資料3.(関西電力の質問2に対する回答)
民間事業である発電所立地へのSEAの導入については、次の観点から、対象外とすべきです。
1.仮にSEAを導入した場合、その実施段階において、基本構想検討から地点選定にいたる段階の不十分な諸元を公開することになる。その結果、地域住民の皆様に不安を与えたり、混乱を招いたりすることなどが考えられ、発電所立地の大幅な遅延や供給力が確保できなくなるなど、エネルギーやセキュリティー上で非常に問題となるリスクがあります。
(説明)
一般電気事業者は、政府の基本方針であるエネルギー基本計画や長期エネルギー需給見通しを踏まえ、電源開発の基本構想を検討しております。電気事業の事業特性として、自由化という競争環境にあること、また出来るだけ安価な電力を安定して供給する責任もあることから、これらを踏まえ、各電力会社において事業戦略を検討します。基本構想検討段階においては、このような事業特性を踏まえ、将来の電力需給状況を想定し、いつ頃、どのくらいの規模の電源が必要か、環境負荷特性、エネルギーセキュリティー、経済性等を考慮してどのような電源構成とするかを、各電力会社ことに検討しております。ただし、この段階においては、発電所単独建設計画の詳細検討には至っておりません。またCO2問題も電気事業者にとっては非常に大きな課題であります。CO2問題に対して、電気事業者は自主行動計画を策定し、目標達成ができるよう基本構想段階における電源開発検討に反映しております。
基本構想の検討を踏まえて、立地候補地点を検討することとなりますが、立地地点の検討には様々な経緯があり、一概に統一した手法で整理することはできません。
例えば、立地地点の選定調査を実施するケースがありますが、発電所の立地においては、様々な条件を満足する必要があります。法律で規制を受けたり、名勝がある地点などは立地が困難な場合があります。また、発電所の場合は大量の冷却水を必要としますし、送変電設備用地の確保が可能なことも条件となります。また、誘致等の地元情勢も条件の一つとなります。更に、燃料種別によって、例えば石炭火力発電の場合は、燃料の石炭を船で輸送するわけですから、近傍に石炭船が入港可能な港湾施設が必要となりますし、LNG発電の場合は近傍にLNG基地が存在することも条件となります。これらの立地可能性の条件を全て満足する場所は自ずと絞られて参ります。発電所の建設地点選定においては、これらの条件を総合的に判断して選定されており、複数案の検討は事実上困難です。
また、場合によっては、地元から、発電所建設の誘致があり、これを踏まえて立地地点を検討することもあります。
最近では既設の発電所を廃止して、その跡地に新しい発電所を建設するといわゆるスクラップアンドビルドにより、新規立地の影響を極力少なくする検討を行う場合もあります。
このように、民間事業である発電所の建設において、基本構想検討から地点選定に至る段階は、まさしく経営戦力の範疇であり、様々な検討により、経営リスクを最小限とすべく対応しておりますので、一律にSEAにおいて複数地点を検討し選択することは不可能です。
なお、この段階の情報を公開することは幾つかの問題が生じます。一つには、この段階では規模、燃料種、運転開始時期、地点程度の情報しかなく、充分な諸元が明確に定まっておりません。これらの情報を公開し、地元住民の皆様の意見を賜ることは、住民の皆様に満足のいく説明もできず、ご質問にも十分満足いただける回答をできませんので、かえって住民の皆様に不安を与えることになります。また、発電所の建設は民間事業であり、地域住民が直接的に恩恵を受ける道路事業等の公共事業とは、そもそも性格が異なるものと考えております。ゆえに法律的規制や名勝等の特記的自然環境、地点特性に加え、地元住民の皆様に十分ご理解いただける見通し、用地の取得見通し、補償に関する地元関係者との調整の見通し、環境面での検討結果、等を総合的に判断し、地点を決定することになります。これは、民間事業である発電所建設特有の事業特性であります。これらの事前準備を行わず、計画を公表することは、その地点での建設が著しく困難になる場合があり、その結果、電力会社としての発電所建設計画が大幅に遅延するだけでなく、供給力が確保できなくなるなど、エネルギーセキュリティー上、非常に問題となるリスクがあるため、このような対応をとるべきとの経営判断によるものです。
2.現在のEIA制度は、十分に機能していることから、新たにSEAを追加する意味や効果はあまりありません。
(説明)
電気事業者は方法書の中に事業計画を出来る範囲で記載しており、住民の方々から頂く意見については、事業計画に係る意見も拒むものではありません。また、当該市町村とは非公式ベースで事前に立地計画や地域の自然的・社会的状況情報について問題の無い範囲で、ご指導いただいております。
その後、本当に電源立地が必要なのか、発電所計画が適切なのか、なぜこの場所なのか、といった点については、方法書の自治体における審査において、必要に応じ協議が実施されております。これは、アセスの調査項目・手法に限られたものだけでなく、具体的な必要性に関しても議論は実施されております。また、環境保全の見地からの住民意見やその意見を踏まえた市町村長意見及びそれらを踏まえた知事意見という形で経済産業大臣に申術することができ、これらも含めて経済産業省で方法書を審査することになります。審査の過程では環境審査顧問会という諮問機関もあり、専門の先生方から色々な意見を賜り、最後は大臣勧告という形で方法書の審査が終わることになります。このような大臣勧告に至るまでのプロセスがあるのは電気事業だけです。
なお、実際のプロセスにおいては、事業の背景、経緯、必要性並びに環境保全の配慮に至るまで十分に検討されているものと考えておりますが、「発電所アセス省令」(平成18年3月改正、同年9月施行)の改正により、事業の背景、経緯、必要性並びに環境保全配慮の検討経緯、内容を方法書に記載するよう制度が充実されております。
また、SEAを導入しなくても現在のEIA制度で事業計画変更することは可能です。
発電所建設計画公表後の計画変更事例については、1月30日に開催された事業者ヒアリングにおける電力会社の説明資料に方法書段階及び準備書以降の事例の一例が記載されております。事業アセス開始以降、知事・住民意見や大臣勧告に従い事業計画の変更を実施しておりますが、事業者自らが環境に配慮し計画を変更することもあります。つまり皆様のご意見によって、十分に計画は変更されるものであります。
また、地域特性から重大な環境影響が想定され、建設地点の大幅な変更などが生じる場合、アセスの再手続きが必要となることもあることから、重大な環境影響を考慮しない事業を計画することは考えられません。万一、結果的に重大な環境影響があり、計画変更等の勧告がだされた場合は、必要に応じたアセスの再手続きは当然と考えます。それでも地元の方々のご理解を得られないのであれば、地点は成立しないということになりますが、その場合、計画の中止もありえます。
以上
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