Sahabat Alam Malaysia(SAM、FoEマレーシア)からの情報
2008年8月15日
【背景】
2008年4月、Kedayan Telang Usan*1地方、Long Jeehに暮らすケニャ族コミュニティの5世帯が、彼らのテムダ(イバン語で休閑地のこと)に伐採道路を通す工事を行うサムリンに対し、抗議を申し立てた。伐採道路はLong
Jeehにある彼らのロングハウスのすぐ近くのUlu Sungai Belukun 地方にあるKerangan Bada、 Lubok
Sloba とLong Piuを抜けて設置された。
さらに、コミュニティのテムダを破壊したサムリンは、高価な木(エンカバン、カプール、メランティなど)を、彼らの祖先から受け継いできた土地にある、「Ulu-tana」や「Telalau
Ba'ie」*2(ケニャ語で土地所有者が資源を得る、上流域の個人の土地のこと)から搬出した。サムリンは土地の所有者からの許可を得ていなかった。
被害をうけた土地所有者は、Njau Balan、 Liman Lian、 Maripa Jalong、
Johhny Selong、Sapu Embong、Richard Southwell Embong。Long Jeehの酋長、Apoi
Ukengは、被害地が4人の土地所有者に及ぶことを認める2008年5月26日付の書簡を承認した。
*1:クダヤン・テラン・ウサン(Kedayan Telang Usan)
- アッパーバラムを指すケヤン、ケニャ族が使用していた昔の呼称。クダヤン(Kedayan) - Upper(上)、テラン(Telang)
- River(川)、ウサン(Usan) - Rain (雨)
*2:Ulu-tana 'Telalau Ba'ie - 概して、先住民たちは個人の所有地を明確し線引きしておらず、資源の調達のため、上流の方に土地を別にしてとっておく習慣がある。
【起こした行動】
土地所有者らはサムリン宛に大量の書簡を書きしたため、サムリンの侵害について通告をし、先祖から受け継いだ土地への不法侵入を自制することを求めた。土地所有者らはサムリンの作業班マネージャーにも会い、彼らの懸念を伝えようとしたが、現時点で反応は返ってきていない。サムリンは交渉しにくく、頑固で、不法侵入や無断伐採活動に起因する損失や被害のクレームに対する補償金の支払いを拒んでいると土地所有者らは嘆いている。
SAMは土地所有者らから公式の苦情を受け、サムリン・ティンバーへの書簡の草案を作成するなどのアシストをした。被害にあったテムダの位置や入会地の境界を示した手書きの地図、被害を受けたテムダの所有権を認める酋長の手紙も同封した。書簡に書かれた主張の要点を以下に示す。
(a) 土地所有者らは、サムリンとの間でテムダの道路建設利用についての合意調整や文書を全く受け取っていないこと。
(b) 土地所有者らは、第三者組織に彼らの代理として交渉するよう委任していないこと。
(c) 彼らのテムダでの伐採道路の建設により、その土地はダメージを受け、将来に渡って耕作ができなくなってしまうこと。
(d) 土地所有者らはサムリンが土地から勝手に木を取っていってしまったことに動揺、失望している。サムリンが伐採搬出した木材は土地所有者ら及び、彼らの家族だけが利用するためのものであったこと。
【要求】
書簡に、土地所有者らは損害を5世帯の住宅建設に使用する高品質材とその輸送で補償することを要求。さらに、土地所有者らは伐採道路の建設の結果テムダが受けたダメージの補償も受けなくてはならない。補償金の支払い方法は月払制とし、要求が受け入れられ次第、交渉される。
サムリンに書簡を郵送した後、SAMは被害を受けた土地所有者の一人、Johhny Selongから連絡を受けた。作業班マネージャーが容赦なく彼らとの話し合いを取りやめたのだという。その一方、サムリンはクレームの対応を一切とっていないままである。
Marudi交番でJohhny Selongにより申し立てられた警察の調書には、Long Jeehの土地所有者に属するネイティブの慣習的土地が、サムリンの伐採活動の結果の被害であることが明記されている。
土地所有者は警察の調書に止まらず、近隣のコミュニティを動員してサムリンへの抗議を行った。Long
Jeehのほか、抗議活動に参加した村落は、Long Bela'ong, Long Silat, Long Moh, Long Mekaba及びLong
Selawanである。村民らは共同で、サムリン・ティンバー社に彼らの要求と主張を、2008年5月20日付で郵送した。この段階で、コミュニティの酋長を含む村長ら、つまり、Long
MohからはPenghulu(村より一回り大きい集落体の長)、Long Jeeh からはPemanca(さらに一回り大きい集落体の長)が抗議活動に参加している。但し、Long
Silat と Long Selawanからの村長は参加していない。
【封鎖】
2008年5月21日付けの手紙によると、グループは集団で、木造のバリケードをUpper Baram
、SilatにあるUlu Sungai Sebua のLayun川河口付近に建て、サムリン・ティンバーが彼らの祖先の土地から丸太を勝手に持ち出すのを阻止している。サムリン・ティンバーはバリケードを張った村民たちに対し、警察の調書を申し立て、警察官らが2008年5月25日にバリケード設置現場の取調べのため派遣されている。
上:被害を受けた村落(小さな丸)及び、封鎖を行った場所(オレンジ色の四角)を示す地図。
約300人の老若男女が抗議に関与した。約60人は、ほとんど男性であるが、バリケード設置拠点に立てこもった。村民たちの主張ではサムリンがKenyahにある6つの村落の入会林から持ち出した木材は約1万トンにもなるという。これは推測値で、サムリンが入会林に進入し始め、バリケードが設置される少し前からの見積もりである。
2008年6月25日、封鎖活動の結果、Teleng Usanの州議員、Miriの住民、被害を受けた土地所有者はディスカッションの場を設け、土地所有者らはサムリンが被害者らと平等な条件で交渉に臨むなら、バリケードを撤去することに同意した。州議員と住民は、土地所有者らがサムリンとフェアな交渉プロセスを持てるように配慮し、土地所有者の要求が順次話し合われ、合意されるように誘導する役割を担っている。
現時点で、サムリンと土地所有の交渉は実施されていない。
【サムリンのマネジメント文書】
サラワク州の地域コミュニティとどう対話するかを表した文書がサムリンから発行されている。そこでの「協働フロー」といわれるものには、サムリンのコミュニティ連絡窓口チームを通じた、「オペレーションエリア」内の村落との対話による事実調査の実施が含まれる。これが一旦終了した後、コミュニティの暮らしや環境に対する伐採事業のインパクトを最小にするための交渉をコミュニティーを相手に開始する。互いに納得した上での合意を締結し、サムリン側はコミュニティ問題の担当が署名する。とてもよい文書のように見えるが、実際にはサムリン側の行動についてはほとんど書かれていない。
右写真:土地所有者らによる抗議現場。場所はUlu Sungai Belukun。メインの看板(5人の前にあるもの)には、「我々は騙された。サムリンは私達の慣習的権利のある土地と木材の補償をしていない。」と、2つ目の看板(後方)には「会社は作業を続けてもいいが、(我々の土地からの)木材の搬出はダメ。」と書かれている。
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