止京都会議では、先進国による温室効果ガスの排出削減目標が合意された。しかし、アメリカ政府が効果的な温室効果ガス削減に向けての国際な努力に、適切な途上国の参加を促すべきであると認識していることは重要なポイントである。OPICはこの政策と以下のメカニズムを支援する。
●共同実施
●気候変動報告
表―1:望ましいEIAの項目と形式
I. 概要
II. 政策、法律、管理の枠組み
III. プロジェクトによって影響を受ける地域についての基本的な情報 1.国立公園やその他の保護地区への近接 E. 人間 1.プロジェクト地域の居住・労働人口の分布 F. プロジェクト地域での環境の質 b.粒子 c.窒素酸化物 d.一酸化炭素 e.浮遊毒素 b.表流水(河川、小川、湖) c.地下水 4.以前あるいは現在の汚染状況も含めた土壌の状態 G. 建築学的、歴史的あるいは文化的資源 IV. 潜在的な(緩和できない)環境、健康、安全性への影響 A. 浮遊、液状、固形廃棄物や予測される緩和できない環境影響の発生源及び量
V. 提案されている環境保護や緩和策(代替案や選択された手法の正当化についての緻密な議論を含む) A.廃棄物最少化のための手法
VI. 予測される基本的な環境影響(緩和後) A.物理的な影響(地形、地下水・表流水の供給、土壌保全)
VII. 付録 A.環境当局からの許可証の発行・係争中
●環境影響評価書(Environmental Impact Assessment, EIA): 環境影響評価書は、プロジェクトの自然環境へのさまざまな影響や人間環境における生態学的な影響についての包括的なアセスメント。EIAには、事業が行われる前の状態についての詳細な記述や環境影響が予測されるすべてのプロジェクトに関する活動、プロジェクトの基本的な影響、代替的な緩和措置の考慮が含まれる。 EIAの項目は産業別、地域別、プロジェクト特有の要件によって異なるが、基本となるEIAの形式は表―1に示す。顧客からの要請があればEIAの項目に関する指導も行う。
●環境管理・モニタリング計画書(Environmental Management and Monitoring Plan, EMMP): 環境行動計画(EAP)とも呼ばれる。プロジェクト申請者またはスポンサーが、予測される環境、健康、安全面での負の影響を緩和するために、技術や管理の側面で遂行すべき詳細な行動計画。プロジェクトのモニタリングの段階における具体的な技術や方法論についても言及されている(基本となるEMMPの形式は表―5参照)。 ISO 14000環境管理システムの実施はプロジェクトに特化したEMMPの代用とはならない。
●大規模災害評価書(Major Hazard Assessment, MHA): 産業設備の運営における大災害などのリスクを認識し、評価するためのEAを特別に編集したもの。MHAが必要とされるプロジェクトは、できればEIAの一部としてMHAの完了を要望するが、遅くともプロジェクト運営開始までには完成していなければならない。 MHAが必要とされる設備の一覧は、世界銀行マニュアルの付録B、「産業の危険性評価の手法、テクニカルペーパーNo. 55」に示されている。MHAの項目や形式はIFCのプロジェクトの環境・社会評価の手続き、ガイダンスノートEの「特定プロジェクトの大規模災害評価の概要」にある。
●初期環境監査書(Initial Environmental Audit, IEAU): 既存の産業設備や以前に産業活動が行われていた地域の取得に関する投資の場合、IEAUの提出が求められる。IEAUは設備や地域で将来的に影響を及ぼしうる、既存の負の環境、健康、安全性について認識するためのものである。ISOの環境監査の基準は代用にはならないが、OPICのIEAUの要求に適応する監査の手法として有効な添付資料となる。
●環境改善計画書(Environmental Remediation Plan, ENR): プロジェクト立地における環境面での負の影響を改善するための計画。申請者はENRとEMMP、監査で挙げられた課題を解決するための計画を提出しなければならない。
*EMMP, IEAU及びENRはEIAの一部に含まれることになる。他の融資機関を満足させるために準備されたその他の資料も、OPICが評価を完了し本質的な課題を解決するための資料としてOPICに提出される。
●環境影響報告書(Environmental Impact Statement, EIS): 法令とイグゼクティブ・オーダー12114により、「どの国の管轄下でもない世界の共有地(たとえば海洋や南極大陸など)の環境に重大な影響を与える」プロジェクトにはEISを提出しなければならない。 EISには(1)プロジェクトの目的と必要性、(2)プロジェクトによって影響を受ける世界の共有地の環境についての適切な記述、(3)プロジェクトによる世界の共有地への環境への影響の分析、(4)プロジェクトを実施する上での適切な代替的意義、が含まれていなければならない。
表―3:カテゴリーAに分類されるプロジェクトリスト;
I. 産業分類 A. 大型産業プラント 2.危険な毒性のある化学物質やその他の物質の製造と輸送 H. 交通網の整備 2.鉄道 3.空港(滑走路が2,100m以上のもの) 4.大型港湾開発 5.1,350トン以上の大型船が通行可能な内陸の水路、港 J. 石油・ガスパイプライン K. 毒性のある危険な廃棄物処理場 2.化学物質の処理 M. ダムや貯水池の建設や大幅な拡張工事で、禁止カテゴリーに入らないもの N. 紙・パルプの製造 O. 鉱山 P. 大陸棚での石油・ガス生産 Q. 主な石油や石油化学物質、化学物質の貯蔵 R. 森林/大規模伐採 S. 大規模汚水処理施設 T. 家庭固型廃棄物の処理施設 U. 大規模観光開発 V. 大規模送電設備 W. 大規模干拓 X. 大規模未開墾地の開発や生産性の向上を含む農業 Y. 人々に重大な影響を及ぼす可能性があったり、深刻な社会経済影響が懸念されるすべ てのプロジェクト Z. 禁止カテゴリーには属さないが、以下のような地域への環境影響を考える上で国家的・地域的に非常に影響を受けやすい地域やそのすぐ近くでのプロジェクト。 2.非常に重要な歴史的建築物のある地域 3.侵食や砂漠化が進みつつある地域 4.温帯林、北方林 5.珊瑚礁 6.マングローブ林 7.国で指定されている海岸地域 8.保護地区での管理資源、IUCNの保護地区管理カテゴリーに属する保護されている景観(これらのプロジェクトは、IUCNの管理目的に合わせてIUCNの定める原則に則って実施されなければならない)
表―4:禁止カテゴリー;
1.熱帯原生林でのインフラ整備及び採取プロジェクト。採取プロジェクトとは石油、ガス、天然資源、蒸気/地熱、木材などの表面資源開発プロジェクトを含む。インフラ整備は道路、パイプライン、場合によっては人々へのアクセスを可能にするための送電線を含む。
*ここでいう原生林とは、過去60年から80年の間、人間によって基本的に手を加えられていない比較的完全な森林のことをいう。生態系は成熟した木々の豊かさによって成り立っている。こうした森への人々の影響は伝統的な狩猟や漁業、森林作物の栽培など、非常に小さく、場合によっては影響力の小さい移動式農業などで非常に限られたものである。
2.「大型ダム」建設に係るプロジェクトで、重大な取り戻しがたい以下のような影響をもたらすもの;(A)ダムの上流や下流での自然生態系を分断する、(B)自然な水力発電に置き換えることができる、(C)広範な土地を浸水してしまう、(D)生物多様性への影響、(E)多くの居住者を移住させる(5千人あるいはそれ以上)、(F)地域の居住者の生計手段への影響
3.オゾン層破壊物質(ODS)の商業製造や生産、国際的な合意によってその生産や使用が禁止あるいは中止される予定の有機廃棄物(POPs)の継続的な使用に係るプロジェクト。これらの物質、化学物質のリストはOPICの要請に応じて提出されなければならない。ODSリストは改定され米国の実施基準としてモントリオール議定書に定められている。使用が禁止あるいは中止される予定のPOPs禁止リストにあがっている12の物質は、国際的に法的拘束力のある合意として2000年までの合意に向けて現在交渉が進められている。
4.5千人あるいはそれ以上の移住を伴うプロジェクト
5.世界遺産(世界遺産会議のメンバーによって、国際的に厳格に保護する必要があると認識されている環境的に非常に価値のある地域)として登録されている地域内あるいは地域に影響を及ぼすプロジェクト
6.米国の国立公園や保護地域内、あるいは地域に影響を及ぼすプロジェクト
7.IUCN(the International Union for the Conservation of Nature)によって定義されている保護地区、カテゴリーI, II, III、IV(厳格な自然保護地区/自然地域及び国立公園;自然の遺跡や移住地/種の管理地区)内あるいは地域に影響を及ぼす採取及びインフラ整備プロジェクト *ラムサール条約によって保護されている地域は、適切なIUCNカテゴリーの中に含まれている。
表―5:推奨される環境管理とモニタリング計画の項目;
I. 適切な標準的な基準とガイドライン
II. 環境管理計画
III. 組織の責任と管理について
IV. トレーニングの必要性
V. モニタリングと実施報告 2.廃液流出と対応する周囲の水域への影響 3.物質的な影響 4.天然資源及び制物的な影響 5.人への影響 b.地域経済への影響 c.地域の居住者の認知と意向 b. 労働者が危険物質にさらされているか C. モニタリングの手法と手続き D. 報告の手続き 2.対外的(地方政府など)
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